まずは「雑談力」から 若者就活、支援の現場

在学中から職業観を広げてほしい

将来の無業者を1人でも減らしたい――。就労支援の「シェアするココロ」(横浜市、石井正宏代表)が1月に始めたのが、バイト前のお試し期間としてインターンシップを活用する「バイターン」だ。

高校生は自動車整備工場、ビル清掃などの中小企業で3日間、無給のインターンとして働く。企業はその後面接をして、有給のバイトに切り替えるかを判断する。石井代表は「高校生の就職希望やバイト先は接客業に偏っている。だから接客の仕事が駄目だと働くことを諦めてしまう。在学中から職業観を広げ、働く意味を考えるきっかけになれば」と話す。

プログラムに参加する神奈川県立田奈高校は1学年二百数十人で、卒業生の約3割は就職も進学もしない。熊野宏之副校長は「バイト経験者はコミュニケーション能力が比較的高く、内定率も高いが、高校生では求人や職種は限られる。バイターンでの経験がいきるようなキャリア指導をしたい」と意欲をみせる。

「無業予備軍」は卒業時の進路未定者だけではない。文部科学省の昨年度まとめでは、高校の中途退学者は約5万4千人で全体の1.6%を占め、不登校者もほぼ同数の5万6千人に達した。大学中退者の比率はさらに高い。

「学校や会社という『所属』を失うリスクは想像より大きい。どんな形でも働く場所を確保するか、学校や支援機関とつながりを持ち続けることが大切」。石井代表は、孤立によって問題が深刻化する前に手を打つ考えだ。

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第三者と向き合う力、社会全体で育成

「若者はなぜ『就職』できなくなったのか?」の著書がある児美川孝一郎・法政大学キャリアデザイン学部長の話

企業から「最近の若者はコミュニケーション能力がない」と嘆く声を聞くが、疑問に思う。同世代の仲間やよく知る相手に対しては緊密で、繊細なやり取りをする。足りないのは第三者と向き合う、自分と異なる集団に入るなど「アウェー」での対応力だ。

それを若者だけの自己責任にするのは酷だ。少子化に加えて、異なる年代と触れあう地域での付き合いや親戚付き合いが希薄化し、経験を積めない時代になった。企業は入社数年かけて新人を育てる余裕をなくし、即戦力以外は不要とみなす。社会全体で若者をどう育てるかという視点が不可欠になるだろう。

学生時代からの職場体験は有効な手立ての一つだが、実効性を高める工夫が必要だ。数日間のインターンシップでは、企業は学生を「お客さん」扱いする。それは単なる職場見学にすぎない。企業は学生を本気で使い、学生は教育プログラムの一環として必死に働く意味を考える。そんな有給長期のインターンがあってもいい。

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