焼き鳥もヨシ アフリカ原産・東北出身「食鳥の女王」
筋肉が発達しやすく、多くの地鶏と比べても肉本来の強い旨みや歯応えが楽しめる軍鶏(シャモ)。しかし大量飼育や繁殖の難しさもあり、流通する大半が他の鶏との交配種だ。
そんななか、シャモ同士の子である「100%純粋種」を取り寄せられるのが、高知県南国市後免町の「ごめんケンカシャモ」だ。南国市ではもともと闘鶏が盛んで、戦わせたシャモを鍋にする文化があった。市内の有志で結成した「ごめんシャモ研究会」が、当時の食文化を復活させようと試行錯誤。10年から本格生産を始めたが、出荷数は現時点でも年間5000羽にとどまる。
シャモ同士だと繁殖力が高くないのに加え、飼育期間は6カ月とシャモのなかでも長い。また、非常に闘争心が強く、狭い面積で多数を飼うことはできない。あえてケージに入れずに平飼いだが、けんかで死ぬ個体も少なくないという。
しかしそのぶん、発達した筋肉の歯応えや味はさすがだ。取り寄せられる鍋セットでは、シャモからダシを取ったスープで煮込むのだが、凝縮された肉の旨みが広がるのを実感できた。
食鳥の女王、ほろほろ鳥
同様にシャモの比率が75%と高く、シャモならではの味わいが楽しめるのが、1984年に誕生した「東京しゃも」。シャモと鶏のロードアイランドレッドの交配種に、さらにシャモを交配させる「戻し交配」という手法が使われている。
10年以上かけて選別した、比較的闘争心が弱い、大量飼育に向く純粋種がベース。そのうえで、味を保ちつつ卵を多く産む交配の組み合わせを探した結果、この戻し交配にたどり着いたという。こちらも鍋で味わってみたが、肉に心地よい弾力があり、濃厚な味わいだった。
フランスではなじみの高級食材で"食鳥の女王"などとも呼ばれるのが、アフリカ・ギニア原産の「ほろほろ鳥」。キジの仲間で、肉の旨みは強いが、野鳥特有の臭いやクセはない。焼いて軽く塩を振っただけでも十分な旨さで、焼き鳥などの日本料理にも向きそうだ。
本来は熱帯地方の鳥で寒さに弱く、また、周囲に人が多いと卵を産まなくなるほど神経質。日本での飼育には向かないとされてきたが、実は東北で飼育されている。日本で唯一の専用農場が、岩手県花巻市の石黒農場だ。周囲で湧き出る温泉を利用した床暖房などの工夫の結果、冬の寒さが厳しい土地でも飼育に成功したという。
(日経トレンディ 臼田正彦)
[日経トレンディ2015年11月号の記事を基に再構成]
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