4月からの新年度を前に、将来に向けてライフスタイルの見直しを考えている人も多いかもしれない。日本は世界一の長寿国。充実した人生を過ごすためには何をしておくべきか? 60歳以上の500人にこれまでの経験から「やっておくべきだったこと」と「やっておいてよかったこと」を聞いた。
「人間関係」、「健康」、「お金」の3分野についてそれぞれ「やっておくべきだった」と後悔していることを回答してもらった。総合点で最も高かったのは健康編の「腹八分目を意識し、大食い、大酒をしない」。「守っていれば生活習慣病の心配をしなくてよかった」(70歳男性)や「大酒をよく飲んだが、体を傷めただけだった」(67歳女性)など、健康編3位の「野菜中心の粗食を心がける」と併せて、肥満や内臓機能の衰えを憂う声が多かった。
食生活の欧米化が進んだのは、約半世紀前から。ちょうど現在の60歳代は若い頃から肉料理に親しみ、働き盛りはバブル期と重なり、ぜいたくな食生活をおくった人も多い。「生活習慣病が急増したのも現在の60歳代が先駆け」(西病院の西昂理事長)という。
人間関係編では、仕事以外の時間を充実させたいとの声が多い。「仕事を離れるとただの人だった」(70歳男性)と言われないためにも、人間関係編1位「仕事以外の特技を持つ」や夫婦、子どもや地域住民らとの絆を大切に感じている様子がうかがえる。「60歳からの人生の愉しみ方」(三笠書房)の著者、山崎武也さんによると「幸せなおじいさん、おばあさんになるコツは、感謝の気持ちを忘れないこと」。仕事などの実績も「周りが支えてくれるから」との謙虚さを持つことが大切という。
金銭面では、「貯金」が1位。「老後は考えていたよりお金が必要」(64歳男性)、「年金だけでは不足」(62歳女性)など、先行きの不安を感じているコメントも多くあった。医療費など不意の出費も多くなる。ゆとりあるセカンドライフを迎えるためにも、働けるうちにコツコツためておくのが肝心なようだ。
50代以下は「笑って前向き思考」
50歳代以下に「60歳代までにやっておきたいこと」を聞いたところ、特に健康に対する考え方で、上の世代とはっきりとした違いが出た。
健康維持のためにやっておきたいことの1位は「よく笑い、くよくよ悩まないこと」。「ポジティブに考える」(38歳男性)、「心身の健康のため、バラエティーを見たり、家族や友人と会話で笑う」(42歳女性)など、笑いを心の栄養として重視している。「現状に悩んでいることの裏返しでは」(西理事長)。
人間関係の面では、夫婦や子どもなど家族を最優先しているのは60歳以上と共通している。ただ、仕事や義理だからといって交友範囲を無理に広げようとするのではなく「本当に心許せる友を大切にしたい」(31歳女性)と、より身の丈の幸せを大切にする傾向が強い。
倹約志向も鮮明だ。「年金は当てにならない。今のうちに貯蓄しておく」(39歳男性)、「老後は介護や医療費などまとまったお金が必要になる」(40歳女性)と蓄えの必要性を認識している。だが、「今は、日ごろの生活でいっぱいいっぱい」(35歳女性)というのも現実のようだ。
調査の方法 インターネット調査会社のマクロミルを通じ3月上旬から中旬に調査を実施。コミュニケーション塾主宰の今井登茂子さん、西病院の西昂理事長、ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さんの協力を得て選択肢を作成した。調査対象は20~70歳代の勤務経験のある男女で「お金」、「健康」、「人間関係」を充実させるために何が重要かを、それぞれ30の選択肢から選んでもらった。有効回答は60歳未満500人、60歳以上500人の計1000人(男女同数)