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企業の女性活躍推進、埼玉は本気だ 行政が支援へ動く

2016/2/6

企業の現場で女性活躍を進めることが、経済の活性化につながる。埼玉県は、この考え方で独自の支援策を進めている。工夫するモデル企業を追いながら施策の狙いを検証した。

M字カーブの谷が深い――。2010年の国勢調査で埼玉県の30代女性の就業率は61.1%と全国平均を3.4ポイント下回った。核家族が多い同県では結婚や出産を機に女性が退職する例が目立っていた。30年には少子高齢化で県の生産年齢人口が416万人とピークの00年と比べ2割弱減る見通しで、女性の就業推進が不可欠だった。

同県は08年に女性のキャリアセンターを開くなど、男女共同参画の一環で女性の就業を軸とした支援をしてきた。ただ国勢調査の結果などを受け、就業支援と並行して働く環境の整備の必要性を痛感した。以後、県は企業への働きかけを強めていった。

その任務を担うのが12年4月に産業労働部に設けたウーマノミクス課だ。地方自治体の場合、女性の活躍推進は男女共同参画を担う部署が管轄することが多い。ただ産業労働部なら地元企業との長年のパイプがあり、「企業の理解を得やすい」(ウーマノミクス課企画・企業内保育所担当の伊島順子主幹)利点がある。

「埼玉版ウーマノミクスプロジェクト」を始めてから、同県の女性就業率(15~64歳)は改善傾向にある。総務省の労働力調査では14年まで3年連続で上昇した。

プロジェクトの最終的な狙いは女性の活躍を県の経済活性化につなげることだ。女性の活躍推進へ企業が初めの一歩を踏み出すのはなかなか難しい。埼玉県の事例は行政のかかわり方のモデルを示している。

■タムロン 働く環境や制度、県がお墨付き

さいたま市にあるレンズメーカー、タムロンの本社には毎朝、女性社員が子連れでやってくる。2015年11月にできた隣接するタムロンキッズ保育園に我が子を預けるためだ。病児保育も可能な同保育園には、6人の子がいる。

会社の敷地に設けられたタムロンキッズ保育園(さいたま市見沼区)

同社の大きな転機は3年前。女性社員十数人が「女性管理職の比率を上げてほしい」などと小野守男社長に直談判した。様々な要望を聞いた小野社長は即決した。「よし、企業内保育園を作ろう」

埼玉県のウーマノミクス課が進める「多様な働き方実践企業認定制度」で最高のプラチナ認定を受けている。同制度は「過去5年で出産した女性社員の復帰1年後の継続就業率が50%以上」「男性社員の子育て支援を積極的に行っている」など6項目の要件を満たした数でプラチナ、ゴールド、シルバー認定する。

タムロンは14年3月にゴールド認定を受けたが、唯一未達成だったのが「女性の管理職比率10%以上」。部署ごとに女性活躍の目標を立てるなど徹底し、15年3月にプラチナに昇格した。1月に特機事業本部業務管理課長に昇進した土橋麻紀さんは「時短勤務制度が取りやすくなるなど社内の雰囲気が変わった」と話す。20年に女性管理職比率15%を目指す。

同制度の認定企業数は16年1月時点で1976社に上る。ウーマノミクス課推進担当の鈴木康之主幹は「制度が企業の女性活躍推進の動機付けになれば」と話している。

■近藤建設 変わりたい会社へ、コンサルを派遣

「(女性の登用が)難しい、厳しいと上司が考えているとすれば物事は進みません」。昨年12月中旬、近藤建設(埼玉県ふじみ野市)の会議室で人材開発のコンサルティングを手掛けるセルフトランセンデンス(東京・渋谷)の徳橋英治社長が声を張り上げた。

コンサルティングで女性が働きやすい環境づくりを目指す(埼玉県ふじみ野市の近藤建設)

埼玉県のコンサルタント派遣事業の4回目の席だ。徳橋社長が進行役を務め、各部署の男性リーダー6人が集まった。「多少無理があっても女性に業務を任せる」「作業環境をどう変えられるか」。課題と今後について約2時間、議論した。

県は14年度から同事業を始めた。初年度は実施企業で女性の新役職を設けたり、防犯用カメラを置いて女性の安全を確保したりする成果が出た。

建設業界は力仕事が必要なイメージが強く、現場監督などリーダーの役職に女性が登用されない状況が続いてきた。近藤建設では設計担当の半数が女性だが、宇佐見佳之社長は「良い家を造るにはきめ細かい提案ができる女性の一層の活躍が必要」と感じており、同事業に応募した。

近藤建設では「最近の採用試験は女子学生の受験が多い」(寺島照一・総務グループマネージャー)。夢を持って入社した意欲ある若手女性社員をどう育てるか。宇佐見社長は「コンサルティングが社員の意識を変えるきっかけになれば」と話している。

■人手不足「男の職場」へ進出

ウーマノミクス課は15年度、「女性の活躍するフィールド拡大事業」に重点を置いた。22の商工団体や業界団体と組み、経営者層にも女性就業に関わる課題を身近に感じるよう力を注いだ。

トラック協会、酒造組合に電気工事工業組合――。どの業界も働き手不足が目立つが、男性社会のイメージが強い。各団体が主催するセミナーで企業ごとに女性活用の取り組みを紹介したほか、女性限定の交流会を開き同業界で働く者同士の横のつながりを深めた。

「埼玉版ウーマノミクスプロジェクト」は15年度までの4年間を一つの区切りとして始まった。野尻一敏ウーマノミクス課長は「男性の働き方改革にも力を入れていきたい」と話す。育児への積極参加や長時間労働の是正など男性が抱える課題は多い。ここでも埼玉県側から積極的に企業に改革を促す方針だ。

(町田知宏)

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