アナログレコードでハイレゾ 音で攻めるソニー
今、世界のオーディオ業界では、2つの大きなトレンドがある。ひとつはソニーが特に推進している高音質の「ハイレゾ」、もう一つが欧米の若者を中心に起きているアナログレコードのブームだ。
その流れを受けて、2016年1月に米国で開催されたIT・家電の総合展示会「CES 2016」でソニーが披露したユニークなオーディオ機器が、アナログレコードプレーヤーの「PS-HX500」だ。
実はこのPS-HX500、レコードプレーヤーでありながら、なんとハイレゾにも対応している。なぜLPレコードを再生するターンテーブルが「ハイレゾ対応」という謎な仕様になっているのか。その秘密は、PS-HX500の録音機能にあった。
レコードの音をハイレゾで録音
PS-HX500は通常のアナログ出力端子を通してオーディオ機器に接続できるだけでなく、USB端子を通してパソコンと直結できる。
また、Windows PC/Mac向けに提供される無料ソフト「Hi-Res Audio Recorder」を通して、DSD 5.6MHz/PCMで録音することで、いわゆるレコードからパソコンへのデジタル変換にも対応している。つまり、PS-HX500は録音機としてハイレゾ対応しているのだ。
「ハイレゾ音質で取り込んだレコードの音源をウォークマンなどに転送すれば、外出先でも高音質で聴ける」というのが同社の説明だ。だが、米国では、ハイレゾはまだまだ普及途上にある。ハイレゾにこだわらず、アナログ好きの若者も含め、音楽ユーザーを全方位で取り込みたいというのが、同製品を作ったソニーの本音ではないだろうか。
このレコードプレーヤーは、2016年4月16日に希望小売価格6万1000円で発売される。ハイレゾもアナログも楽しみたい人は要チェックだ。
ハイレゾ製品が色鮮やかに
ソニーが今、「楽しいハイレゾ」として仕掛けているのが、カラフルな「h.ear」イヤホン・ヘッドホン。CES 2016では、新たにワイヤレススピーカー「h.ear go」、ワイヤレスヘッドホン「h.ear on Wireless NC」、ネックバンド型イヤホン「h.ear on Wireless」の3モデルが発表された。
今回の新製品では、同社が開発したハイレゾ音楽を送れるワイヤレスオーディオ規格「LDAC」を全面採用したのが特徴だ。
注目のモデルはワイヤレススピーカーの「h.ear go」。一見するとポータブルタイプの小型Bluetoothスピーカーのようにも見えるが、無線LANとBluetoothの両方に対応し、しかもLDACによってワイヤレスのハイレゾ再生ができる。こんなハイスペックな仕様の製品を、カラフルな5色で展開する。
また「h.ear on Wireless NC」は、名前の通りノイズキャンセルに対応しており、ハイレゾにも対応したワイヤレスヘッドホンの高機能モデル。首にかけるネックストラップ型を採用したワイヤレスイヤホン「h.ear in Wireless」も新たに出る。
同社によると「h.ear」は、従来のソニーファンよりも年齢層の低い10代、20代から特に受け入れられているとのこと。「ワイヤレス」がトレンドの米国市場を主なターゲットとした3製品を加えることで、2016年はカラフルなハイレゾ製品がさらに浸透することになりそうだ。
重低音モデルや「ランタン型スピーカー」も展開
ウォークマンの新機種発表こそなかったが、その他にもオーディオ新製品が発表された。そのひとつは小型ながらパンチの効いた重低音を再現しているワイヤレススピーカー「EXTRA BASS」シリーズだ。新たに「SRS-XB3」「SRS-XB2」を展開する。
ソニーが毎年行っている音楽トレンドの調査によると、重低音系サウンドが好まれる市場は米国、ラテン、インド。一方で同製品はIPX5対応の防水なので、スマホと組み合わせるカジュアル視聴用スピーカーとして、日本にも導入される可能性大だ。
最後に、2015年秋に発表したランタン型スピーカー「Life Space UX」も、日本で春発売予定の商品として展示されていた。日常生活にどれだけ溶け込む製品となるのか、ソニーの挑戦が問われる商品化となるだろう。
(ライター 折原一也)
[日経トレンディネット 2016年1月21日付の記事を再構成]
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