王道のミートソース対決 セブンが半歩リード
コンビニごとに見た目が全く異なる
今回のコンビニ食品の実食テストは、パスタの定番であるミートソース編をお届けする。各コンビニで味はどれだけ違いがあるのか、また本当においしいのか。その疑問を解消すべく、味香り戦略研究所による味覚分析と、食のプロによる実食テストで、コンビニ大手3社のミートソースをチェック。セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート、それぞれの味の傾向を明らかにしていく。ただし、ローソンのミートソースは、実食テスト後にリニューアルしてしまった。このため、あくまで参考情報としての掲載と考えてほしい。
実食するのは以下の3商品だ。
○ファミリーマート「じっくり煮込んだミートソース」(369円)
○<参考>ローソン「あらびき牛肉のミートソース」(369円)
※ローソンはその後、価格は同じだがパッケージや中味をリニューアルした「牛挽肉のミートソース」を販売している
コンビニ3社のミートソースを並べると、意外にも見た目が全く異なることが判明。ソースの色や麺の仕上げが異なることから、各社が独自のおいしさを追求していることが分かる。
ファミリーマートとローソンは麺に直接ミートソースがかかっているが、セブンイレブンだけ麺とソースの容器が分かれている。これはソースの水分で麺がのびることを防ぐためだと思われる。セブンイレブンの麺は白くて太く、ファミリーマートの麺は黄色味があり、セブンイレブンと比べるとやや細い。ちなみにローソンは、微量のミートソースをあらかじめ麺に絡めてから販売していることも分かった。
ソースの見た目も大きく異なり、セブンイレブンが一番赤味が強く、トマト味が利いていることが予想できる。挽き肉などの具材はわりと細かく、ソースに溶け込んでいるようだ。もっとも色が濃いファミリーマートのソースは、商品名の通りじっくり煮込んだような印象。挽き肉も大きく粒感があり、食べ応えがありそうなビジュアルだ。また、ローソンのソースには挽き肉のほかに、他社にはないパセリや人参のみじん切りが見られた。
セブンイレブンとファミリーマートはどちらも税込み398円で、ローソンは税込み399円(リニューアル後も同じ価格)。3商品の正確な内容量は不明だが、手に持つとずっしり重く、弁当よりも安いためお得感がある。ワンプレートで食べやすく、コンビニのミートソースはランチに最適だ。
ソースの色の違い、麺の太さや仕上げの違いは、やはりおいしさに関係があるのだろうか? 味覚分析の結果とプロが実食した感想から、それぞれのミートソースの特徴を見ていこう。
セブンイレブンはバランス重視
パスタの味を決定づけるのはやはりソースだ。そこで各コンビニのミートソースを、味香り戦略研究所の味覚センサーで分析した。その結果は棒グラフの通り。なお、分析は「ソース+麺」で行ったが、グラフはほぼソースの味であると考えて差し支えない。ローソンの分析結果も参考までに掲載した。
ファミリーマートはローソンと味覚分析の結果が似ていて、棒グラフの長さもほぼ同じ。しかし、よく見ると各味覚の数値がわずかに異なる。この味覚分析の結果について、同研究所の味覚参謀(フェロー)である菅慎太郎氏は、「ファミリーマートは塩味とコクが強く、全体的にソースの味が強い」と分析。一方のローソンは、「コクのあるソースで、本格的な味を目指している。塩味も利いていてメリハリを感じるだろう」(菅氏)と話す。
対照的に、突出した味覚があるわけではなく、棒グラフが一番短いセブンイレブンについては、「旨味とコクのバランスの取れたソースに仕上がっている」(菅氏)と分析。塩味を控えるなど全体的な味のバランスが良いことから、「調和に重きを置いた味付け」と解説する。
では、味の印象に大きく影響する旨味とコクのバランスについて、下図でさらに詳しく見てみよう。
改めてファミリーマートは旨味もコクも強く、全体的にしっかりとした味付けであることが鮮明になったはず。後味であるコクも強いが、先味である旨味が立っているため、食べた瞬間においしさが広がっていくと予想できる。また、ファミリーマートとローソンの味覚の違いも明らかになっただろう。ファミリーマートは旨味を立たせ、ローソンは旨味よりもコクを強調した味付けだと確認できた。
これらの結果を頭に入れて、次ページからのプロの審査員による試食をチェックしてほしい。審査員たちの感想、この味覚分析による味の傾向から、自分の好みに合ったミートソースを選んでほしい。
さわけん氏~セブンイレブンは甘さ控えめで大人の味
イタリアンのシェフでもあった「科学する料理研究家」のさわけん氏に実食をお願いした。どこのコンビニのミートソースがおいしかったのか、その順位も付けてもらうとともに各商品の感想をもらった。
○1位 セブンイレブン
さわけん氏が1位に選んだのはセブンイレブンだった。「甘さ控えめで大人の味に仕上げていて一番おいしい」とその理由を話す。続けて「ミートソースらしいトマト感があって、ソースの量もそこそこ多くて麺とよく絡む」と高く評価した。しかし麺については、「硬さを出そうとしているのか、やや太くてモソモソしている」とコメント。ミートソースなので太くてもそこまで気にならないと話しつつも、「もう少し細くして食感良く仕上げてもいいかな」とまとめた。
○2位 ファミリーマート
「肉が粒々していて、肉の味がおいしい」と評価したファミリーマートが2位に。「肉がゴロゴロしていて、ミートソースの原型であるラグーを目指しているところが好印象」だと話す。しかしながら、「ソースが少ないのか、ミートソースっぽさがあまり感じられない」とのこと。味自体も「ウスターソースやマヨネーズのような酸味が気になる」と述べた。
○3位 ローソン
3位のローソンは「一般的なミートソースの味」と評価。「なじみのあるミートソースの味だけど、それよりは甘さ控えめで、スパイスを使って爽やかに仕上げている」との感想を述べた。最初から麺にソースをあえている点は高く評価し、「もともとパスタとソースはあえて出すもの。本来のミートソースもあえている」と話す。「上にかけるのはアメリカ式で、イタリア式はあえている。麺とソースをあえて、残ったソースを上からかけているんです」と教えてくれた。
「ミートソースに求めるものはやっぱりお肉。肉々しさが欲しいですね。ファミリーマートは粒が大きくおいしかったのですが、セブンイレブンのほうが肉の味に加えてトマト感もあって全体のバランスが良かった。パスタとして食べるならセブンイレブンですが、麺料理として食べるならどれもおいしいですよ。麺はアルデンテとはほど遠いですが、ソフト麺のようにブニョブニョでもなく十分おいしく食べられます」
寺田氏~肉が多くスパイスが利いているローソンが好み
続いて、このコンビニ食品実食テストでもおなじみ、料理研究家の寺田真二郎氏に実食をお願いした。どこのコンビニのミートソースがおいしかったのか、その順位も付けてもらうとともに各商品の感想をもらった。
○1位 ローソン
「お肉もたくさん入っているのでぜいたくな印象を受ける」として、ローソンを1位に選んだ寺田氏。「ミートソースなので肉感は重要。お肉の旨味が一番感じられた」ことが決め手となったようだ。また、スパイスが利いていたことも高く評価し、「スパイシーな味付けで、野菜の甘味もしっかり感じる。イタリア料理店で食べるボロネーゼに近いというか、本格的なミートソースといった感じ」とコメントした。最初から麺とソースをあえている点についても、「ミートソースは食べる部分によっては味が薄いところも出てくるので、これはいいですね。ソース自体の量も多めで、しっかり麺に絡まって最後までおいしく食べられる」と絶賛した。
○2位 セブンイレブン
「昔懐かしいミートソース」と評価したセブンイレブンが2位に。「結構甘めで子どもも好きそうな味。こういう日があってもいいなと思う」との感想を述べた。麺に関しては「一番太く、モチモチした食感」のため、「イタリアンレストランというよりは洋食屋のミートソーススパゲッティといった印象」とコメント。また、ソースが多めのパスタが好きだと話し、「もう少しソースが多いとうれしいですね。甘いのでパルメザンチーズをかけて完成かな」とも。
○3位 ファミリーマート
3位のファミリーマートについては、「肉も感じられるが、野菜が多めのソース」と話す寺田氏。野菜の食感も味も感じられる点は高く評価するも、この具材感により「ジャージャー麺のようなイメージ」になっているという。しかし麺に関しては、「ゆでたてに近いというか、アルデンテのようなコシがしっかりある。麺は一番好き」とコメント。麺がダントツでおいしかっただけに残念だと話す。
「ミートソースは"肉を食べている"といった感じのものが理想なので、肉感がもっとも強かったローソンを1位に選びました。スパイスが利いた今風の味付けも好印象で、最後まで飽きずに食べられます。ソースも多く、最初から麺にあえてあるのも良かったですね。麺に関しては、3商品とも思っていたよりおいしかったです。昔は麺がくっつかないように油でギトギトだったので敬遠していましたが、今はそんなことないんですね。さすがに冷凍パスタには及びませんが、のびているわけでもなくコシがあったりモチモチに仕上げていたり、なかなかおいしかったです」
(ライター 津田昌宏)
[日経トレンディネット 2016年2月24日付の記事を再構成]
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