いまさら聞けない格安SIMのメリットとデメリット

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新しい職場へ異動するために新機種に変更したり、子どもの進学や進級を機会に家族で使う携帯電話を見直したり、4月を前に携帯電話の環境を見直そうと考えている人も多いのではないか。スマートフォン(スマホ)やキャリアを変える時に気になるのが、最近よく耳にする「格安SIM」「格安スマホ」という言葉。大手の通信会社より毎月のコストが安くなるのはうれしいが、メリットやデメリットがよくわからないという人もいるのでは? そこで、格安SIM・格安スマホのメリットとデメリットをまとめてみた。

格安SIMってどんなもの?

そもそも「格安SIM」や「格安スマホ」とは、一体どんなものだろうか。

格安SIMの「SIM(シム)」とは「subscriber identity module」の略語。スマホやタブレットなどの端末にセットする「SIMカード」という小さなチップを示す。SIMカードは通信会社が発行しており、契約者の情報と端末を結びつける役割を担う。

近頃は、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクといった大手の通信会社よりも安い料金でサービスを提供する通信会社が増えている。格安SIMとは、こうした割安な通信会社のサービスを指す言葉だ。

格安SIMを提供する通信会社は、大手の通信会社が持つ基地局などのネットワーク設備に相乗りしてサービスを提供している。自社が持つ設備を最低限に抑え、設備投資の費用を減らすことで、安い料金を実現しているのだ。

この格安SIMとスマートフォンをセットにした商品が格安スマホ。セットされるスマホは大手の通信会社が取り扱うものより安い2万~3万円の価格帯が主流で、使える通信会社の制約がないSIMフリー端末が採用されている。端末代と毎月の料金の双方を安く抑えることで、通信費全体を削減する効果がある。

写真右寄りの小さなチップがSIMカード。料金が割安な格安SIMのSIMカードとスマートフォンをセットにしたものを、格安スマホと呼ぶ

格安SIMのメリットは? 月額4000円以上安くなることも

格安SIMの最大のメリットは、月額料金の安さだ。

例えば、NTTドコモのスマートフォン向け料金プランでは、基本プランの「カケホーダイプラン(スマホ/タブ)」(月額2700円、税別。以下、本文中の価格はすべて税別)、インターネット接続サービスの「spモード」(月額300円)、パケットパックの「データSパック」(月額3500円)を組み合わせた6500円が一番安い。通話料金は定額で、毎月使えるデータ容量は2ギガバイトとなる。

一方、格安SIM大手の「OCN モバイル ONE」が提供する「3GB/月コース」は、月額1800円でデータ容量は3ギガバイト。NTTドコモで一番安いプラン構成より4700円安いのに、使えるデータ容量は1ギガバイトも多くなる。

料金プランがシンプルでわかりやすいのも格安SIMのメリットだ。大手の通信会社では「基本プラン」「接続サービス」「データ容量」の3つを組み合わせる必要がある。ところが、格安SIMではデータ容量が異なる料金プランから、予算に合うものを選ぶだけでいい。

端末の選択肢も幅広い

格安SIMでは、利用できる端末が幅広いこともメリットだ。

まず、格安SIMは、自分で購入したSIMフリー端末と組み合わせて使える。例えば、ファーウェイの「P8lite」や富士通の「arrows M02」といったSIMフリーのAndroidスマホは、家電量販店やアマゾンなどで購入できる。また、AppleのiPhone 6sやiPhone 6s PlusもSIMフリー版が販売されていて、好きな格安SIMと組み合わせられる。

SIMフリー端末と格安SIMをセットにした格安スマホを販売している通信会社も多い。海外メーカー製のコストパフォーマンスが高い端末を中心に、おサイフケータイ機能や防水性能を持った国内メーカー製の端末もラインアップされている。使いたい付加機能や予算に合わせて選べるのがポイントだ。

また、現在NTTドコモとauを利用していれば、端末を買い替えずに格安SIMへ乗り換えられる。例えば、NTTドコモに相乗りしている格安SIMは、基地局などの設備がNTTドコモと共通だ。そのため、NTTドコモが販売した端末であれば、ドコモの設備に相乗りしている格安SIMでも引き続き利用できるので、格安スマホを買わなくてもいい。

大手の通信会社を解約して格安SIMに乗り換えてしまっても、同じ端末が使えれば、大手の通信会社と契約し直したいときに端末を買い直す必要がないからだ。

ただし、端末によってはネットワーク設備に対応していなかったり、使える機能に制限があったりする。格安SIMの通信会社が公表している動作確認済み端末のリストを事前に参照しておきたい。

格安SIMのデメリットは? 通話が多い人は要注意

では格安SIMのデメリットは何か。

最大のデメリットは、通話定額プランを提供している通信会社が限られることだ。前述のOCN モバイル ONEの場合、どのプランでも30秒当たり20円の通話料が掛かる。OCN モバイルONEの3GB/月コース(月額1800円)をNTTドコモの最安プラン構成(月額6500円)と比較した場合、1カ月に1時間58分(1日4分)以上電話を掛ける人は、かえって通信費全体が高くなってしまう。

楽天が提供する格安SIMの「楽天モバイル」では、月額850円で毎回5分までの通話料を無料にする「5分かけ放題オプション」を提供している。ニフティの格安SIM「NifMo」では、月額1300円で国内宛ての通話が定額になる「国内かけ放題」というオプションが利用可能だ。電話を掛けることが多ければ、こうした数少ない格安SIMを選ぶしかなく、選択肢が限られる。

また、格安SIMでは通信品質にもデメリットがある。平日のお昼時や週末の繁華街など、利用者が集中しやすい時間帯や場所では、格安SIMの通信速度が大手の通信会社よりも大幅に遅いことがある。 ウェブサイトやSNSの読み込み程度であれば少し待てばいいものの、YouTubeやニコニコ動画などのオンライン動画はデータ容量が大きいので視聴できなくなる場合もある。

通信速度が遅くなる原因の1つは「帯域」だ。格安SIMは、大手の通信会社から帯域という情報の通り道の一部を借りている。大手の帯域を4車線の道路とすれば、そのうちの1車線だけを借りている、といったイメージだ。狭い道に多くの車が集中すると渋滞になるように、通信速度も遅くなってしまうのだ。

もう1つの原因は、格安SIMの通信会社自身が持つ設備の処理能力だ。帯域を車線とすれば、設備は交通整理を行う信号機や誘導員に相当する。設備が優れていれば速度は遅くなりにくいが、利用者の数に設備投資が追いつかないと、速度が低下する一因となってしまう。

キャリアメールが使えなくなる

さらに格安SIMでは、大手の通信会社が提供しているキャリアメールが利用できない。GmailやYahoo!メールといった無料のメールサービスや、インターネットプロバイダーが提供するメールサービスを利用することになる。

問題はキャリアメールに送信する場合だ。GmailやプロバイダーのメールはPCメールとして扱われるため、相手の迷惑メールフィルターの設定によっては、こちらからのメールが「迷惑メール」と判断され、相手に届かない場合がある。

格安SIMを契約する前に、こうしたデメリットも把握した上で、乗り換えに適するかどうかを検討したい。

格安SIMはどこで契約できる?

NTTドコモ、au、ソフトバンクといった大手の通信会社は日本全国にショップを展開し、契約の受付や端末の販売、各種サポートを提供している。新しい端末を買いたいとき、料金プランやオプションについて相談したいときなど、とりあえずショップに行けばいい。

これに対し、格安SIMの通信会社は主にウェブサイト経由で契約や販売、サポートを行っている。ウェブサイトで新規契約や乗り換えの手続きをすると、自宅にSIMカードや端末が送られてくる。自宅にいながら通販感覚で利用できるのがメリットだが、SIMカードを端末にセットしたり、その後の設定をしたりするのはすべてユーザー自身となる。スマートフォンやパソコンのセットアップが苦手な人にとってはデメリットだ。

一方、楽天の「楽天モバイル」、ビックカメラの「BIC SIM」、イオンリテールの「イオンスマホ」のように、直営店や家電量販店などの専用カウンターで手続きできる格安SIMもある。スタッフと対話しながら料金プランや端末を選んだり、セットアップを進めたりできるため、大手の通信会社のショップと同じ感覚で契約できるのがメリットだ。

ただ、直営店や専用カウンターがあるのは、主に大都市圏に限られる。イオンリテールのイオンスマホなどを除き、地方在住者はウェブサイトから申し込むのが主な契約方法となるだろう。

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これから4回にわたり格安SIMへの乗り換え方法や注意点から、マニアックな使いこなしまで解説していく。次回(「使い放題に低速専用…格安SIMは『自分仕様』で選ぶ」)では、格安SIMにはどんな種類があるのか、より具体的なサービス内容を紹介する。

(ライター 松村武宏)

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