レトルトが苦手な「魚介」を生かしたご当地カレーご当地レトルトカレー最前線

それぞれ魚介の旨味を引き出すことにこだわりと努力が感じられた「魚介」ご当地レトルトカレー(写真:ヤマシタチカコ 以下同)
それぞれ魚介の旨味を引き出すことにこだわりと努力が感じられた「魚介」ご当地レトルトカレー(写真:ヤマシタチカコ 以下同)
「ご当地モノ」ブームの中心として、これまでに国内で累計2000種類以上も発売されているレトルトカレー。様々な具材を使ったカレーが存在するが、そのなかでも「レトルトで作るのは難しい」とされてきたのが、魚介類を使ったレトルトカレーだ。数百種類のレトルトカレーを取りそろえるお店「カレーランド」の猪俣吉章さんの意見をもとに、海の幸・シーフードを使った注目の「魚介」カレーを紹介する。

どうして魚介のカレーはレトルトで作るのは難しいのか。それは加圧加熱殺菌の工程でルーに熱が通り過ぎ、シーフードの生臭さがルーに染みこんだり、身が固くなったりしてしまうからだ。

「食べている時に嫌な生臭さを感じるものもありますし、それをごまかすためにニンニクなどで香りづけをしているものもあります。ただ、今回紹介する魚介カレーはどれも難しい魚介の味をうまく調理しています」(猪俣さん)

まず最初に紹介するのは、函館の老舗レストランが開発したレトルトカレーだ。

後乗せの具材が目にも鮮やか「五島軒 海鮮カレー」

濃厚なルーにチキンとビーフのブイヨンで煮込んだシーフードを乗せて食べる「五島軒 海鮮カレー」(株式会社 五島軒・北海道・864円 以下、価格はすべて税込み)

百貨店で行われる地域物産展でも圧倒的な人気がある北海道。特産品が多く、加えてスープカレーの発祥地ということもあり、ご当地レトルトカレーの種類も豊富だ。五島軒はその北海道・函館にある1879年設立の老舗レストラン。ビーフカレーやエゾ鹿カレーなど多数のレトルトカレーを開発・発売しているが、この「五島軒 海鮮カレー」はその中でも最も高価格の商品だ。

箱の中にはカレールーが入った袋と具材の袋が2つ入っており、温めてからカレーの上に具材のカニ、ホタテ、海老、イカを乗せて食べる。レトルトカレーはじっくりと煮込む課程で具材がカレーの色に染まってしまうため、素材の色が楽しめる後乗せ方式は見た目にも鮮やかだ。

ルーは洋食屋で食べる欧風カレーのように、スパイスが強めに効いていて、ご飯が進む濃厚な味。具材にはカレーの味が染みていないので、口の中でルーの辛さを中和してくれた。

それでも辛く感じる場合は「具材袋に入っているスープを足すのもおすすめ」(猪俣さん)という。試してみると辛さがよりマイルドになるだけでなく、スープに流れ出ていた魚介のだしがルーに加わり、より香り豊かな風味を味わうことができた。

カキエキスとカレーの調和「広島漁連 牡蠣カレー」

「広島漁連 牡蠣カレー」(広島漁業協同組合連合会・広島県・648円)。牡蠣の身も崩れることなく原型を保っている

広島の名産として知られるカキを使用した、広島県漁連による「牡蠣カレー」。カキを使ったカレーはこれ以外にも複数発売されているが、「広島県漁連のものは身がしっかりしていて、カキのだしがよく効いている」(猪俣氏)。

最も実入りのよくなる時期のものを厳選したというカキは、普通のスプーンにちょうど収まるぐらいの大きさのものが3粒入っていた。食感はしっかりしているが、長く煮込んだためか味は少しぼやけている。しかし、その分ルーにカキのエキスが染み出ているようだ。

赤茶色のルーはさらさらとして液体に近く、一般的なレトルトカレーの200gより少し多めの220g。口に含むとあっさりしたカレーの味にカキの風味が重なる。

魚介独特の風味があるため好みは分かれるかもしれないが、気になるような生臭さはなかった。

女性におすすめ「姫甘海老の贅沢カレー」

外箱の可愛らしさも目をひく「姫甘海老の贅沢カレー」(海老屋 嘉・鹿児島県・1200円)

「きれいなピンク色のエビをたくさん並べた外箱で、とにかくふんだんに使っていることを表現した」(海老屋 嘉広報部)というのは、3月末に発売予定の新作「姫甘海老の贅沢カレー」。姫甘海老(ヒメアマエビ)とは鹿児島県錦江湾でしか獲れない天然の甘エビで、鮮やかなピンク色と強い甘みが特徴だ。

姫甘海老を殻ごと粉砕し、ルーに混ぜ込んでいる。封を開けた瞬間に、エビの香りが一面に広がった。香りを引き出すため、姫甘海老は長時間ゆっくりいためるという。

「海老の形は残っていませんが、香りを嗅げばふんだんに使っていることがわかるはず。殻ごと入っているので口当たりが少しざらついていますが、気になるほどではないです」(猪俣さん)

タイ風のレッドカレーをベースにしており、ココナッツミルクのまろやかさの後にピリッとした辛さが効いてくる。

「開発スタッフは全員女性で、女性向けの視点で開発を行っています。エビの殻には抗酸化作用があり美容に効果的ですが、なかなか殻まで食べる機会は少ない。姫甘海老は殻もやわらかく、ルーに混ぜ込むことで食べやすくしました」(海老屋 嘉広報部)

遠目には白とピンクのストライプ模様に見える外箱は、中央に金の箔押しがキラリと光り、デザインもかわいらしい。女性へのプレゼントにも良さそうだ。

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魚介カレーは前回紹介した肉系カレーのように、とにかく大きな具材を使っているといった分かりやすい特徴はないが、ルーと具材を別々の袋にするなど、どれも魚介の生臭さを抑え、いかに風味を引き出すかへの努力が感じられた。魚介カレーは各企業のこだわりが伝わるご当地カレーだと言えるのではないだろうか。

次回は具材や見た目が一風変わった「変わり種」カレーを紹介する。

※記事内の価格はカレーランドで調査。

(取材・文 小沼理<かみゆ>)

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