濃厚な味わい 復活した幻の将軍家献上「なす」
ニッポンのうまいもの
一富士、二鷹、三なすび──。初夢で見ると縁起が良いとされるこの3つ、その起源は江戸時代に、徳川家康に縁が深い駿河(現在の静岡県)の名物を並べたのが有力とされている。
果肉はしっかり 甘みが強く濃厚
当時、静岡で栽培され、将軍家へも献上されていた記録が残っているのが「折戸なす」。明治時代に栽培が途絶えたものの、2005年に国の研究機関から種を譲り受け、静岡市清水区で栽培が再開された。通常のナスと比べると収量が3分の1程度で、全国への流通は難しい。しかし数量限定ながら、お取り寄せでこの希少なナスを味わえる。収穫の最盛期は6~7月だが、出荷は12月頃まで断続的に続く。
外見は真ん丸。実が締まっており、味が濃厚なのが特徴。調理しやすく、煮びたしや炒め物の他、スライスして焼くだけでも十分おいしい。
糖度が高いカブ 味は4種類ある
ひょんなことから蘇ったのが、滋賀県近江八幡市の「北之庄菜」。カブの仲間で漬物用として栽培されていたが、1960年代に自然消滅。21世紀に入り、その種がマッチ箱の中から偶然見つかったのだ。
北之庄菜そのものは地元でしか食べられない。しかし、真冬に半干しした後、糠の中で発酵させた調味料「きざみ北之庄菜」なら取り寄せが可能だ。ご飯に混ぜる他、パスタと合わせてもおいしい。
歯応えがあり後味はほろ苦い
「四方竹」は秋が旬で、切り口が四角い珍しいタケノコ。高知県南国市で明治時代から栽培されている。生のままでは傷みやすいが、水煮にすることで全国発送が可能になった。シャキシャキとした歯応えでかすかな苦みがある。
薄い衣を剥ぐと甘い香りがする
伝統的な野菜に対し、果物は海外原産の珍しい品種が目立つ。なかでも特に目新しいのは八ケ岳山麓の富士見高原で栽培されているブランドほおずき「太陽の子」。標高が1000m以上あり、1年を通じて冷涼で昼夜の寒暖差が大きいことで甘みが増し、栽培に適しているという。日本では観賞用として栽培されているほおずきだが、欧州では古くから高級食材として使われてきたという。
見た目はミニトマトのようで、香りは強く、パイナップルに似た南国風。かじると甘さと酸味のバランスが良く、濃厚な味わいだった。
酸味があってビタミンC豊富
欧米でドリンクなどに使われることが多いカシスやアセローラも、実は国内で栽培している地域がある。
アセローラは沖縄県本部町の名産。レモンの約30倍のビタミンCを含むといわれるほど栄養価が高い。酸味が強く、ピューレ状にしてジュースなどにするとおいしい。
カシスは主に北欧で栽培されているベリーの仲間。冷涼な気候の青森市が日本一の産地となっている。そのままでは酸味が強いが、砂糖をかけてレンジで加熱するだけで簡単にカシスのソースが作れる。
通常の桃よりも歯応えがある
福島県みずほフーズの「ほんのりピーチ」は果肉が堅い桃をシソ入りの甘酢に漬け込んだフルーツの漬物。シソの香りが強く、食べ始めは梅干しに似ているようにも感じるが、かむうちに桃の甘みが染み出してくる。コリコリとした食感。後味はサッパリしており、食後の口直しにも向く。
栃木県の「スカイベリー」は2011年に独占栽培の権利が切れた「とちおとめ」に代わる品種として、栃木県農業試験場いちご研究所が開発した。大粒で甘く、色も鮮やかだ。
大きなものは4cm近くに
「西明寺栗」は秋田藩の佐竹家が丹波や美濃などから種子を取り寄せて栽培が始まったとされる。300年かけて自然交配で改良されてきた。1粒の大きさが平均で3cm強、重さが25~30gにもなる。ずっしりと重みを感じる。
(日経トレンディ編集部)
[日経トレンディ2015年11月号の記事を再構成]
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