「ゼロからのスタート」ではない、主婦の再就職
離職前にどれほどキャリアを積んできても、一度会社を辞めてしまうと、もう以前のキャリアを生かして働くことはできないのが今までの常識でした。しかし、それもちょっと前までの話。今は専門性の高いスキル、ハイキャリアを持つ"エグゼクティブ主婦"が、短時間や在宅でもその能力を生かして働ける人材サービスも登場しています。その一つが、前職の年収が500万円以上で、管理職、企画職、専門職に就いていた女性を対象にパートタイム紹介・派遣を行う弊社サービスの「時短エグゼ」です。
アベノミクス効果もあり、今多くの企業が基盤づくりや態勢づくりに力を入れ始めているようです。人事、法務、広報、総務、財務、経理、PR、マーケティングといった分野の専門スキルを持つ人材へのニーズが高まっています。特に人材確保の難しい中小企業、スタートアップベンチャーなどからは「働き方を柔軟にするので、ぜひ優秀な主婦の方に来て欲しい」という希望が寄せられています。そうした需要を専門的なスキルのある主婦の方とマッチさせるサービスが出てきているのです。
「以前は大企業の広報PRとして朝から晩までバリバリ仕事をしていた私。出産と同時に退職し、今はペースダウンして週3回、10時から16時までベンチャー企業で広報PRの仕事をしています」「企業の法務担当としてキャリアを重ねてきたけれど親の介護で辞めることになり、在宅で書類や申請書のチェックなど法務知識を生かした仕事をしています」など、家庭に軸を置きながら前職で身につけた専門的スキルを生かす働き方も可能になってきているのです。
前職でのキャリアを振り返ろう
"エグゼクティブ主婦"ではなかった人も、最近は以前のように「主婦=ゼロからのスタート」ではなく、前職で得た専門的な知識や能力、経験が、採用側が評価する要素のひとつとなってきています。そこで重要になるのが「前職でどのようなキャリアを重ねてきたか」ということです。
短期間であっても「専門的な知識や能力が求められる仕事に就いていた」「責任ある仕事を任され目標を達成した」「新しいプロジェクトの立ち上げにチャレンジした」など、主体的に仕事に関わり、密度の濃い経験を重ねてきた人はプラスに評価されます。逆に「与えられた仕事をなんとなくやってきただけ」という人は、たとえ長いキャリアがあったとしても、高い評価には結びつかないかもしれません。
20代の頃に仕事に打ち込んだ経験が、40代以降にキャリアを再開する際にも生かせるようになってきたのです。といっても、必ずしも華々しい成果がなければいけないわけではありません。「地道にコツコツと仕事に取り組んでいた」「職場の人たちが働きやすいように自分なりに工夫していた」など、どんな風に仕事に向き合って働いていたのか、当時を振り返り、自分自身を言葉にして表現することが求められるように思います。
長続きする再就職とは
再就職できてもなかなか続かないという人もいます。「勤務地が遠いけど、仕事内容や待遇がいいから少し無理してでも働こう」などと、無理をして働き始めてしまうとやはり長く働き続けることが難しい傾向にあるようです。長続きする人は、「必ず5時までには帰宅したい」などと、自分の中で譲れない条件をきちんと押さえた上で働いている人が多いようです。夫や子どもに理解と協力を求め、家事などの時間もうまく調整して毎朝きちんと出勤する、その覚悟ができるかどうかということも大切です。
主婦に特化した人材サービスを10年以上やってきて感じるのは、家事や子育てといった自分以外の人のことを大事に思って暮らす主婦を一度経験しているからこそ、わかることや見えてくるものがある、ということです。再就職を果たし、「若いころであれば理不尽に感じられた上司の言葉も優しく受けとめられるようになった」「お客様の立場でものを考えることができるようになった」「自分のことだけでなく全体を見て考えられるようになった」と話す人もいます。このような部分は主婦の長所、強みと見ることもできると思います。
再就職希望の主婦を取り巻く状況は徐々に整いつつあり、これからますます働きやすくなっていくはずです。再就職を考えているのであれば、まずは情報を集めるところから、動き始めてみてください。
株式会社ビースタイル しゅふJOB総研所長 兼 ヒトラボ編集長。大手人材サービス会社にて、責任者として営業企画・新卒派遣・人材紹介部門の立ち上げを行う。転職後は人材サービス会社にてマーケティング部執行役員部長、業界専門誌を発行する出版社にて営業推進部部長兼月刊人材ビジネス編集委員などを歴任。主婦層の雇用創出事業に携わる傍ら、コラムやフェイスブック等を通じて人材サービス業界への意見提言を行っている。
[nikkei WOMAN Online 2015年11月20日付記事を再構成]
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