森川氏が語る「LINE」誕生秘話森川亮C Channel社長に聞く(下)

LINEの生みの親、森川亮・前LINE社長(現C Channel社長、49)が振り返る、自身のビジネスキャリア。後半は、MBAで自信を付けた森川氏が転職するところから始まる。そして、LINE誕生の秘話を自ら語った。

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自分を試したくて、約10年勤めた日テレを退職し、ソニーに転職した。

最初は、テレビやオーディオを扱うカンパニーで新規事業の仕事を担当しました。事業計画を提案してはダメだしされる毎日で、ようやく一つ通ったと思ったら、社内事情で中止に。嫌気がさして、勝手に通信専門のカンパニーに移り、ブロードバンドで動画を配信するジョイントベンチャーの立ち上げに参加しました。人事は困っていましたが、後から異動を認めてもらいました。

おそらくこの時が、人生で一番働いたと思います。仕事は毎日、朝5時から夜中の2時まで。社内会議は夜11時から。ほとんど寝ずに仕事をしました。私自身は、営業責任者として、昼間は顧客回りの日々。生まれて初めての営業でしたが、ビジネススクールで鍛えたプレゼン力が力になりました。

事業はなんとか軌道に乗り、社員数も設立当初の10人から150人ぐらいに増えました。ただ組織が大きくなると、やはり何かと窮屈になります。もっと裁量権を持って仕事をしたいと強く思うようになりました。ただ、必ずしも経営者になりたかったわけではありません。自由に仕事がしたかったのです。

ビジネススクールは基本、ロジックの世界です。ロジックを積み上げると、答えが出ます。しかし昔の日本の企業は、社長の鶴の一声だとか、声の大きい人が決めるという世界。そのギャップに戸惑いもあったのかもしれません。

約3年でソニーを退職し、ハンゲーム・ジャパン(現LINE)に転職。4年後に社長に就任し、通話アプリLINEを世に送り出す。

当時、ブロードバンドで日本に先行していた韓国では、オンラインゲームが伸びていました。日本でもオンラインゲームが成長するに違いない。それが転職の動機でした。

入社して1カ月後に事業責任者になり、それからゲーム事業が大成功し、とんとん拍子で社長になりました。私が優秀だったというわけではなく、運というか勘がよかったのだと思います。勘と言っても、本当の勘ではなく、それまでのビジネスの経験から、次はこれが来るなという確信のようなものです。それが、実際にその通りになったということにすぎません。

LINE事業の成功は、タイミングよくスマートフォンの普及と重なったのが大きかったと思います。これはチャンスと思い、人的資源を思い切ってスマホにシフトしました。他社も、これからはスマホだと言っていましたが、まだみんなガラケーのプラットホームで儲けていたので、本気でスマホに力を入れていた会社はありませんでした。われわれは、逆にガラケーで失敗していたので、次のプラットホームはスマホと決めていました。

LINEはもともと、運営する検索サイト・ネイバーの検索精度を上げるために立ち上げた、様々なコミュニケーションサービスの一つで、現場から出てきたアイデアでした。

私は、いい会社というのは、ビジネススクールの授業のように、ダイバーシティというか、多様な考えをぶつけてディスカッションしながら、意思決定するプロセスを大切にする会社だと思っています。私も経営者として常にそのことを肝に銘じてきました。社員が意見を言いにくいとか、反対意見を言うと雰囲気が悪くなるとか、そういう会社はよくありません。LINEというサービスも、そうした自由な雰囲気の中から生まれてきたのだと思います。

昨年、社長を退任し、女性のための動画ファッション雑誌「C Channel」を創業した。

C Channelは、ファッションやメーク、料理など女性が関心を持つ話題を動画にして提供しています。いま特に人気なのはハウツー物。動画再生回数をKPI(重要経営指標)として見ていますが、3月は1億回まで伸びました。

実は、この事業のベースになっているのは、青学のビジネススクールの時に、テレビ局のグローバル展開をテーマに書いた卒業論文です。そのころから、日本は映像の海外展開をするべきだ、もし誰もやらないのなら自分でやろうという考えをずっと持っていました。ビジネスモデルは多少違いますが、発想は一緒です。ですから、今後は、オリジナルの動画を海外にもどんどん発信していこうと考えています。

そのためにも、最先端の経営戦略の知識は常に持っておこうと考え、新しい戦略論の本が出たら必ず読むようにしています。

実は、LINEの社長を辞める前の半年間、韓国の慶熙大学のビジネススクールに通っていました。1カ月のうち1週間だけ韓国に滞在して通学しながら、ファイナンスやマーケティング、人材マネジメントの授業を受けました。最初は、私の経験を授業で話してほしいと頼まれて行ったのですが、せっかくなので自分も勉強しようと思ったわけです。最先端の経営学を学び、かつて青学で学んだ知識はもう古いんだなということを実感しました。

今の時代、経営者ならMBAを持っていて当たり前とまでは言いませんが、MBAで学ぶような知識は絶対に必要だと思います。ビジネスにおける四則演算みたいなもので、それがないと応用が利かない。いわば経営の基礎ですね。ビジネスパーソンにとって、そういった知識は持っていて当たり前の時代になったのではないかと思います。

インタビュー/構成 猪瀬聖(ライター)

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