ベンチャー企業幹部への転職は、なぜ魅力的なのか?エグゼクティブ専門の転職エージェント 森本千賀子

管理職や役員クラスの皆さんから転職のご相談をお受けしていると、「ベンチャー企業に転職したい」と志向される方、あるいは、転職に際して希望を突き詰めた結果、それがかなう転職先としてベンチャー企業を選択する方は大勢いらっしゃいます。ベンチャー企業で幹部のポジションに就く魅力とは、どこにあるのでしょうか。特に、大手企業出身の方が、大手にないメリットとして感じていることをお伝えします。

スピード感を持ってビジネスを推進できる

大きな組織で働く方々が不満を抱くポイントの一つに、「根回しや稟議(りんぎ)の面倒さ」があります。何か行動を起こそうとしたとき、関連部署や関連会社など、すべての利害関係者に対し、説明・説得して回らなければなりません。1部署、あるいはたった一人の抵抗勢力によって、計画が頓挫してしまうことも。その間に、せっかくのアイデアが他社に先を越されてしまうという苦い経験をした方もいらっしゃるでしょう。

そうした時間とパワーのムダを省き、思い立ったらすぐに実行に移せること。「調整」に時間をかけず、純粋に「ビジネス」に取り組めること。そこに魅力を感じ、小回りが利くベンチャーを希望する方が多く見られます。

広い範囲で意思決定権を持てる

先ほどお話ししたように、決裁を得る時間と手間に息苦しさを感じている方々は、自身で意思決定権を握りたいと考えます。

ある程度の社歴を重ねると、自分がどの程度まで上のポジションに昇ることができるか、昇進に何年かかりそうか、ある程度つかめてくるもの。上が詰まっていて、意思決定できるポジションになかなかたどり着けないと判断したとき、「ベンチャーへの転職」を検討する方が少なくありません。

なお、大手企業で「課長」クラスのポジションで止まっていた方でも、ベンチャー企業に経営ボードとして迎えられるチャンスも十分にあります。

自分が理想とするチームビルディングができる

大手企業では会社都合で組織体制が入れ替わるため、「チーム作り」が思うようにできないという不満を感じている方も見受けられます。

新人時代から手塩にかけて育て、ようやく成長した部下が、人事部からの辞令によって他部署へ異動していく……そんな切ないような悔しいような気分を味わった方もいらっしゃるでしょう。

その点、ベンチャー企業では、自分自身で見込んだ人物を採用し、独自のマネジメント手法によって育成、チームビルディングを行うことが可能です。信頼関係を築いた仲間や部下と、ずっと一緒に働いていけるというわけです。

社長の近くで働ける。「経営」のノウハウが学べる

「経営者のそばで働きたい」という思いから、ベンチャーを選ぶ方もいらっしゃいます。

そのパターンは大きく分けて2つ。1つは、自分自身がいずれ経営者になるビジョンを描き、経営ノウハウを学びとりたいというパターン。もう1つは、自身が「ナンバー2」や「番頭」のポジションで力を発揮できるタイプであると自覚し、リスペクトできる経営者の右腕として働くことにやりがいを感じるというパターンです。

いずれにしても、ベンチャーでは複数の役割を兼務するのが当たり前ですので、経験の幅が広がります。例えば、大手企業で経理業務の一部を担当していた方が、ベンチャーに転職したことで経理全般から人事まで幅を広げ、「管理部長」というキャリアを手にした例は少なくありません。「マルチプレイヤー」になっておくことで、今後の転職の可能性も広がります。

短期間での年収アップ、資産形成のチャンスがある

「生涯賃金を早いうちに稼ぎきりたいんです」――。

30代後半~40代の方々からは、こんな声もよくお聞きします。

特に、ITやネットなど進化のスピードが速い業界にいる方々には、「自分はいつまで第一線で通用するのだろう。稼ぎ続けられるのだろう」という不安があるようです。そこで、気力・体力が十分なうちに、IPOの可能性を秘めたベンチャー企業で勝負をかけようとするのです。

ここ数年は景気上昇によりIPOが活発です。実際、IPOを実現して「ストックオプション」がきっちりと行使され、短期間で一財産を築いている方々もいらっしゃいます。

なお、「一獲千金」とまではいかなくても、ベンチャーへの転職で収入を上げるチャンスはあります。大手からベンチャーに転職した場合、入社時点では前職年収より2、3割ダウンとなるケースは多いのですが、実績を挙げれば前職年収を上回る可能性も十分あります。

実際、年収1000万円でベンチャーに入社した方が、IPOに貢献、取締役に昇格し、数年で年収2000万円超に到達したケースもあります。

新しいチャレンジや自己成長のワクワク感が味わえる

これまでご紹介してきた「仕事のやりやすさ」「キャリアアップ」「収入」という目的ではなく、純粋に「ワクワク感」を求めてベンチャーを志向する方もいらっしゃいます。

「何か新しいことにチャレンジしたい」「自分が成長する感覚を、もう一度味わいたい」という思いです。

また、「原点に立ち返って、自分が本当にやりたいことを仕事にしたい」という方も。ある40代の方は、金融業界でキャリアを積んだ後、「教育に携わる」という学生時代の夢を思い出し、教育業界に転身されました。

これまでのビジネス経験を生かしつつ異業界に「キャリアチェンジ」ができるという点も、ベンチャーを選ぶメリットといえるでしょう。

次世代リーダーの転職学」は金曜更新です。次回は5月20日の予定です。
連載は3人が交代で担当します。
*黒田真行 ミドル世代専門転職コンサルタント
*森本千賀子 エグゼクティブ専門の転職エージェント
*波戸内啓介 リクルートエグゼクティブエージェント代表取締役社長
森本千賀子(もりもと・ちかこ)
株式会社リクルートエグゼクティブエージェント エグゼクティブコンサルタント
1970年生まれ。独協大学外国語学部英語学科卒業後、93年にリクルート人材センター(現リクルートキャリア)入社。大手からベンチャーまで幅広い企業に対する人材戦略コンサルティング、採用支援、転職支援を手がける。入社1年目にして営業成績1位、全社MVPを受賞以来、つねに高い業績を挙げ続けるスーパー営業ウーマン。現在は、主に経営幹部、管理職を対象とした採用支援、転職支援に取り組む。
2012年、NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」に出演。『リクルートエージェントNO.1営業ウーマンが教える 社長が欲しい「人財」!』(大和書房)、『1000人の経営者に信頼される人の仕事の習慣(日本実業出版社)』、『後悔しない社会人1年目の働き方』(西東社)など著書多数。

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