3万円台スマホ4機種、機能充実した富士通が一押し
格安SIMと組み合わせやすいSIMフリースマートフォン(スマホ)は2万円台の機種が人気。だが、少し上の3万円台に注目すると、おサイフケータイや防水性能など、付加機能が備わり、国内メーカー製の端末も選べる。使い勝手がいい端末がそろっているのだ。
そこで3万円台のSIMフリースマホの中から、おサイフケータイや防水・防じんに対応している富士通の「arrows M02」、シャープが開発しNTTレゾナントが販売する「g04」、5.5インチ大型液晶と高画素インカメラが特徴のASUS「ZenFone Selfie」、独特なデザインとカラーリングが魅力のHTC「Desire 626」を選出。これら注目機種が持つ付加機能をチェックし、価格に見合う価値があるかどうかを見極めた。
フルHD画面の機種もある
まずはスペックを比較してみよう。以下の表は、「arrows M02」「g04」「ZenFone Selfie」「Desire 626」の仕様をまとめたものだ。特に優れている項目は、赤字で強調している。
最も顕著な違いは画面サイズだ。arrows M02、g04、Desire 626はいずれも5型で1280×720ドットだが、ZenFone Selfieは5.5型でフルHD(1920×1080ドット)の画面を備えている。
本体サイズも画面に比例する。ZenFone Selfieは幅・高さ・厚さいずれも最大で、重さも一番重い。g04はシャープの狭額縁デザインで、コンパクトなサイズだ。
OSはarrows M02とDesire 626がAndroid 5.1で、ZenFone Selfieは5.0.2、g04は5.0となる。メモリーは2GB、ストレージは16GBと全機種共通だ。CPUはZenFone Selfieのみ1.5GHz×4コアと1.0GHz×4コアの8コア構成になっている。他はいずれも1.2GHzの4コアだ。
カメラと付加機能には、各機種の特徴がよく現れている。自撮り(セルフィー)を強化しているZenFone Selfieは、インカメラにも1300万画素のカメラを採用。国内メーカー製のarrows M02とg04は防水とおサイフケータイに対応している(arrows M02は防じん、g04は赤外線通信にも対応)。
処理性能は平均的なレベル
性能を測るベンチマークアプリの「AnTuTu Benchmark」でテストしところ、結果トップは8コアのZenFone Selfieで、3万789点。残る3機種は、arrows M02が2万4465点、g04が2万3444点、Desire 626が2万6177点(スコアの点数はアプリ独自のもの)。ややDesireが優れているものの、ほぼ同レベルの処理性能といえる。
なお、同じベンチマークアプリで測定したSIMフリースマホの定番機種、ファーウェイ「P8lite」は2万8495点。また2013年冬に発売されたグーグルのハイエンドスマホ「Nexus 5」は、5万1548点だった。3機種の性能はハイエンド機種には劣るものの、SIMフリースマホとしては平均的な範囲と言えるだろう。
実際にブラウザーのChromeやTwitter、ゲーム「アスファルト8」といったアプリを使ってみたが、どの機種もキビキビと動作した。なかでも一番使いやすかったのはZenFone Selfieだ。コア数が多いからか、Webブラウジングやアプリのインストールがとてもスムーズだった。
ただしベンチマークを見る限りでは、処理性能は平均的。例えば、1万円台のスマホでも、もっと高いスコアの機種がある。3万円台のスマホには、高いパフォーマンスを求めるよりも、防水性能やおサイフケータイ、高画素なカメラといった、付加機能に期待するほうがいいだろう。
モバイルSuicaやWAONに対応
arrows M02とg04は、おサイフケータイを搭載している。対応サービスは、「モバイルSuica」をはじめ、「楽天Edy」や「モバイルWAON」など(2016年1月15日時点)。
また、g04は防水(IPX5/7)、arrows M02は防水防じん(IPX5/8、IP6X)に対応する。特にg04はキャップレス防水なので、充電時やパソコンとの接続のときにキャップを外す面倒がない。
なお、Desire 626は薄さと軽さが魅力。背面はラバーコーティングが施されており、滑りにくいのが特徴だ。
広角のインカメラが便利
ZenFone Selfieは1300万画素のインカメラが特徴だ。撮影補助用のLEDライトも備えており、薄暗い室内でも自撮りできる。
画角も広い。下の画像は、腕を目いっぱい伸ばした位置からそれぞれのインカメラで筆者の顔を捉えてみた結果だ。ZenFone Selfieでは、胸から上までの範囲を広く写せる。他の機種より広く映るので、肘を軽く曲げた程度でも顔が映せ、自撮りそのものが簡単だった。
また、ZenFone Selfieは大画面なので、写真撮影時のファインダーとしても使いやすい。自撮りだけでなく、通常の写真撮影や、撮影した写真を楽しむときにも便利だ。
国内メーカーは独自画面
最後にソフトウエアをチェックしていく。どの機種も独自のホーム画面やアプリを搭載している。
arrows M02は、標準的な「NX! ホーム」と、シンプルな「LeafUI」、2種類のホーム画面を用意している。ナビゲーションバーの色や電池アイコンのデザインなど、見た目のカスタマイズができるのも特徴だ。また、活動量を記録するオリジナルアプリ「My Tracker」もインストールされている。
LTEのデータ通信と無線LANを同時に利用する「マルチコネクション」機能を使えば、接続が不安定な無線LANを補助したり、動画視聴時などに早く読み込んだりできる。例えば、筆者の場合、無線LANが不安定な自宅の庭で通信するとき、通常は無線LANを手動でオフにする。しかしマルチコネクションならLTEも利用できるので、オフにする手間が掛からなかった。
ただ、マルチコネクションは通信のデータ容量を消費する。容量が少ないプランを契約しているユーザーは注意する必要がある。
g04のホーム画面は左右2列構成。左側にウィジェットやアイコンが並び、右側がアプリドロワーに相当する。上下方向にページが増える独自のホーム画面に最初は戸惑ったが、慣れると上下方向のページ遷移がウェブサイトの上下スクロールなどと調和して、使いやすくなってくる。
また、NTTコミュニケーションズのIP電話サービス「050 plus」や不必要なバックグラウンド動作を終了させるメモリー解放機能を備えたアプリ「milk cleaner」といった、便利なオリジナルアプリも多数搭載している。
あっさりとした海外メーカーの2機種
ZenFone Selfieは、ASUS独自の「Zen UI」を搭載する。カスタマイズ性の高い独自のホーム画面や、メモリー解放、ブルーライトカットといった機能を呼び出せる通知パネルを利用できる。
Desire 626は、HTC独自の「Sense UI」を搭載している。ホーム画面も独自の「HTC SENSE HOME」に置き換えられており、端末の位置情報に応じて最適なアプリを提示したり、ニュースやSNSのフィードを表示する「BlinkFeed」を利用したりできる。テーマの着せ替えも可能だ。
便利だったのは、ドックに配置したアプリをロック画面から直接起動できる機能だ。Desire 626のスリープを解除すると、ロック画面の最下段にドック上のアプリアイコンが表示される。起動したいアプリのアイコンを上に向かってドラッグし、必要に応じてロックを解除すれば、目的のアプリをすぐ利用できる。ドックの存在価値を大きく高める機能だ。
ホーム画面の使い勝手を大きく変えている国内の2機種に対し、海外の2機種は標準のインターフェースを踏襲しつつ、独自機能やカスタマイズ性といった要素をプラスしている印象だ。
筆者としては、使いやすさとカスタマイズ性を兼ね備えるarrows M02が使いやすかった。ホーム画面も2種類あるので、シンプルさを優先するか、Androidの標準インターフェースが好みかで選べるところもよい。
おすすめの機種は?
今回チェックした4機種では、arrows M02を一番におすすめしたい。防水防じん性能を持つスリムな本体やおサイフケータイ機能に加えて、マルチコネクションといったワイヤレス機能も充実している。価格も3万2000円台と、コストパフォーマンスにも優れている。防水とおサイフケータイに対応しつつコンパクトなg04もよいが、税込みだと4万円を超える価格がネックだと感じた。
筆者としては、ZenFone Selfieも捨てがたい。アウトカメラにはレーザーAF(オートフォーカス)があるので、確実な焦点合わせができる。それに、高画素・広角のインカメラは、数人で記念写真を撮るときや、旅先で風景をバックに自撮りしたいときの写真の画質も高い。カメラ機能を重んじる人には、ZenFone Selfieも選択肢に入るだろう。
(ライター 松村武宏)
[日経トレンディネット 2016年2月9日付の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。