大流行か、新型ノロウイルス まず手洗いを徹底
川崎市で発見された新型ノロウイルスは、変異した新たな遺伝子を含む「GII・17」という型。人に感染するノロウイルスには30種類以上の型があるが、昨シーズンまでの流行は、「GII・4」型が中心だった。
「嘔吐(おうと)、下痢を引き起こすノロウイルス感染症の特徴は、わずかな量のウイルスでも簡単に感染すること。新型ノロには免疫のない人が多いため大流行が懸念される」と首都大学東京人間健康科学研究科の矢野一好客員教授。ただ、「新型だから重症化しやすいわけではなく、症状や予防策は従来型と変わらないので冷静に対処を」と矢野客員教授は強調する。
また、「新型を含むノロウイルス、RSウイルス、インフルエンザなど、すべての感染症を予防するには、トイレの後、食事や調理の前に石けんを使って30秒以上、手を洗うことが重要。指の間、爪、手首は洗い残しが多いので要注意」と話すのは、ナビタスクリニック立川の久住英二理事長だ。
RSウイルス、インフルエンザは手指用のエタノール消毒薬による予防も有効。しかし、ノロウイルスは85℃以上の加熱か次亜塩素酸ナトリウム消毒薬でなければ死滅しにくい。もし家族がノロウイルスに感染したら、下記の2次感染予防策で感染を広げないようにしよう。
「ノロウイルス感染症になったとしても、嘔吐、下痢は1~2日で治まるので、特に医療機関を受診する必要はない。食事ができなければ経口補水液を利用し、脱水にならないように注意を」と久住理事長は話す。
乳幼児を中心に大流行しているRSウイルス感染症もノロウイルス感染症と同じように治療薬はなく、鼻水や咳を止める薬などによる対症療法が中心だ。
一方、インフルエンザは、例年、A型が1月後半、B型は2~3月に流行のピークを迎える。「人間の体には常に数十種類のウイルスがついており、免疫力が落ちると感染症になる」と久住理事長。生活のリズムを整え、しっかり睡眠をとり、免疫力を落とさないようにしたい。
この人たちに聞きました
首都大学東京人間健康科学研究科客員教授。北里大学衛生学部卒業。東京都健康安全研究センター微生物部長、北里環境科学センター微生物部長などを経て、2009年より現職。専門は、ウイルス、環境水の研究
ナビタスクリニック立川(東京都立川市)理事長。1999年新潟大学医学部卒業。虎の門病院血液内科勤務などを経て、2008年より現職。専門分野は、血液内科、旅行医学、予防注射。感染症の治療に詳しい
(ライター 福島安紀)
[日経ヘルス2016年2月号の記事を再構成]
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