スマホじゃ撮れない魅力 高級コンパクトデジカメ進化
一眼に迫る大型センサー、明るいレンズ…

高級コンデジの性能がひとつ上の段階に到達した。2016年に入って発表・発売されたモデルは、どれも一般的なコンデジより高画質を実現する「1型」以上の大きい撮像素子(センサー)を搭載。画質が一眼に近い水準にまで迫ってきた。
筆頭格が「FUJIFILM X70」(富士フイルム)だ。小型ボディーながら一眼に使われる「APS-C型」の撮像素子を搭載した。同サイズの撮像素子を搭載したコンデジといえば、リコーイメージングの「GR 2」が先駆け。撮り比べると、自然な発色が持ち味の富士フイルムに対し、リコーはトーンを抑えた色調に仕上がる傾向が強かった。
富士フイルムは絞りリングやシャッタースピードなどのダイヤルを装備し、操る楽しさを実感できる。リコーはシンプルで、良くも悪くもコンデジらしい。発色の自然さに加えて、ダイヤル操作で多様な撮影シーンに対応しやすいことを考えれば、富士フイルムが優れるといえそうだ。
ソニーがけん引してきた1型撮像素子の高級コンデジも競争が激化している。ソニーの対抗馬として名乗りを上げたのは、キヤノンの「PowerShot G7 X Mark2」と、パナソニックの「LUMIX DMC-TX1」だ。キヤノンは24~100ミリの光学4.2倍ズームを搭載し、広角でf1.8、ズームでもf2.8と全域で明るいレンズが特徴。競合するソニーの「Cyber-shot DSC-RX100M4」も同じ開放F値だが24~70ミリの2.9倍ズームにとどまる。

パナソニックは1型モデルでありながら、25~250ミリの光学10倍ズーム。望遠時の開放F値はやや暗めだが、小型・高画質で10倍ズームなのは他にない強み。ソニーと同様に、撮影時にのぞき込む電子ビューファインダー(EVF)を内蔵するのもポイントだ。10倍ズームと1型の撮像素子の組み合わせに魅力を感じるなら、自然とこちらが候補になる。
高倍率ズームよりレンズの明るさを重視するなら、キヤノンとソニーの2択になる。4月下旬発売のキヤノンは試作機のため直接の画質比較ができなかったが、同社のコンデジは一般的に万人受けする色調とされる。ソニーより優れるズームとレンズの性能を考慮すれば、製品版の画質でキヤノンが秀でる可能性は十分にある。ただし、キヤノンはEVFを内蔵しない。晴天時の屋外撮影などでEVFを使いたいなら、ソニーを選んでもいい。
このほか、台風の目になりそうなのは、ニコンが6月に発売する「Nikon DL」シリーズだ。1型撮像素子を搭載し、焦点距離の異なる3モデルが発売される。ソニーやキヤノンと競合しそうなのが、「万能型」に位置する「DL24-85 f/1.8-2.8」。レンズの明るさは同等で、望遠性能はソニーとキヤノンの中間に当たる。ただし、EVFは外付けで別売り。実勢価格などが明らかになってから判断するのも手だ。
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光学40倍ズーム達成

スマホのカメラ機能が進化し続けているとはいえデジカメに追い付けない領域がある。それが高倍率の光学ズーム機能だ。伸縮する鏡筒や、複数のレンズを組み合わせる複雑な機構が欠かせないためスマホに搭載するには限界がある。そこで高付加価値化の一翼を担う機能として注目され、進化を続けてきた。光学40倍を達成したのはキヤノン。「PowerShot SX720 HS」は、新開発レンズの採用などで光学40倍ズームを達成しながら、同30倍ズームの旧型より小型化している。
(日経トレンディ5月号の記事を再構成。文・滝本大輔、塙真一)
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