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日本経済と経済学がわかる GWに読みたい入門書

2016/4/29

日本経済の先行きへの不安が広がっている。安倍政権の経済政策、アベノミクスは効果が乏しかったと断じる経済学者もいる。日本経済に希望をもたらす材料はないのだろうか。ゴールデンウイーク(GW)のまとまった時間を使って、日本経済や経済学について学び直し、現状分析に役立てたいと考える読者のために、今年に入って新刊や改訂版が出た入門書を紹介する。

【日本経済】

「GWに読みたい入門書」の日本経済編

『日本経済読本』の初版は1950年発刊で、今回が20版。はしがきには「経済を理解するには、歴史、制度、事実、理論についてバランスのとれた知識が必要」とある。戦前から戦後の日本経済の足取りを追いながら、「課題先進国」と呼ばれる日本の構造問題をテーマ別にとりあげている。

例えば、政府の財政問題を取り扱った第4章では、資源配分の調整、所得再分配、経済の安定という「財政の3機能」や、国の予算編成の仕組みから説き起こす。財政赤字と累積債務の現状や、消費税率引き上げを巡る議論に触れたうえで財政健全化への取り組みが急務だと指摘している。

できるだけ最新のデータと問題意識に基づいて解説するという意図で編集されている『最新 日本経済入門』。2012年に第4版を発刊した後、民主党から自民党への政権交代、アベノミクスの登場、地方創生などの新しい動きが広がったため、第5版を発刊して直近の動きを盛り込んだ。

今回から新たに加えた第12章「格差問題を考える」は、格差を論じるときによく使われる「ジニ係数」や「ローレンツ曲線」の解説から始まり、日本での格差問題の現状をデータに基づいて明らかにしている。最適な再分配政策をめぐる議論やこどもの貧困問題などもとりあげている。

やや専門的になるが、『日本経済の持続的成長』は題名の通り、持続的な成長をなし遂げるための条件を探った研究者たちの論文集だ。経済産業研究所の第3期中期計画(2011年4月から5年間)で取り組んできた研究成果を紹介している。研究テーマは貿易・産業政策、地方創生、技術革新、日本企業の生産性と産業構造、雇用・人材教育、財政赤字と社会保障制度など幅広い。

【ミクロ・マクロ経済学】

「GWに読みたい入門書」のミクロ・マクロ経済学編

経済理論の基礎をしっかり学べる、手に取りやすい分量の入門書がある。『ミクロ経済学の基礎』は「初めて学ぶ人に贈る入門の入門!!」と表紙の帯でうたっている。導入部の「経済学をなぜ勉強するのか?」では「経済学を勉強するとお金持ちになれるのか」という質問に対する著者なりの答えが書かれている。その次の章から、需要曲線、供給曲線、余剰分析、市場の失敗、ゲーム理論などミクロ経済学の基礎を総ざらいできる。巻末では、さらに学びたい人向けの教科書を推薦しており、便利な構成だ。

ミクロ経済学の基礎知識があり、さらにレベルアップを目指す読者には『公共経済学』がお薦めだ。市場メカニズムは万能ではなく、しばしば「失敗」する。著者は「公共経済学は、市場の失敗を補正する主体として政府を明示的に議論に登場させ、政府がどのようにふるまえばよいかを検討する」と説明する。公共財、不完全競争、外部性、情報の非対称性など中級レベルの経済理論を体系立てて習得できる。

マクロ経済学の基礎を丁寧に説明した『マクロ経済学・入門』は大学の教科書としても多数、採用されている定番の改訂版。アベノミクス、異次元金融緩和、経済成長と所得分配の関係、新しい国際収支統計の内容など最近の話題を取り込み、理論と現実のバランスを取りながら構成されている。「国内総生産(GDP)とは何だろうか?」という基本から、「経済政策はなぜ必要か?」という応用まで幅広く解説。世界でベストセラーとなった『21世紀の資本』の著者、トマ・ピケティ氏の研究への言及もある。マクロ経済学の話題を読み物風にとりあげたコラムも充実している。

『世界のエリートが学ぶマクロ経済入門』は米ハーバード・ビジネススクールの学生向けの入門書。著者によると、マクロ経済学は産出高(アウトプット)、貨幣、期待という3本の基本的な柱の上に成り立っている。本書ではこの3本の柱を順にとりあげ、マクロ経済の仕組みを解き明かす。数学的なモデルよりも基本原則の説明を重視したという。マクロ経済学を学ぶ意義について著者は「現実を比較し、評価するための基準」、さらに広い意味では「経済的な出来事を理解するための枠組み」を得られると強調している。

【総合】

「GWに読みたい入門書」の総合編

経済学を初めて学ぶ人のために書かれた『最初の経済学』は経済学の方法論からミクロ経済学とマクロ経済学の基礎、財政金融政策、国際経済まで幅広く学べる入門書。序章「経済学の課題」では、「資源と希少性」「市場経済の役割」「経済学の方法」など経済学を学ぶにあたっての前提条件を示す。「経済学の方法」では帰納法と演繹(えんえき)法の違いを説明し、経済学では演繹的な思考方法を主に使うと説明したうえで、「演繹法によって導かれた法則は、その規則性をもたらしている原理を明らかにしているので、仮にイレギュラーが生じてもその原因を明らかにでき、より頑健な法則となる」と指摘している。

『世の中の見え方がガラッと変わる経済学入門』は「経済学を単なる知識ではなく、現実を理解する道具にしたいと思って書いた本」だという。経済学のエッセンスを理解し、現実の経済問題に鋭く切り込む力を養うのが狙いだ。第1部「虫の目」でミクロ経済学、第2部「鳥の目」でマクロ経済学の基本を学び、第3部「魚の目」では現実の問題を「経済学のメガネ」で見るという構成。第3部には、財政問題、少子高齢化、消費増税、成長戦略など日本が抱える経済問題が網羅されている。

最後は学問全体に視野を広げた著書を紹介しよう。『あらゆる「学」の歴史とつながりがわかる 学問のしくみ事典』は、いわゆる文系と理系の枠を取り払い、広く学問の世界を俯瞰(ふかん)することを目的に編集された本。人類の「知」の中で、ある学問がどんな位置づけにあるのか、それぞれの学問の成り立ち、歴史、画期的な業績を残した科学者の足跡などが簡潔にまとまっている。経済学の項目もあり、古代から現代まで世界で誕生した様々な経済学説の見取り図を示している。

今回、紹介した入門書を一気に読み通すのは難しいかもしれない。その場合には、気に入った部分だけに目を通し、折に触れて辞書代わりに使うのもよいだろう。めまぐるしく変化する経済の現状を把握し、未来を占うのに役立つはずだ。

(編集委員 前田裕之)

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