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授業で着想、NPO法人を設立 タンザニアで事業化へ NPO法人AfriMedico代表 町井恵理氏(下)

2016/3/28

 アフリカで医療支援事業を展開するNPO法人AfriMedico(アフリメディコ)の町井恵理代表(38)が語る、MBAとの意外な出合いと、ボランティア活動との接点。後半ではいよいよ、授業で作ったビジネスモデルを元にNPOを設立。MBAで出会った仲間とともに、アフリカの医療問題の解決に乗り出す。

■授業の課題で作ったビジネスモデルが、NPOの設立につながった。

 最も役立ったと思った科目は、後期課程の選択科目だった、起業を前提にビジネスモデルを考案する授業でした。

 そもそもビジネススクールに入った目的が、持続可能な組織を運営する仕組みを学び、アフリカの医療問題の解決に貢献することだったので、その授業でも、アフリカの医療支援事業のビジネスモデルを作ろうと決めました。ニッチなテーマなので一緒にやるメンバーを集めるのに苦労しましたが、私を含めた4人でプロジェクトに取り掛かりました。私は元々前に出るタイプではなかったのですが、プロジェクトを進めるには、みんなの先頭に立って引っ張っていく力が求められるので、自然と鍛えられました。

 ビジネスモデルとして考えたのは、日本発祥の置き薬の手法です。アフリカの貧しい地域では薬が手に入らないので、例え軽症でも病院に行くことがあります。でも、病院に行こうにも、例えば私のいた地域では、一番近い病院までロバが引く馬車に乗って2時間かかり、着く前に亡くなる人もいました。病院に無事たどりついても、肝心の薬がないこともありました。

 使った分だけ代金後払いという置き薬のモデルを応用すれば、誰でもすぐに薬が手に入り、軽症の場合は病院に行かずに自分で病気を治すセルフメディケーションも可能になると考えました。ほかにも100個ぐらいビジネスモデルを検討しましたが、結局、置き薬方式が一番現地のニーズに合っているという結論に達し、中身を詰めて授業の最後に発表しました。

 授業としてのプロジェクトはこれで完結しましたが、思い描いていたアフリカでの医療支援事業に乗り出すため、このビジネスモデルをベースに実際にNPOを立ち上げることにしました。

■在学中の2014年春、AfriMedicoを立ち上げた。

 ビジネスモデルを作る過程では、NPOか株式会社かという議論もしました。事業で儲けた分を株主に還元するのが株式会社で、次の社会的課題の解決のために投資するのがNPO。私自身は社会問題の解決ということを常に軸に置きたかったので、自分にコミットする意味も含め、最終的にNPOを選択しました。

 2013年の暮れにスタッフを集めるためのイベントを開き、最初は20人前後でスタート。スタッフの数は今はもう少し増えています。スタッフの3分の1は同じビジネススクール出身で、もう3分の1は青年海外協力隊のつながり、後はこの活動を進めていくうえで出会ったメンバーです。みんな私と同様、職を持ちながら、医療関係や財務、広報などそれぞれの専門知識を生かし、AfriMedicoの活動にかかわってくれています。

 平日昼間はそれぞれ仕事を持っているので、活動は主に平日夜と週末。立ち上げてまだ日が浅いので、私自身は結構バタバタしており、睡眠時間を削りながら何とか運営しています。グロービス時代の忙しい二足のわらじの生活が、まだそのまま続いているような感覚です。

 グロービスでは、「自分の志とは何か」ということを絶えず問われ続けました。まず、受験の時に志望動機で書き、面接で質問され、入学して最初にみんなの前で発表します。その後も、定期的にそれぞれの志を伝える機会が設けられています。そうやって自分にプレッシャーや自己暗示を掛け、目標を達成することにつながっていくのだと思います。

 私の場合は、アフリカの医療に貢献したいとずっと言い続けましたが、そのお陰で、辛くても、軸がぶれずにここまでやってこられているのだと思います。

■2015年にNPO法人格を取得。メディアに取り上げられる機会も増えるなど、活動も徐々に認知され始めている。

 現在はタンザニアでプロジェクトを開始し、調査やヒアリング、フィージビリティースタディーを重ねています。ニジュールは、残念ながら治安悪化で青年海外協力隊が撤退してしまい、現状では難しいと判断。以前から接点のあったタンザニアでスタートすることにしました。

 置き薬のビジネスモデルも、日本の文化に合っていたからこそ300年以上も続いてきたわけで、私たちがやろうとしているビジネスモデルも、各国や地域の文化に合わせてアレンジしていかなければならないと考えています。この考え方も、グロービスから得ました。グロービスでは、グローバル企業の経営を学ぶ授業があり、世界各国で成功を収めた企業のケーススタディーをいくつもこなしました。そこから、世界で成功するには、その国の文化に合わせてビジネスモデルを修正することが重要だということを学んだんです。

 現在の最大の課題は、資金調達。成果を出すにはある程度の事業規模が必要ですが、現地での薬剤の申請費用がけっこうかかり、輸送コストも高い。今のところは、寄付や助成金のほか、クラウドファンディングやビジネスモデルコンテストの賞金を活用していますが、これからは企業との提携・協力なども強化していきたいと考えています。

 NPOを運営して気付いたのは、トップである私自身の意志や考えが揺らいでいる時は、組織自体も何となくふらふらして、視点が定まらないということ。私のモチベーションが下がると組織のモチベーションも下がり、逆に私のモチベーションが上がると、みんなも盛り上がって私に付いてきてくれます。ミッション達成のためには、さらに自分を磨いて組織のトップとしての器をもっと大きくしていかなければと日々感じています。

 振り返ってみると、私にとってビジネススクールは、「自分が何をしたいのか」をじっくりと考え続けた場であり、そして、自分の志を達成するために必要な組織マネジメント力を学び、その志に向かって一緒に走ってくれる仲間を得た場でした。その意味では、私が今こうしてアフリカの医療問題の解決に取り組めるのも、MBAをとったお陰だと思っています。

インタビュー/構成 猪瀬 聖(フリージャーナリスト)

[日経Bizアカデミー2016年3月28日付]

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