2014/3/22
通路を背にしてガラスの陳列棚の裏に配置した下着売り場のソファ

だが車座から各売り場連携のアイデアが生まれる。この日も一部で展開予定の桜を基調とした売り場作りについて「館全体でやれないか」と持ち上がった。それを見守っていた山本店長が「よしやろう」と一言。雑談のような話し合いから15分後には決まっていた。

女性下着売り場の改善も車座会議の成果。通路から目に付かないように接客空間を作り、横長のソファを置いた。くつろいだ雰囲気を演出でき、時間をかけた百貨店ならではの丁寧な接客も可能になった。「従来なら『椅子で十分じゃない』で却下されていたのが、現場の意見を尊重してくれた」(井出裕子係長=36)

百貨店には力仕事もある。女性だけの職場に不安はなかったのだろうか。山本店長は「やれるように発想を変え、業務改善で乗り越えられた」という。

例えば商品の運搬は、女性が1人で簡単に運べる小型の台車を使い、搬送量を減らした。搬送回数は増えたが、小回りがきき、営業時間内でも来店客に迷惑をかけることも少ない。在庫と売れ筋の把握にもなる。

小型カートを導入し女性1人でも商品を運びやすくした

同店の強みは、顧客目線の店作りという商いの基本を実現してきたこと。一方でそれを支えてきた、雑談の延長線上ともいえる車座会議は、これまでの意思決定の手順、命令系統とは大きく異なる。しかし、「変化の激しい世の中に対応するには組織を思い切って変えることも必要だ」(鈴木敏文セブン&アイ会長)。

「売上高や業務効率でいい数字を出し続けることがいい組織だと思う」と山本店長は話す。アベノミクス効果、訪日外国人旅行者増などで都市部の大型百貨店は順調だが地方百貨店は恩恵を受けにくい。毎年3%前後の売り上げ減に見舞われる百貨店が多い中で、同店が2年連続でプラス成長をしているのは異例だ。

セブン&アイHDではイトーヨーカ堂、外食のデニーズでも女性だけの店舗を試行している。ダイバーシティ担当の藤本圭子セブン&アイ・プロジェクトリーダー(57)は「男性の仕事とされてきた職種でも女性ができることがわかった」と語る。マグロの解体ショーも女性でできた。適切な店舗規模、人員配置など検討課題はあるものの「女性だけの店作りは広がる可能性がある」(藤本リーダー)。

所沢店の開業は、男女雇用機会均等法の施行と同じ1986年4月。店や働き方は時代と共に変わっていく。

(編集委員 田中陽)