PCから乗り換え可能 12型以上の超大型タブレット
2015年11月中旬、ウィンドウズ10を搭載した日本マイクロソフトの「Surface Pro 4(以下サーフェス)」と、アップルジャパンの「iPad Pro」が相次ぎ発売された。
いずれも12型台のタブレットだが、純正オプションのキーボードをつなげばノートパソコンのようにも使える。また、一般的なスタイラスより認識精度の高いデジタイザー方式のペンを用意。手書き入力も売りだ。2015年12月には東芝もウィンドウズ10搭載の「dynaPad N72(以下ダイナパッド)」を発売した。
タブレットとしても従来より高機能で、パソコン代わりの役目も果たす、いわば「全部入り」タブレット。しかし多機能なぶん、オプション込みの価格はどれも十数万円以上と高い。果たしてこれらの製品は、この金額に値するか。「ビジネスパーソンがパソコン代わりに使えるか」「タブレットとしても価値があるか」という視点で検証した。
入力の使い勝手はウィンドウズ機
まずは純正キーボードを併用した、PCスタイルでの実力を見た。ちなみにダイナパッドはキーボードが標準で付属するが、他はオプション扱いだ。
サーフェスとダイナパッドのキーボードの打ち心地は、ほぼノートパソコンそのままの快適さだ。対するiPadはキー配列も独特で、クリック感でも一歩他に譲る印象。ポインティングデバイスがないため、頻繁に画面に手を伸ばす必要性もある。
またキーボード装着時はパソコンモードに切り替わるウィンドウズ10に対し、iPadのiOSはあくまでタブレット専用OS。ワードやエクセルが使えるとはいえ、ファイルの保存や管理に一工夫必要だったり、複数アプリの同時利用に制限があったりと、パソコン同様に使えるとまでは言い難い。
ダイナパッドの弱点は、CPU(中央演算処理装置)性能だ。小型機向けの「Atom」を採用し、サーフェスが搭載するパソコン向けCPU「Core i5」と比べて処理能力の差は大きい。パソコン代わりに使う際にはやや見劣りする印象だった。
ペンの表現力ではiPad有利
次にタブレットとしてのモバイル性能を検証する。軽さについては、キーボードと合わせても999gのダイナパッドが際立つ。しかし逆に液晶パネルの性能では、サーフェスとiPadの解像度が極めて高いのに対し、ダイナパッドは一般的なノートパソコン並みだ。
起動の速さではiPad Proが頭一つ抜けており、ほぼ常に一瞬でスリープ状態から復帰する。ウィンドウズ10の2端末は、しばらく時間が空いてから使い始める際など、起動に時間がかかるケースが見られた。
最後に、売りとするデジタイザーペンの使い勝手だ。3製品とも、細かい字を素早く書いてもほぼ100%認識され、紙のノート代わりに十分使える。筆圧の強さも検知するなど表現力も高い。
特に、iPad Pro専用の純正オプション「アップルペンシル」は、ペンの傾きまでを認識して線の太さを変える。書いてから線が描画されるまでの遅延もほとんどない。書き心地で他を一歩リードする印象だった。メモ書き程度ではどれも十分だが、絵を描く人にとってはiPad Proの優先順位が高くなるかもしれない。
サーフェスとダイナパッドでは、ペン本体のボタンなどで消しゴム機能を呼び出せる。一方、iPad Proはボタンが一切なく、画面上で消しゴムツールをタップする必要があった。
ビジネス利用なら「サーフェス」に軍配
総合すると、「パソコン代わりにビジネスで使う」ことを重視すると、ほぼパソコンとして使えるサーフェスがやはり優位。液晶やペン入力の品質も高く、決定的に穴となる部分もなかった。なおサーフェスには、CPU性能が異なる3種類のモデルがある。
今回試したものよりややCPUの性能を落とした「Core M」搭載モデルの他、2015年12月にはハイエンドPC向けの「Core i7」搭載モデルも発売された。
iPad Proはビジネス用途では不十分だったが、起動の速さやペン入力の完成度の高さは注目に値する。ダイナパッドもCPU性能や液晶解像度を割り切れば、軽さを優先する人の選択肢にはなる。
(日経トレンディ 臼田正彦)
[日経トレンディ2016年1月号の記事を基に再構成]
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