野菜に勝る? 老化防ぎ、寿命伸ばすフルーツ
5大スーパーフード(上)
スーパーフードの「スーパー」たる理由は、メタボ、がんなど加齢とともにリスクが上昇する病気を防ぎ、寿命を延長する可能性を秘めていることだ。かつては、ニンニクやブロッコリーなどの野菜がその旗手としてもてはやされた。しかし、現在はむしろ、フルーツのほうに世界の注目が集まっている。
フルーツには野菜と同様、活性酸素による酸化から体を守るポリフェノールなどの抗酸化成分が豊富だ。しかも、人間が体内で合成できないビタミン、ミネラルの良い供給源にもなる。ジュースやデザートとしてとりやすいメリットもある。
近年、世界中で盛んに研究され、データが蓄積されつつある有望株は5つだ。米国などで「スーパーフルーツ」の異名を取る「アサイー」「マンゴスチン」「ザクロ」「クコ」、そして、アンデスの先住民が数千年前から主要な食糧源としてきた「キヌア」だ。加齢とともに衰えるエネルギー代謝を活性化し、メタボや糖尿病などの生活習慣病にかかるのを防ぐとともに、がんの発生と進行を止める作用などが次々と明らかになっている。順に詳しくご紹介しよう。
スーパーフードに期待できる効果は大きく3つに分けられる。酸化ストレス軽減などによる各種のがん予防効果、代謝改善を介した生活習慣病のリスクを低下する抗老化効果、これらが総合的に作用した結果としての寿命延長効果だ。
1.寿命延長
酸化ストレスから身を守るシステムを低下させたハエを用いた実験で、アサイーをとらせると寿命が延長することが確認されている。長寿遺伝子を活性化すると期待されたレスベラトロールよりも効果が高いと見られている。
2.抗老化
脂質代謝や糖代謝を改善し、メタボをはじめとする生活習慣病を予防したり、加齢とともに衰える骨や肝臓、腎臓の働きを維持したりする効果がある。得意分野は食品ごとに異なるが、すべてのスーパーフードがいずれかの作用を持つ。
3.抗がん
マンゴスチンやザクロに期待されている効果。マンゴスチンは今のところ、皮膚がんと乳がんの発生と転移を抑制する可能性が示されている。一方、ザクロは細胞レベルの実験で、乳がんと前立腺がんの進行抑制効果が期待されている。
抗酸化作用で寿命延長 代謝改善にも役立つ
近年、世界で最も注目されるスーパーフルーツがアサイーだ。ブラジルのアマゾン川流域で伝統的に食されてきたヤシの一種で、大きさは直径2.5cmほど。果肉をペースト状にして凍らせた「パルプ」や、ジュースが市販されている。
最大の特徴は抗酸化力の強さだ。ブドウやブルーベリーなどにも含まれるアントシアニンという紫色の水溶性フラボノイドをはじめ、フェルラ酸、エピカテキンなど多くの抗酸化成分を含んでいる。粘りのある果肉には、オリーブオイルに豊富な一価不飽和脂肪酸のオレイン酸が約56%、飽和脂肪酸のパルミチン酸が24%、リノール酸が13%含まれ、栄養価も高い。
これまでの研究で明らかになった主な効果は、(1)寿命延長、(2)糖代謝・脂質代謝改善、(3)神経保護――という3つだ。中でも寿命延長効果は注目度が高い。
酸化ストレスに対する体内の防御機構をブロックしたハエに、さまざまなエサを与えて飼育した米国の研究では、通常6日間ほどの寿命がアサイーを与えることで、平均27日に延長した(図1左)。
別の研究グループによる同種のハエを用いた実験でも、高脂肪のエサにアサイーを添加すると、アサイーなしの場合よりメスのハエの寿命が延びることが分かっている。
肥満した人を対象にした実験では、アサイーのパルプを1カ月間食べ続けた結果、糖と脂質の代謝が改善した(図1右)。脂っこい食事や甘いもの好きの人には有用性の高い食品といえそうだ。
13年に発表された神経細胞分化モデルを用いた実験では、アルツハイマー型認知症の原因物質であるアミロイドβの蓄積を防ぐ可能性も示されている。
発がんプロセスの3段階すべてに効く
マンゴスチンは東南アジア原産の"フルーツの女王"。数百年前から傷の治療や下痢止めの民間薬として用いられてきたが、現在は抗がん作用に注目が集まっている。
有効成分は果肉を包む硬い果皮に含まれるポリフェノールの一種「キサントン」だ。60種類以上が分離されているが、最も含有量が多く、研究も盛んに行われているのが「αマンゴスチン」。複数の動物実験で発がんの3段階(イニシエーション:発がん物質によるDNA損傷、プロモーション:細胞増殖能の獲得、プログレッション:悪性化)を抑制することが確認されている。近年はさらにリンパ節転移を防ぐ可能性を示す研究も登場している(図2)。
果皮エキスをアトピー性皮膚炎の動物モデルに使用した実験では、皮膚の炎症を抑える効果が認められた。アクネ菌を抑える効果もあるようだ。
肥満した人が、果実全体のピューレを含むジュースを8週間飲んだ実験では、動脈硬化を進める炎症物質が低下した。
(ライター 小林真美子)
[日経ヘルス2014年2月号の記事を基に再構成]
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