女性に多い難聴 1週間以内の早期治療がカギ

日経ヘルス

2016/5/22
(イラスト:sino)
(イラスト:sino)
日経ヘルス

40歳代半ばから聴力は衰え始め、周囲が騒がしいと声が聞き取りにくい、話を聞き返すということが多くなってくる。これは誰にでも起きる加齢現象で心配はない。しかし、急に音が聞こえづらくなった、突然、耳が詰まった感じがして解消されないなどの異常を感じたら要注意だ。

日ごろから冷え、下痢や便秘など、自律神経の乱れからくる不調を自覚している人は、強いストレスを受けている可能性が。聞こえの低下や耳鳴りを伴う難聴のリスクが高くなっている

「年代に関係なく難聴を訴える人が増えている。特に突発性難聴や、女性が約8割を占める急性低音障害型感音難聴(以下低音部型難聴)、メニエール病が多くなっている」とJCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科の石井正則診療部長は話す。

これらの病気の初期症状は似ており、耳が聞こえないといった聴力の異常に加え、耳鳴り、めまいを伴うことが多い。

「メニエール病は増加傾向にあるとはいえ、基本的にはまれな病気。最も注意したいのは突発性難聴だ。放置すると聴力に問題が残ることがある。異常を感じたらまず突発性難聴を疑い、遅くとも1週間以内に耳鼻咽喉科の受診を。早く治療するほど改善しやすい。もし低音部型難聴であっても治療法は同じ」と国際医療福祉大学病院耳鼻咽喉科の中川雅文教授はアドバイスする。

外耳で音(空気の振動)を集め、中耳で振動を大きくする。内耳で音の振動を電気信号に変え、聴神経を経て脳に伝わると、音として認識される。内耳の三半規管は平衡感覚を担うので、ここに障害が起きるとめまいが生じる(イラスト:三弓素青)
耳詰まりや聞こえの悪さを感じたら、耳元で親指と人さし指をこすってみよう。スリスリと音が聞こえないときは病院へ(イラスト:sino)

女性に多い3つの耳の病気

【突発性難聴】 1回発症したら再発はしない

●突然、片耳が聞こえなくなる
●耳が詰まった感じがする
●立ちくらみやめまいが起こることも

電話を取ったときに相手の声が聞こえないことで症状を自覚する人が多い。ほとんどの場合、難聴は片耳に一度だけ起こり、同じ耳には再発はしない。聴神経のウイルス感染や内耳の血流障害の関与が疑われているが、はっきりした原因は不明。治療の結果は、「完治」「聴力がある程度回復」「聴力が回復しない」がそれぞれ3割ずつ。

聴力に異常を感じたら、48時間以内に治療を受けるのがベスト。遅くても1週間以内には耳鼻咽喉科を受診したい。血流を良くする循環改善剤やステロイド、ビタミン剤、利尿剤などが処方される。

【低音部型難聴】 再発するたびに悪化する

●耳が詰まった感じがする
●音がゆがんで聞こえる
●低い音が聞こえなくなる

約80%が女性で、特に20~30代に急増しており、原因は不明。突発性難聴と混同されやすいが、難聴の程度は軽く、治療で聴力は元に戻りやすい。

何も対策を講じないと再発が見られ、蝸牛部がむくむ蝸牛型メニエール病→メニエール病へと移行することも。耳鳴りだけが起きる「無難聴性耳鳴」が前段階として現れることがある。

【メニエール病】 ぐるぐる回るめまいを長時間併発

●耳が詰まった感じやザーッと音がする
●吐き気がある
●回転性の強いめまい

ある日突然、回転性のめまい、激しい嘔吐などとともに、難聴や耳鳴り、耳詰まり感が起きる。この発作は数時間続く。内耳で内リンパ水腫が起きることが原因だが、詳しい機序は不明。

治療を受けずにいると、再発を繰り返し、そのたびに症状が増悪し、聴力が低下する。進行を止めるには、有酸素運動が効果的。

低音部型難聴を再発する人の80%が蝸牛型メニエール病へ移行し、さらに、20%がメニエール病へ移行する。低音部型難聴から、いきなりメニエール病になる人もいる。

■この人に聞きました

石井正則医師
JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長。東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科医長などを経て、現職。スタジオ・ヨギー公認ヨガインストラクターとしても活動中。著書に『耳鳴りがスッキリする呼吸がわかった』(マキノ出版)など。「耳鳴り、難聴の改善にはがんばり過ぎにも注意して」
中川雅文医師
国際医療福祉大学病院耳鼻咽喉科教授。順天堂大学医学部客員准教授などを経て、現職。耳とコミュニケーション研究の第一人者。著書に『耳がよく聞こえる!ようになる本』(河出書房新社)など。「加齢による難聴は、動脈硬化などによる血流の悪化も原因。有酸素運動で体の循環アップを」

(ライター 海老根祐子、構成:日経ヘルス 羽田光)

[日経ヘルス2016年5月号の記事を再構成]