性能向上したミラーレス、玄人好みの富士フイルム
ミラーレス一眼が発売された当初は初心者向けのモデルが多く、本格的な撮影には一眼レフを選ぶ、というすみ分けが明確だった。だが、ここ1~2年に発売されたミラーレスの性能向上は著しい。ボディ価格が20万円前後のモデルは、性能が一眼レフに迫るものが多く、機能に関しては上回るものも増えている。
上級機並みの撮影性能 フィルター機能も魅力
その一つが「OLYMPUS PEN-F」(オリンパス)だ。外観は従来通りフィルムカメラがモチーフのレトロなデザインだが、金属部品を多用するなどして質感が大幅に向上。手にした際の満足度は高い。性能は同じオリンパスの上級ミラーレスである「OM-D E-M5 MarkII」とほぼ同等で、違いは防じん・防滴といった耐候性などを省いた程度だ。一眼レフを含む最新のデジカメでトップクラスの性能を誇る。
目新しいのは、撮影時の色調やフィルター効果をダイヤル操作で自在に調整できる機能が備わったこと。高感度フィルムで撮ったようなざらっとした質感を出したり、仕上がりをネガフィルムやポジフィルムのように調整したりできる。しかも簡単なダイヤル操作だけで気軽に試せる。液晶画面が可動式でタッチ操作が可能であるなど、操作性にも優れる。上級機でありながらカジュアルに使える点で、万人に向く一台だ。
●実勢価格:22万3340円(税込み)
●撮像素子:4/3型
●有効画素数:2030万
●サイズ・重さ:幅124.8×高さ72.1×奥行き37.3mm・427g
●モニター:3型・約104万ドット
●ISO感度:80~25600
●シャッター速度:60~1/16000秒
●動画:フルHD(1080/60p)
●標準レンズの画角:24mm
改善されたAFや、充実した操作ダイヤルが魅力
これに対して、やや"玄人好み"といえそうなのが、富士フイルムの「FUJIFILM X-Pro2」。画素数は旧型の1630万画素から2430万画素にアップし、解像感が向上。持ち前の自然な色調が引き立つようになった。さらに、従来機の弱点だったオートフォーカス(AF)の遅さが解消された。まるで別物のようにきびきびとピントが合うようになった。持ち前の自然な発色に加え、撮像素子の性能がアップして解像力が向上。性能はPEN-Fと遜色ない。
一方、液晶画面が固定式でタッチ操作に対応しないなど、撮影の自由度と操作性ではPEN-Fに一歩譲る。むしろ、しっかり構えてファインダーをのぞいて撮るスタイルを重視していることが、光学ファインダーと電子ビューファインダー(EVF)の両方を備える点や、操作ダイヤルの充実度からもうかがえる。設定されたシャッタースピードを電源オフ時にも確認できるのは意外と便利だ。こうした昔ながらの撮影スタイルや、富士フイルムらしい自然な発色が好みなら、選択肢に入る。
●実勢価格21万3300円(税込み)
●撮像素子:APS-C型
●有効画素数:2430万
●サイズ・重さ:幅140.5×高さ82.8×奥行き45.9mm・495g
●モニター:3型・約162万ドット
●ISO感度:200~12800
●シャッター速度:4~1/32000秒
●動画:フルHD(1080/60p)
AFの性能が飛躍的に向上し、一眼レフ水準に
AFの性能向上を重視したのが、ソニーの「α6300」だ。AFで焦点が合う位置(フォーカスポイント)の数が、従来機の2.4倍に相当する425点にまで増え、画面のほぼ全域で細やかにピントが合うようになった。AFの動作そのものも高速化され、スポーツや子供の運動会のようにスピードが求められる場面でも、撮影性能は一眼レフの上級機に迫る水準だ。さらに、簡易的な防じん防滴性能を確保したことで、屋外撮影時に天候の影響を受けにくいのも安心感がある。AF性能の高さと撮影の軽快感を求めるなら、有力候補になる。
●実勢価格:16万1870円(税込み)
●撮像素子:APS-C型
●有効画素数:2420万
●サイズ・重さ:幅120×高さ66.9×奥行き48.8mm・404g
●モニター:3型・約92万ドット
●ISO感度:100~25600
●シャッター速度:30~1/4000秒
●動画:4K(3840×2160/30p)
●標準レンズの画角:24~75mm
解像度が"別次元"のミラーレス
交換レンズで知られるシグマからは、独自の撮像素子による解像力の高さをうたう、同社初のミラーレスが発表された。解像度の高さで定評がある独自構造の撮像素子「Foveonセンサー」を採用したのが特徴だ。撮影条件がシビアなのでかなり癖が強いが、うまく撮れれば他とは"別次元"ともいえる解像力の高さを引き出せる。一方で、ファインダーがレンズの光軸からずれた構造は気になった。今春発売予定で価格は未定だが、早くも中上級者に注目されている。
高性能化に加えてこうした個性化も進むなど、今後は新たな競争軸が生まれていくこともありそうだ。
(日経トレンディ編集部)
[日経トレンディ2016年5月号の記事を再構成]
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