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職場の知恵

仕事は続け、農業に挑戦 「半農半X」という生き方

2012/8/22

生活の半分は農業、もう半分は自分の得意な仕事ややりたい仕事。そんな「半農半X(エックス)」という生き方が注目されている。「食」の安全や環境問題への関心の高まり、豊かな生活・社会へのあこがれなどが背景にある。どんな生活なのか。都会に暮らす人でもできるのだろうか。

■週3病院勤務、週2農業

ヤマトイモを栽培する広川恭子さん(島根県飯南町)

大阪市で看護師をしていた関西出身の広川恭子さん(34)は今年2月、島根県中南部の飯南町に引っ越した。「半農半看護」の暮らしを始めるためだ。冬場は週4~5日、町立飯南病院で働いたが、春から病院は週3日勤務。2日は農業研修、2日は休みという生活になった。

町が研修用に300平方メートルほどの農地を用意。ここで同町特産のヤマトイモなどを栽培する。研修日だけでなく、病院からの帰り道や休日にもつい畑に寄ってしまう。ヤマトイモの収穫は11月。広川さんは「今からどきどきです」と笑う。

もともと無農薬の野菜などが好きで、都会暮らしにも少し飽きていた。そんなとき大阪市で開かれたUIターンフェアに行ったところ、島根県の関係者から「半農半Xで移住してみませんか」と声を掛けられた。農業研修が受けられ、最長2年間は月12万円の助成金が出る。「X」に当たる職場も紹介してくれる。研修後、農業に必要な設備資金の補助もある。

広川さんは2泊3日の現地体験ツアーにも参加した後、「これならなんとかやっていける」と移住を決断した。助成金と病院からの給料を合わせても以前より収入が減ったのが厳しいが、「今の生活リズムは自分にぴったり」と話す。研修が終わると、耕作地を広げ、5年後をメドに、農業で年間90万円の販売額を目指す。

■新しい兼業農家スタイル

全国的に農家が減る中、島根県も都会から就農希望者を募ってきた。しかし、いきなり専業農家を目指すのは大変。そこで、敷居を低くするために、新しいライフスタイルとささやかれていた「半農半X」の考え方を2010年度から導入した。農業以外の仕事にも携わり、全体として生活に必要な収入を得てもらう兼業農家的な考えだ。

11年度からは「X」の部分に「看護」「介護」「保育」といった具体的な職種を入れて募集開始。これらの職種が県内で不足しているという事情もあった。

これまでのところ「半農半X」移住者は15人。30~40代が多く、家族連れも増えてきた。県農業経営課では「農業とのその地域の担い手となる人に来てもらいたい。イメージと違うこともあるので、まずは体験ツアーなどに参加してもらいたい」と話している。

地方で本格的に農業を始めるばかりが「半農半X」ではない。この言葉の提唱者で農業を営む塩見直紀さんによると、持続可能な農のある小さな暮らしをベースに、自分の才能を世の中のために生かしていくのが「半農半X」。それは都会でも始められる。

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