20~30代でもありうる「孤独死」 夏はとくに注意を
「おひとり力」養成講座
夏の病いをこじらせない"もしもの備え"とは?
もうすぐ夏本番。旅行や花火大会など楽しいイベントが盛りだくさんの季節ですが、なかには「ムリしすぎて、倒れたらどうしよう」「病気をこじらせたらヤバい」と、ついナイーブになってしまう働く女性もいる様子。
先日も、都内で働くA子さん(30代前半)から、驚きのひと言を聞きました。
「私毎年、夏に体を壊す"クセ"があって。一番怖いのが『孤独死』なんです」
30代なのに、いまから「孤独死」の心配? 事情を聞くと、どうやら数カ月前、テレビ番組で「70代と同じように、20~30代も孤独死に気をつけるべき」という報道をみたそうなのです。
以来、A子さんは「もし自分が突然倒れて、そのまま孤独死したら」と不安になったと言います。
確かに、若い世代の孤独死も"ゼロ"ではありません。ただし、東京都区部における孤独死の発生件数は、
◆30代男女 = 計150件前後/年
◆20代男女 = 計100件弱/年
にすぎません。女性は、男性より少なめです(12年 東京都福祉保険局調べ)。
とはいえ、報道をみてA子さんが不安になった気持ちも分かります。
最近65歳以上では、地域の「見守りシステム」を普及させるなど、倒れた男女の発見強化や、孤独死を減らす取り組みが盛んです。
でも若い世代には、それがない。
シングル専門のファイナンシャルプランナー(FP)金子祐子さんも、ある雑誌上で「若いからと言って、油断は禁物」と指摘していました。金子さんのインタビュー記事には、こうあります。
「仕事で会社に行っていれば、誰かが気づいてくれますが、"失業中"に心臓発作で倒れて、発見されなかった例もあるんです」(雑誌『プレジデント』2012年1.16号)
A子さんは、毎日会社に通うOLと違う、フリーのウェブデザイナー。自宅にこもって一人、仕事をする日も多い。
もし突然倒れたら……。確かに、会社勤めと違い「同僚が気づいてくれるわけではない」と、不安になりますよね。
日経ウーマンオンラインが実施したアンケート調査でも、主に20~30代女性が「ひとりだと不安だと感じること」は、「自分や親、家族の『健康』と『(孤独)死』」でした。
金子さんも、先のインタビュー記事で、「(生涯おひとりさまを意識して)相談に来るのは、8割が女性。シングル女性で一番老後が不安なのは、30代なんです」と話しています。
そう、若いうちから「倒れたらどうしよう」「孤独死したらヤバイ」と悩むのは、決しておかしなことじゃない。むしろ多数派です。
ではどうすれば、不安を解消できる「おひとり力」が身に付くのでしょう?
「まず大事なのは、日々の健康管理」だと話すのは、医師で医学博士の狭間研至さん。次のような管理法を教えてくれました。
1.食事や睡眠に気をつけ、「免疫力」を高める
2.「大病のサイン」を見逃さない
3.定期的に健康診断に通う
4.かかりつけ医をもつ
1は、よく言われることですが、とくに食欲が落ちたり寝苦しくてぐっすり眠れない夏は、ふだん以上に注意が必要。
また夏風邪など、ウィルスによって起こる病気は、快眠やバランスのとれた食事などによって「免疫力」を高めることで、治癒しやすくなる。よって、
◆ 室内の暗さや枕の高さなどを調整して「よい眠り」を追及する
◆ 発酵食品(漬物や味噌)や食物繊維を多く摂ることで、「免疫力に関係がある」ともいわれる、体内の"乳酸菌"を増やす
などが効果的だと、狭間さんは言います。また、2の「大病のサイン」については、
◆こまめに体重を測る
◆日々の便をウォッチングする
といったことで、「ある程度、気づきが得られることも多い」と狭間さん。
「体重の減少や便の異常は、病気を疑うサイン。いつもと変わらない生活をしていながら、体重が減り続けていたり、下痢や便秘をずっと繰り返す場合、ガンなど重度の病気を患っている可能性も、ゼロではありません」
3の「健康診断」や、4の「かかりつけ医」も、同じく重病化を防ぐポイント。
ひとり暮らしアドバイザーの河野真希さんは、「内科関連だけでなく"婦人科系"のかかりつけ医や健康診断(チェック)も大切」、と強調します。
「基礎体温というと、妊娠したいときにつけるものというイメージがありますが、普段から測っておくと、自分の体のリズムが分かってくる。精神とホルモンのバランスが密接に結びついている様子も分かります。そのうえで、ちょっとした変化をすぐ相談できる婦人科の医師がいれば安心。ふだん元気な間に探しておくといいですよ」
一方、親と同居する女子が、一人のときに倒れてしまうこともある。
インテリアメーカーに勤めるB子さん(20代後半)も、その一人。昨夏、運悪く両親が揃って2泊3日の旅行に出た際に、倒れました。夜、一人で留守番する一軒家で、突然の腹痛(腸炎)に襲われたのです。
彼女がまず迷ったのは、救急車を呼ぶか否か。数カ月前、新聞で「安易に救急車を呼ぶべきではない」との記事を読んだばかりだったから。
そんなとき、足の悪い父親が"タクシー会社"に登録しているのを思い出した。冷蔵庫に張ってあった番号を見て、すぐ電話できたそうです。
「夜中だし、あの番号がなければ、一人でガマンしてのた打ち回っていたと思う。すぐ夜間診療の病院に直行してもらいました」
河野さんも、「もしもに備えて、タクシー会社の番号を控えておくべき」だと言います。
「緊急連絡先の♯7119も、ケータイなどに登録しておくといい。救急車を呼ぶべきか、だけでなく、応急手当や医療機関も教えてくれる。24時間、看護士や救急隊経験者が待機しているので、夜間相談にものってくれます」
また、病気のとき一人で倒れてしまうと、その日の"食事"の準備も大変。
先のA子さんは万が一に備えて、カップラーメンや冷凍のから揚げを大量に購入、自宅にストックしてあるそうですが、「これは身体によくない」と、狭間さんは言います。
「身体が弱っているとき、エネルギーをつけようと脂っこいものを食べるのは間違い。限られたエネルギーが、病を治すことではなく"消化"に回ってしまうからです」
逆に、風邪などで身体が弱ったときは、やはり
◆よく煮込んだうどん
◆おじや
◆おかゆ
がおススメ、だと狭間さん。
そのうえでも、次のようなものを自宅にストックしておくと、いいようです。
◆冷凍うどん
◆レンジでチンするゴハン
◆レトルトがゆ
◆卵
◆漬物
◆梅干
もちろん水分補給も大事だから、ミネラルウォーターやスポーツドリンクも、ペットボトル1~2本分余分にあると安心。「冷えピタ」や体温計も常備しておくといいでしょう。
孤独死や夏の病いを、いたずらに気にしすぎることはない。でも万が一に備えて、ふだんから免疫力をつけたり、健康チェックしたり、あるいは食品をストックしたり相談できる窓口を見つけておけば、もし倒れてしまったときでも、安心です。
マーケティングライター。インフィニティ代表取締役。財務省財政制度等審議会専門委員。1968年東京生まれ。日大芸術学部映画学科(脚本)卒業後、大手出版社に入社して編集、PR担当後、転職し、2001年に起業。トレンド、マーケティング、小売流通、ホテル、旅行関連などをテーマに執筆、講演を行う。テレビ番組のコメンテーターも務める。主な著書に『男が知らない「おひとりさま」マーケット』『独身王子に聞け!』『ただトモ夫婦のリアル』(いずれも日本経済新聞出版社)ほか。13年、経済産業省「ダイバーシティ経営企業100選」サポーターに就任。公式ブログ「牛窪恵の気分はバブリ~♪」
[nikkei WOMAN Online 2013年7月12日付記事を基に再構成]
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