知識の幅を広げる「連鎖的読書法」とは SMBC日興証券副会長 渡辺英二氏

2013/4/7

リーダーの本棚

SMBC日興証券の渡辺英二副会長は、2万2000冊もの読書量を誇る。脈絡もなく読んだのではない。分からない部分があると、別の本で調べていく。この「連鎖的読書」の積み重ねが知識の幅を広げ、読書を面白くしていった。

辞書・事典を「読む」

SMBC日興証券副会長の渡辺英二氏

新村出編の『広辞苑』。この国民的な国語辞典を愛読書と公言する渡辺氏に驚く人も多いだろう。渡辺氏は、子どものころから広辞苑を手元に置き、理解できない単語は調べ、知識を増やしてきた。単語を調べても、目移りして全然関係の無い単語の意味にも引き込まれていくという。辞書を引くのではなく、読んでいる。

広辞苑だけではない。全20冊ほどの分厚い百科事典も、分からないことを調べるのに欠かせない読書の友だったという。

専門書も愛読

そんな発想は、専門書を好む傾向にも表れる。渡辺氏の別の愛読書に、植松正の『刑法教室』(総論、各論)がある。

著名な刑法学者が書いた専門書。もともとは兄の本だったが、渡辺氏は高校生のときに読んでいた。それも、松本清張や江戸川乱歩らの推理小説を理解するために。「分からない部分があると、どういう意味かと気になって」という。後に早大の法学部に入学し、「学問の本として、改めて面白いと思った」

日本法制史概説』や『江戸時代漫筆』は、93年に死去、文化勲章も受章した著名な法制史学者、石井良助の本。これらを好むのも、必ずしも学問的な理由ではない。北町奉行や南町奉行らを頂点とする江戸の法制度や治安システムを理解すれば、赤穂浪士による吉良邸討ち入りを始め、江戸時代を描いた小説は「読み方も理解度も、全然違ってくる」という。

考古学者に通じる姿勢

渡辺氏の愛読書

疑問を抱き、そこから物事をどんどん追いかけていく姿勢、それは考古学者に通じるのかもしれない。愛読書にもそれがにじんでいる。

ドイツの考古学者、ハインリヒ・シュリーマンの自伝、『古代への情熱――シュリーマン自伝』はシュリーマンが少年の時からの夢を追い続けてトロイアの遺跡などを発見する過程を描いた。『まぼろしの邪馬台国』は、著者の宮崎康平が失明という障害を乗り越えて邪馬台国の謎を追っていく記録だ。

渡辺氏はいう。「宮崎康平は邪馬台国がどこにあったのか、中国大陸との関係はどうだったのかなど、古代史を徹底的に調べた人。シュリーマンもそうだが、追いかける姿勢には夢があって共感を覚える」。それは、自らが広辞苑、百科事典、法律の専門書を駆使して疑問点を調べ、本が描く世界にのめり込んでいく姿とも重なる。

渡辺氏の持論は「知識が増えると、本はもっと面白くなる」。最初はさほど面白くない本でも、調べて背景が分かると面白みが増す。その変化を楽しむのが「連鎖的読書」の醍醐味であり、大量の読書を支える力になった。(編集委員 梶原誠)