2016/4/4

「私の履歴書」今語る

かつての日本航空は労使関係が複雑で再建の難しい会社だと見られていましたが、実際はかなり苦労したのではありませんか。

「いや、そんなことはなかった。再建を頼まれて私が考えたのは、当時残った3万2千人の社員の方々を何とかしたいとそれだけでした。正直言って、株主や利害関係者のことよりも社員の幸せのことをまず考えました。80歳を前した男が無給で、京都から東京に行って。そんな姿を見て全従業員が共鳴してくれたことが、再建の最大の原動力です」

「リーダーは失敗に学ぶ」と言います。大きな失敗が次の成功の糧になったという経験はありますか。

稲盛和夫 京セラ名誉会長

「いや、実はないんです。不遜な言い方かもしれませんが。ありません」

ちょっとした失敗もないんですか。

「若い頃、大手電機メーカーの研究所のみなさんに講演したとき、同じ質問をされたことがありました。失敗したことがないというと、そんなバカな、人間誰しも失敗はあるでしょ、とみんないう。私は失敗を失敗として終わらせたくなくて、食らいついて成功するまでやる、あきらめない、だから失敗の経験はありませんと。そういうわけです」

日本の名門企業では不祥事が相次いでいます。結局はリーダーシップに問題あるとの指摘もありますが。

「立派な会社で、社長、会長と登りつめてゆくと、どうしても謙虚さを忘れてしまう。それが最大の毒になります。私はいま改めて『謙虚にしておごらず、さらに努力』という言葉を自分に言い聞かせています」

「謙虚にしておごらず」は稲盛さんらしい言葉ですが、84歳になっても「さらに努力」ですか。

「いや、いや、もうしていません(笑)。(企業家のための経営塾の)盛和塾は人助けだと思ってやっていますが、今日みたいに会社に来たら、会長や社長の相談に少し乗る程度です。後は何もしていない」