ダニアレルギーに根治治療 舌下錠が発売に

SFTSを引き起こすウイルスを媒介するとみられるマダニの仲間=国立感染症研究所提供
SFTSを引き起こすウイルスを媒介するとみられるマダニの仲間=国立感染症研究所提供
アレルギー性鼻炎の患者数は4000万人といわれるが、そのうち一年を通して鼻水や鼻づまりに悩まされる「通年性」は約半数。これまでは抗ヒスタミン剤など症状を改善する医薬品による治療が中心だったが、新たな治療法が登場した。舌下錠を用いたアレルゲン免疫療法(減感作療法)だ。

通年性アレルギー性鼻炎の主な原因(アレルゲン)はハウスダストに含まれるヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニの死骸やフン。日本医科大学病院の大久保公裕教授は「人の住環境に適応したダニで、身のまわりから完全に排除することは難しい。症状が重く生活や仕事に支障をきたしている場合の根治治療として期待されるのがアレルゲン免疫療法だ」と話す。

国立病院機構相模原病院臨床研究センターがアトピー型ぜんそく患者185人について、各種アレルゲンの皮内テスト陽性率を調べたところ、ハウスダストに含まれるヤケヒョウヒダニが約半数を占めトップであることが分かった。(出所:Fukutomi Y,et al.Int Arch Allergy Immunol.;157,2012)
■ダニはこんなところが大好き
・寝具(特にベッド、敷き布団に多い)
・布製のソファ
・毛足の長いカーペットを敷いたリビングルーム
・畳敷きの和室にカーペットを重ねた部屋
・床の上にたくさん物が置いてある部屋
・ペットを飼っている家庭

免疫システムには、反応を強めたり弱めたりするアクセルとブレーキの機能がある。アレルゲン免疫療法とは、アレルゲンを少しずつ投与することで、免疫システムにブレーキのかかった「免疫寛容」の状態を作り出すものといえる。

アレルギー性鼻炎に対しては、これまで注射による皮下免疫療法があったが、注射のために2週間に1度の通院が必要だった。そこで登場したのが、アレルゲンを含んだ錠剤を舌の下に一定時間含ませることで「免疫寛容」を作り出す舌下免疫療法といわれる方法。2015年、「ミティキュア ダニ舌下錠」(鳥居薬品)と「アシテア ダニ舌下錠」(シオノギ製薬)が承認され、現在発売されている。

どちらも錠剤には、含量の多いものと少ないものがあり、治療は少ないものから始める。錠剤を舌下に1分間(あるいは溶けるまで)保持し、溶けたらのみ込む。その後、5分間はうがいや飲食を控えることが大切だ。そして、医師の診察を受けながら、成分含量の多い錠剤に切り替え、治療を続ける。

アレルゲン免疫療法とは、アレルギーの原因である物質アレルゲンを少量から投与することで、体をアレルゲンに慣らし、アレルギー症状を和らげる治療法
アレルギー性鼻炎患者の鼻の状態を評価(症状スコア:鼻汁、鼻づまりの程度や抗アレルギー薬の併用の有無など)したところ、治療開始から14日間の平均値と比較して44~52週の平均値は半減した(ミティキュア製品添付文書より引用)
■治療を受ける際の注意
・12歳未満の子どもは治療の対象とならない
・花粉症などの鼻炎症状が強くない時期を選んで治療を開始する
・期待する効果が得られるまで数年かかる場合もあるので、治療を続けられるかどうか、医師とよく相談する
・環境中のハウスダストの量など環境要因によっては、治療中に強いアレルギー反応(アナフィラキシーショックなど)が起こる可能性があるので、医師からよく説明を受ける

効果を得るためには、じっくりと治療に取り組むことも必要だ。「ミティキュア」の臨床試験で、鼻症状を専門家が評価した値は、約1年間の治療で半減したが、十分な治療効果が得られるまで3~5年かかることが多い。

ダニはアレルギー性鼻炎だけでなくアトピー性皮膚炎、アトピー型ぜんそくなどの発症にも深く関わっている。今後、ダニに対するアレルゲン免疫療法の研究がさらに進むことが期待されている。

■この人に聞きました

大久保公裕さん
日本医科大学病院耳鼻咽喉科教授。「舌下錠によるアレルゲン免疫療法は、治療とはいえ、アレルギーを誘発する物質を服用する。医師の説明を納得いくまで聞いていただき、決められたとおりの服用を続けることが大切」

(ライター 荒川直樹)

[日経ヘルス2016年1月号の記事を再構成]