16年音楽シーン 邦楽は周年組、洋楽は男性ソロに注目

高音質のハイレゾリューション(ハイレゾ)音源や定額制音楽配信、コンサート市場の活況など、ポピュラー音楽を取り巻く環境が変わり、そうした流れを担う顔ぶれも入れ替わっている。邦楽では「周年」を迎えるベテランの活動が活発になる一方、バンド勢など新顔も台頭。洋楽では2月に発表されるグラミー賞候補で男性ソロが躍進するなど、変化の兆しもある。2016年の注目トピックから、今年の音楽シーンを見通した。

16年は多くの人気邦楽アーティストが「周年」を迎える。ドラマ「花子とアン」の主題歌「にじいろ」が記憶に新しい絢香はデビュー10周年組で、2月に国立代々木競技場第一体育館で特別ライブを開く。同期で幅広い世代に人気のいきものがかりは、メンバー選曲のベスト盤を3月発売。メンバー3人の地元である神奈川県の海老名、厚木で8月と9月に大型野外ライブを開催する。

15周年の中島美嘉は1~3月に企画アルバムを連続発表。EXILEはTRIBE挙げての華やかな祝祭が予想される。昨年韓国でデビュー15周年を迎えたBoAは、16年に日本で15周年。日本のファンを喜ばせる活動が増えそうだ。

昨年末に紅白歌合戦に初出場したBUMP OF CHICKENは結成20周年を祝ったアルバムやライブなど企画が目白押しだ。PUFFYやT.M.Revolutionら20周年組がヒット曲満載のライブを開けば盛り上がりは必至。

一方、若手は昨年に続き個性豊かなバンドがシーンを引っ張りそうだ。先頭を走るのが初の紅白出場を果たしたゲスの極み乙女。か。彼らの活躍に後押しされ、15年に日比谷野外音楽堂ライブを行ったCzecho No Republic(チェコ・ノー・リパブリック)や東京カランコロンなど、ポップで親しみやすい男女混成バンドも市民権を獲得しつつある。

地道に活動規模を拡大するバンド勢とは対照的に、R&B/ヒップホップ系グループはデビュー直後から大舞台。今月デビューのiKONは世界的人気のK-POPグループBIGBANGの弟分で、2月から日本武道館3公演を含むツアーに出る。

EXILEファミリーのDOBERMAN INFINITYはEXILEや三代目J Soul Brothersのツアーに同行。本格的なラップを披露して、認知度が上がっている。

miwaや大原櫻子らギター女子も元気。また、デビュー曲がドラマ主題歌に抜てきされたAnlyや、演技もこなす井上苑子など10代のみずみずしい歌声も人気を呼びそうだ。

洋楽界はレディー・ガガやケイティ・ペリーが躍進した08年ごろから長らく女性がシーンを引っ張ってきたが、いよいよ男性たちの巻き返しが本格化した。15年12月に明らかになった第58回グラミー賞の候補は、そんなトレンドをダイレクトに反映している。

グラミー賞主要4部門のノミネート20枠のうち、12枠は男性ソロ。女性ソロは前年の10枠から6枠に減った。最多の11部門にノミネートされたラッパーのケンドリック・ラマーを筆頭に、ザ・ウィークエンド(7部門)、ドレイク(5部門)、エド・シーラン、クリス・ステイプルトン(4部門)、ジェイムス・ベイ、ディアンジェロ、マーク・ロンソン(3部門)と男性ソロが大躍進している。

ケンドリックは15年にテイラー・スウィフトのシングルにフィーチャリングされ日本でも知名度を高めた。アルバム「トゥ・ピンプ・ア・バタフライ」は15年のシーンを代表する傑作の1枚と目されていたためノミネートは予想通りだが、11部門というのは84年のマイケル・ジャクソンの12部門に次ぐ史上2位の記録だ。

女性陣では昨年の来日で東京ドームを連日満員にしたテイラー・スウィフトと新星のトリー・ケリーが健闘。テイラーはロングヒットを続ける14年のアルバム「1989」で、主要3部門を含む7部門で候補に。06年のデビューアルバム以来、2年ごとにアルバムを発売しているため、16年末には新作が届く可能性が高そうだ。

(日経エンタテインメント!2月号の記事を再構成。文:橘川有子、新谷洋子)

[日本経済新聞夕刊2016年1月23日付]

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