●ちなみに――栗とマロンの違いは?

和栗本来の風味を生かしたものが多い

今回、星を獲得したモンブランのすべてが「和栗」を使っている。同じ栗でも「和栗と洋栗は別の果実だと考えている」と、今回取材したシェフは口をそろえる。だが、和栗と洋栗(マロン)の違いって何だろう?

モンブランが国内に初めて登場したのは1930年代。東京・自由が丘の洋菓子店「モンブラン」の初代店主が発売したのが起こりといわれている。栗好きの日本人の口にぴたりと合い、洋菓子店の人気商品になった。黄色の栗クリームが山高く絞られ、上にもシロップ漬けの黄金の栗。口に入れるとするっと溶けていくタイプのクリームは、本場フランスやイタリアから輸入した洋栗(マロン)を使ったものが多い。

一方、今回特集した和栗のモンブランは、甘さよりも栗の自然な風味が強い。クリームには粒々した食感が残り、色は渋皮を混ぜた茶系のものもある。「栗きんとんを食べたとき、これをモンブランに応用できないかと思った」(アステリスクの和泉光一シェフ)

ヨーロッパとは栗の木の種類だけでなく、伝統的に菓子職人の栗に対する考え方が違うようだ。年間を通じ栗を食べることができるように「西洋の菓子職人は収穫した栗をシロップやお酒に漬け込む。糖度を高め、風味をつけてグラッセやペーストに加工する」(ユウジアジキの安食雄二シェフ)。それを、モンブランや栗のクレープなどに使う。

一方、和菓子職人は栗本来の味を残すことを優先する。収穫したての栗のさわやかな風味を残したいので、砂糖はこれ以上減らしたらおいしくないというぐらいしか加えない。粒々とした食感もおいしさの1つと考え、あえてザクッと粗めにつぶす。代表的な栗和菓子、栗きんとんはこうして作られる。

距離の遠い日本では、生の洋栗(マロン)は入手しにくいという背景もある。

いずれにせよ、モンブランは、新進気鋭のパティシエが和栗と和菓子の技術に着目することで、さらなる独自の進化を遂げている。

絞りたてのモンブランは格別

●ひとこと――モンブラン、絞りたてのおいしさ

記者が特に指摘したいおいしいモンブラン店のポイントは「絞りたて」。前回のモンブラン特集で3つ星を獲得した東京・広尾の「ラ・プレシューズ」が先駆けといわれていますが、絞りたてを看板に掲げるモンブラン店は最近、増えてきました。和栗の独特の風味が濃厚で、みずみずしく、土台のメレンゲや焼き菓子もカリッと香ばしい。自分の注文を聞いて、目の前で仕上げてくれるシェフの実演にもわくわくします。

和栗のおいしい季節は、何といっても秋。栗の木の種類にもよりますが、今から1カ月が最高です。

(佐々木たくみ)



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●「日経スイーツ選定委員会」とは

専門委員と日経記者で構成。専門委員は豊富な経験に基づいた通らしい視点で、記者はビジネスパーソンとしての素直な視点で評価。まず、専門委員の意見を参考に書類に基づく第1次審査を実施し、10商品を候補に選定。次に、厳選された10商品を実際に全員で食べ比べ、専門委員の意見を中心に合議制で「3つ星」「2つ星」「1つ星」を決める。

●専門委員の横顔(五十音順)

下井美奈子さん

1973年生まれ。実家の母が菓子教室講師ということから、子どもの頃からスイーツの食べ歩きや菓子作りを行う。一般企業を退職した後、パリの料理学校「リッツ・エスコフィエ」で料理・製菓の資格取得。またパリの製菓料理学校「ル・コルドン・ブルー」「ルノートル」で学び、2年間のロサンゼルス在住中にも各国の製菓・料理を習得。情報サイト「オールアバウト」では立ち上げの2001年から、スイーツガイドを担当。多数のメディアで洋菓子情報を紹介するほか、商品開発、レシピ提供を行うスイーツコーディネーターも務める。共著に「TOKYO美食パラダイス」など。

下園昌江さん

1974年生まれ。大学卒業後、専門学校やパティスリーで製菓の技術や理論を学んでおり、製法にも詳しい。お菓子の食べ歩き歴は15年。近年は特にフランス菓子に力を入れ、フランスを巡るツアーや焼き菓子を中心としたお菓子教室も開催。監修本に「とびきりスイーツ見つけた!」。ウェブサイト「Sweet Cafe(スイートカフェ)」主宰。

平岩理緒さん

1975年生まれ。小学生のとき、訪れたデパートでスイーツの魅力に目覚める。大学卒業後、食品会社のマーケティングに携わる。2002年、テレビ東京の番組「TVチャンピオン」デパ地下選手権での優勝を機に、食の情報発信を本格化。退社後はフリーのフードコーディネーターとして活躍中。月に食べるお菓子は100種類以上。和菓子店での勤務経験もあり、和、洋菓子全般に詳しい。著書に「アフター6のスイーツマニア」(マーブルトロン)。コミュニティーサイト「幸せのケーキ共和国」主宰。