東武百貨店池袋店のレストランフロアが25年ぶりの全面改装を終了し、11階から15階までの5フロアが一新された。合計面積約1万300平米、都内百貨店で最大級となる46店舗が集うレストランフロア「ダイニングシティ スパイス」としてリニューアルオープンしたのだ。
大規模な改装となるため、同百貨店では5フロアを3回に分けて段階的にオープン。2015年10月には14.15階(第1期)、2016年1月14日には13階(第2期)、2月26日には残る11.12階がリニューアルオープンして、グランドオープンを迎えた。11階は「カフェ&ダイニング」と位置づけ、買い物途中のカフェ利用だけでも立ち寄れる開放的なフロアとした一方、12.13階は「バラエティダイニング」とし、従来どおり和洋中と幅広いバリエーションのレストランを展開している。
同百貨店によると、従来のレストランフロアは「食事内容は充実しているが、食事以外が楽しみづらい」という不満があったという。第1期では14階を会社帰りの飲み会や女子会を視野に入れた「バー&ダイニング」、15階を大人が楽しめる本物志向のレストランで構成した「プレミアムダイニング」としてリニューアル。“飲めるデパレス(デパートレストラン)”として人気を集め、12月までの売り上げが前年比140.5%を記録したそうだ。また第2期のリニューアルで、13階から15階までの来客率は同220%を超え、売り上げも同170%となっているという。
最近オープンした新施設では「渋谷モディ」、「キュープラザ原宿」など、新業態の飲食店をメインにしたところが増えている。それに対して百貨店内のレストランはファミリー向けの老舗店が多く、安心感はあるが面白みに欠ける印象が強かった。
一方、東武百貨店の今回のリニューアルでは、11.12階で新業態店が3店、池袋エリア初出店が8店舗あるという。いったいどのような店が出店しているのか。オープン直前の内覧会に足を運んだ。
パティシエが料理を作ったら
池袋エリア初出店の店が多いとはいえ、5フロア全体では有名店が中心という印象。新たな試みの新業態店が集中しているのは11階だ。
そのひとつが、人気パティシエの鎧塚俊彦氏がプロデュースするダイニングレストラン「TOSHI STYLE」。「パティシエが料理を作ったらどうなるか」という新たなアプローチで、自身初となる“パティスリーキュイジーヌ”を展開するという。3種類のコースは明らかに盛りだくさんのデザートの比重が大きく、メインのボリュームが控えめになっている。男性には物足りないかもしれないが、少量多種の料理とデザートを味わいたい女性には、大いに受けそうだ。
その向かいには、日本上陸4年目となる「ホノルルコーヒー」初のダイナー業態「ハワイアンカフェ ホノルルコーヒーダイナー」がある。シンプルな生地に9種類からトッピングを選んでかける新パンケーキメニューや、初となる食事メニュー、同店舗でしか食べられないフルーツボウルやケーキなどを提供する。
並びには、自家製天然酵母やゲランドの塩など素材重視のパン作りで知られる「VENT DE LUDO(ヴァン ドゥ リュド)」初のファミリービストロスタイルのレストラン「VENT DE LUDO ベーカリーカフェ&レストラン」がオープン。パンをいろいろな料理につけたり、浸したり、はさんだり、のせたりして新たな楽しみ方を提案するという。ランチタイムにはパンが食べ放題のブッフェがある。
11階の目玉となりそうなのが、熟成肉を使ったNYスタイルのハンバーグ&ステーキ専門店「Old Manhattan(オールドマンハッタン)」。1900年創業の名古屋の老舗精肉専門店「スギモト」の社長が、ニューヨークで出会った熟成肉の感動を伝えるためにスギモトの屋号を使わずに作った初の店だという。マイナス1℃にコントロールしつつ電圧をかける「氷温熟成」のシステムを使用し、微生物の付着を促す「ドライエイジング」で旨味を凝縮させ、ナッツのような香りを引き出しているのが特徴だ。
11階は攻め「12階は守り」
人気シェフや人気ブランド店をおさえつつも 攻めている印象の11階に対し、12階は和食店「赤坂うまや」「銀座 福助」「四川飯店」「洋食レストラン 新宿中村屋」「味乃宮川」など、デパレスらしい安定感のある老舗有名店をそろえた。こういった店のほうが安心できる層も多いだろう。駅直結の利便性による回遊客、従来からの固定客に加え、カフェ、飲み会など、利用目的を明確にしたことで、店の選択にこだわりのある30~40代の女性を新規客として呼び込みたい考えだ。
乗降客数で世界トップクラスの池袋駅に直結するデパレスの思い切ったリニューアルは、これからデパレスのあり方に大きな影響を与えそうだ。
(ライター 桑原恵美子)
[日経トレンディネット 2016年3月2日付の記事を再構成]