VAIO Zの従来型ノートと2in1 戸田覚の選び方戸田覚のデジモノ深掘りレポート

バイオの「VAIO Z」。クラムシェル型(左)と2in1(右)
バイオの「VAIO Z」。クラムシェル型(左)と2in1(右)
日経トレンディネット

Windows 8でタッチ操作への対応が始まり、2in1パソコンがお目見えしたが、Windows 10ではスタートメニューが復活し、デスクトップとモダンUIが融合したことで、OSの比重がタッチ操作からマウスやタッチパッドでの操作へと再び戻っている。

そのような状況は、メーカーの製品群にも見て取れる。回転式や脱着式などのディスプレーを搭載した2in1ノートが続々と登場する一方で、従来通りのクラムシェル型のノートの新製品も相変わらずリリースされているのだ。むしろここ最近は、クラムシェル型に魅力的な製品が多いようにも思える。

「VAIO Z」にも、ディスプレーが回転する「マルチフリップ構造」を採用したフリップ(2in1)モデルのほかに、新たにクラムシェルモデルが追加された。このこと自体がメーカーのクラムシェル回帰を物語っているといえるだろう。では、なぜクラムシェルモデルが投入されたのだろうか? 今回はそこを考えつつ、クラムシェルモデルとフリップモデルを比較していく。

【ポイント1】 VAIO Zシリーズにクラムシェルモデルが投入された理由とは?
【ポイント2】 クラムシェルモデルとフリップモデルは何が違うのか?
【ポイント3】 クラムシェルモデルとフリップモデルの、どちらを買うべきか?

高性能機の用途はタブレットよりノート向きか

VAIO Zシリーズの最大の特徴は、性能の高さだ。特に目立つのが、TDP(熱設計電力)28WのCPUを搭載していることだろう。一般的な携帯ノートのCPUは15W。車に置き換えるなら、排気量が多いエンジンを搭載し、とにかくパフォーマンスを重視した設計なのだ。当然、消費電力や発熱は増えるが、そこは独自の「高密度実装技術」と「放熱設計技術」を採用し、ボディーを薄型にしつつ、排熱の効率を上げるなどしている。

新モデルは、「Skylake」と呼ばれる第6世代のIntel Coreプロセッサーと高速なSSD(NVMe)を採用することでさらに性能を向上させ、モバイルノートの中ではダントツの高性能モデルとなっている。そんな製品を欲しがるユーザーは、当然ながら最速を極めたいと考えるマニアックな層か、1分1秒を惜しむような生産性重視のビジネスパーソンだろう。

実際、それほど高速ではないマシン……つまり並のモバイルノートでも、メールチェックや書類作成は問題なくできる。しかし、プレゼンテーションファイルにビデオを取り込んだり、多くのアプリを切り替えながら作業したりすると処理性能の差が出てくる。パソコンの性能によって起動から作業完了までに数分の差が出るとしたら、その積み重ねは大きい。少しの時間も無駄にしたくない人には、VAIO Zシリーズの処理性能の高さは魅力的に映るのだ。

さて、そんなVAIO Zシリーズにクラムシェルモデルが投入された。もちろん、基本性能は最高クラスだ。他のVAIOシリーズを含め、クラムシェルのモバイルノートはいくらでもあるが、それでもVAIO Zシリーズのクラムシェルモデルを買うユーザーは、「高性能は望むがフリップモデルである必要はない」という考えなのだろう。

VAIO Zシリーズは、モバイルノートとしては大きめの13.3型で、キーボードもそれなりに打ちやすいため、仕事用のメインマシンとして使うことを考えている人が多いと思われる。そういう人は、書類作成などに費やす時間が長くなるはず。つまり、タッチ操作よりもキーボード&マウスによる操作が中心になるので、タブレットとして使う場面は多くないと考えていい。

【ポイント1】 VAIO Zシリーズにクラムシェルモデルが投入された理由とは?
【結論1】 高性能なモバイルノートは欲しいが、フリップモデルである必要はないと考えるユーザーが少なくないと推測できる
VAIO Zはキーボードも打ちやすい。据え置いて使うならフリップ機構は必要ない
タブレットとして利用できるフリップモデルは、電車での移動時などは便利だが……

クラムシェルの方が軽くて安い

フリップモデルとクラムシェルモデルの違いをチェックするに当たって、まずは両者のサイズおよび重量を比較してみよう。

【フリップモデル】
 ・サイズ:幅324.2×高さ15.0~16.8×奥行き215.3mm
 ・重量:1.35kg

【クラムシェルモデル】
 ・サイズ:幅324.2×高さ15.0~16.8×奥行き215.3mm
 ・重量:1.17kg

VAIO Zシリーズの場合、フリップモデルとクラムシェルモデルのサイズは全く変わらない。外観も、天板の真ん中に折り畳める線が入っているかどうかの違いくらいしかない。強度を下げるなどの妥協をすればもっと薄くできたのだろうが、そこまでする意味はなさそうだ。デザインは十分に完成している。

フリップモデル(2in1、右)は中央にラインが入っている
天板部分の厚さは両モデルとも同じだ

驚くのが重量の違いだ。なんとクラムシェルモデルのほうが、およそ180gも軽いのだ。外観がほとんど変わらないのに、この差はどこにあるのか。おそらく、液晶のフリップ機構や、キーボード上部に設けられたロックなど各部の違いを積み上げると180gになるのだろう。

180gの差でも、両者を持ち比べると、確かにクラムシェルモデルは軽いと感じる。日常的に持ち歩く際にも違いを体感できるはずだ。これまでも僕はいろいろなパソコンを持ち歩いてきたが、1.5kgのパソコンと1.3kgのパソコンでは相当違ったし、1.3kgと1.1kgでもずいぶん差があった。

13.3型液晶のモデルとして考えると、VAIO Zシリーズはかなり軽い。もちろん他社にはもっと軽いモデルもあるが、性能を考えたら文句なしの携帯性だ。1.1kg程度なら常にかばんに入れておいてもそれほど負担にならないと思う。

なお、ソニーストアでの最小構成の価格は、クラムシェルモデルが15万6800円、フリップモデルが19万9800円で、クラムシェルモデルのほうが4万3000円安い。また、同じスペックを選んで比べても、フリップモデルより1万5500円安くなる。クラムシェルモデルは液晶がアンチグレアなのもポイントだ。

クラムシェルモデルはアンチグレア液晶で映り込みが少ない
フリップモデルは、撮影用の光源がくっきり映り込んでしまった

【ポイント2】 クラムシェルとフリップモデルではどう違うのか?
【結論2】 外観は大差ないが、クラムシェルモデルは180gも軽く、価格も安い。しかも液晶はアンチグレアだ

ポイントはデジタル手書きの利用頻度

フリップモデルとクラムシェルモデル、どちらを買うか考える際にはいくつかのポイントがある。まずは先述した価格だろう。据え置きで使うなら、重量の差はあまり関係ない。持ち歩くのが前提なら軽いクラムシェルモデルと言いたいところだが、電車の中などではタブレットとしても使えたほうが便利だ。

ただし、Windows用アプリにタッチで操作できるものがほとんどないのは、皆さんがご存じの通り。タブレットとして使うことがないなら、フリップ機構は無駄になるので、価格が安くて軽いクラムシェルモデルを選択するべきだ。

僕としては、操作面でのフリップモデルの利点はタッチ操作うんぬんではなく、専用のデジタイザー(別売5480円)によるデジタル手書きにあると思っている。以前、このコラムでも書いたように、デジタル手書きは生産性の素晴らしい向上につながる。特にアイデアをまとめたり、会議や打ち合わせの内容を簡潔に記録したりしたいユーザーには、デジタル手書きはおすすめだ。クラムシェルモデルと比べるとフリップモデルは相当に分が悪いが、デジタル手書きを利用する機会があるという方には、あえてフリップモデルをおすすめしたい。

とはいえ、デジタル手書きをよく利用するなら、iPad Proやデジタイザー付きのAndroid(アンドロイド)タブレットなど、別の製品を選ぶのも手。あまり使わないキーボードが無駄になるからだ。予算が許すなら、VAIO ZのクラムシェルモデルとiPad Proなどとの併用がベストということになるだろう。

【ポイント3】 クラムシェルモデルとフリップモデルではどちらを買うべきか?
【結論3】 デジタル手書きが不要ならクラムシェルモデル。デジタル手書きを利用することがあるならフリップをおすすめしたい
デジタル手書きをどの程度利用するかが、どちらのモデルを選ぶかの分岐点になる
戸田覚(とだ・さとる)
1963年生まれのビジネス書作家。著書は120冊以上に上る。パソコンなどのデジタル製品にも造詣が深く、多数の連載記事も持つ。ユーザー視点の辛口評価が好評。

[日経トレンディネット 2016年3月10日付の記事を再構成]