意外と知らないクジラ肉のこと 流通ルートや味は?

バラエティー豊かなクジラの刺し身。1頭で様々な味を楽しめる

上等な牛肉を思わせる背中の赤肉

何はともあれ論より証拠。都内で屈指の品ぞろえを誇るクジラ料理店「くじらのお宿 一乃谷」でイワシクジラを試食してみた。

まずは刺し身の盛り合わせ。種類の多さにまずは驚く。「ウネス(腹部)」はまるで豚バラのベーコン。白と赤のまだら模様が印象的な「鹿の子(アゴの付け根)」は脂がのって弾力に富む。心臓は鶏のレバ刺しのような味わい。コリコリとした背中の皮(本皮)には磨いたばかりの革靴のようにテカテカと脂が光り、口の中で溶けていく。

一番量が取れる背中の赤肉は上等な牛肉を思わせ、最も高値で取引される尾肉(尾の身)はそこに和牛のような脂が入る。そういえば以前、捕鯨国のノルウェーを訪れた時に初めて尾の身を口にし、あまりのおいしさに仰天したものだった。

牛、豚、鶏の様々な部位の肉を1頭で楽しめるような多彩性はヒット曲を集めたオムニバスのよう。

刺し身・ステーキ・すき焼き…多彩な調理法

ガーリックペッパーステーキ。上等な牛肉に勝るとも劣らない
コリコリとした食感ののどちんこ

さらに特筆すべきは料理の万能性だ。刺し身に続いて出てきたのはレアに焼いた赤身のペッパーステーキ、鶏の軟骨のようなコリコリ感を楽しめるのどちんこ、淡泊なミズナを脂の多い鹿の子で包んだ巻物、赤肉のユッケなど。ほかにもすき焼きや天ぷら、竜田揚げなど調理法はキリがない。1人7000円払えば相応の満足感が得られるはずだ。

クジラに含まれるイノシン酸はしょうゆや味噌のグルタミン酸との相性が良い。

赤肉のユッケ。しつこくはないが濃厚な味わい
さっぱりしたミズナを脂ののった鹿の子で巻く

「クジラ食文化を守る会」の会長を務める発酵学者の小泉武夫氏は著書『鯨(げい)は国を助く』の中でその魅力をこう記している。

「焼いたクジラに醤油をさーっとかけると、それはそれは美味で、舌が踊り出して止まらない。私がちいさいころからずっと食べているクジラの味噌漬けも、食べながら口中が涎(よだれ)の洪水になるほど美味い」

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