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津田梅子 どんな環境でも高尚であれ

ヒロインは強し(木内昇)

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NIKKEI STYLE

仕事に打ち込む姿は、誰しもかっこいい……はずなのだが、女性の場合必ずしもそう言い切れない現実がある。「できる女は嫌われる」時代は今は昔となりつつあるが、それでも仕事一徹だと、ときに「イタい」と引かれもする。中には「女はかわいげがなきゃ」とのたまう上司もいたりして、仕事ですからかわいくなぞしちゃいられませんよ、と心で泣きつつ作り笑いでやり過ごす瞬間が、働く女性には案外あると思う。

かつて、女子にほどこされる教育の多くは良妻賢母を理想に掲げていた。読み書きも裁縫も、貞淑な妻、立派な母にならんがため。明治になり、欧米化が進んで女学校が創設されてもこの体質は変わらない。そんな中「女性の自立」を目標にしたのが、津田塾大学創始者の津田梅子だ。

明治4年(1871年)、遣欧米特命全権大使の岩倉具視を筆頭に政府関係者、留学生が欧米に送られた。当時8歳だった梅子はこの一団に加わり、多感な十代をワシントンで過ごす。かの地の自由な気風に触れ、活発な女性たちと交流した彼女は、帰国後、居場所を失う。夫にかしずき、家を守る日本の女の枠に収まり切れなかったのだ。女が学問を積んで、仕事を持って、なにがいけないのか。

梅子は一念発起し、再び渡米。日本人女性の留学を受け入れるため寄付を募り、米国奨学金基金を設立する。帰国後は、華族女学校のような保守主義ではなく、女性に最高の教育を与えたい、と女子英学塾を立ち上げてしまうのだから、時代を鑑みれば恐ろしいまでの行動力である。

にもかかわらず「私、頑張ってます」的押しつけがましさが前面に出ない。頑なではなく柔軟。おそらくは彼女の基礎に、社会への反骨ではなく、自分が知る素晴らしい知識を広めたいという素直な衝動があったためだろう。この窮屈な世の中が変わる日がきっと来るという希望に導かれていたからかもしれない。

「先生をするのであれ、主婦になるのであれ、どのような方面の仕事をするのであれ、高尚な生活を送るように努力してください。古い時代の狭量さ、偏屈さを皆さんから追い払い、新しいことを求めつつ、過去の日本女性が伝統として伝えてきたすぐれたものはすべて保つ努力をしてください」

梅子が終業式に生徒に贈った告辞である。これは現代社会に生きる女性にとっても大変意味ある言葉なのではないか。過去と未来をバランスよく取り入れ、どんな環境にあっても、必要以上にイラついたり、不遇を嘆いたりせず、背筋を伸ばして自分の成すべき仕事をし、常に高みを目指すこと。簡単な行いではないが、そういう心構えを保つだけで、引きつった作り笑いが、余裕の微笑みに変わることもあるのではないだろうか。

[日本経済新聞朝刊女性面2013年5月18日付]

木内 昇(きうち・のぼり) 67年東京生まれ。作家。著書に「茗荷谷の猫」「漂砂のうたう」(直木賞)「笑い三年、泣き三月。」「ある男」など。

※「ヒロインは強し」では、直木賞作家の木内昇氏が歴史上の女性にフォーカス。男社会で奮闘した女性たちの葛藤を軽妙に描きます。

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