企業に女性幹部クオータ制 先進ノルウェーに聞くWの未来 世界が競う

――どうやっておさめたのですか

「全政党が03年にはこの法案に賛成したのだ。それは国民の意志だ。どうして産業界は反対できるのか」

「実際には産業界が懸念したような経済の失速は起きなかった。『女性役員の候補がいない』『女性にはまだ十分な経験がない』。これが産業界の共通の抗弁だった。でも、私はそういうことをいう企業のところへ行って調べてみたことがある。そうしたらビジネスの経験のない男性の弁護士を取締役として採用していた。女性の弁護士ではなぜいけないのか、偏見は本当にないのか、と」

――導入でなにが変わりましたか。

「結局期限の08年1月までには、すべての対象企業が条件を満たし、強制閉鎖される企業はなかった。反対の立場を貫き自ら上場廃止を選ぶ企業もあったが、それは5社ぐらいだったと記憶している。ビジネスの面では、女性役員により情報開示や法令順守対応が進んだなど様々な検証結果が出ているが、導入前と変わらずというのが大方のところだ。それ以上に社会全体が変わったことが大きい。女性が働くことや、男性も仕事と家庭を両立させることが当たり前になった。出生率もトップクラスになった。今のオスロではいたるところで子守をする男性の姿を見るが、それはこの10年ぐらいの話だ」

――その後フランスやイタリア、スペインなどがクオータ制を導入した一方で、英国などでは強制的なやり方への批判も強いです。

「私はよく2つのレモンの例え話をする。1つのレモンは男性。経済危機や高齢化に直面したとき、ある国々はすでに絞られているこのレモンをもっと、もっと絞ろうとする。それで生産性は上がるだろうか。私たちがやろうとしたことはそうではなく、同じテーブルにもう1つのレモンを置くことだ。つまり、高い教育を受け、意欲もありながら、まだ十分に活用されていない女性という新鮮なレモンを」

「ほかの国がクオータ制を導入しようがしまいが、別にどちらでもいいと思う。ノルウェーは歴史的な経緯もあり、クオータ制を選んだが、同じ北欧でもスウェーデンは別の方法で女性活用を進めている。それぞれの国に、それぞれのやり方がある。大切なのは、この2つのレモンの背景にある経済の現実を理解し、行動することだ」

――日本の政府も女性を成長戦略に掲げました。なにか助言はありますか。

「日本について詳しくないが、はっきりしているのはこれからすべての先進国で少子高齢化が進むということだ。高いスキルを持ちながら生かせていない女性はたくさんいる。女性が安心して子どもを産み、高い潜在能力を発揮するためにはどうすればいいか。そのための議論をオープンにし、発展させる。手遅れになる前に、とにかくJust do itだ」

(オスロ=小滝麻理子)