変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック

女性活躍推進法がこのほど成立し、職場での女性の機会拡大の機運は今後さらに高まる。女性が生き生きと働ける社会を実現するには何が大切なのかを2回に分けて考える。まずは女性活躍推進に取り組む国際団体カタリスト最高経営責任者(CEO)デボラ・ギリスさんに日本の課題と女性へのアドバイスを聞いた。

デボラ・ギリス カナダ生まれ。グローバル企業2社で管理職を務めた後、2006年にカタリストに転職、13年現職。政府主催「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム」出席のためにこのほど来日。50歳。

 デボラ・ギリス カナダ生まれ。グローバル企業2社で管理職を務めた後、2006年にカタリストに転職、13年現職。政府主催「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム」出席のためにこのほど来日。50歳。

――現在カタリストは欧米やアジアで約800社の会員企業の女性活躍推進を支援している。ただもともとは主婦を対象に再就職支援を手掛けていたとか。

「1962年に米国で設立した。そのころは米国でも女性は結婚・出産すれば家庭に入って主婦になるのが標準的だった。能力や働く意欲があるのに働く機会がないのはもったいない。履歴書の書き方など再就職に役立つノウハウを主婦に教えたのが始まり。その後、社会を大きく変えるには企業に働きかけるべきだと考え、80年代以降に活動の軸足を企業支援に移した」

「今の日本の状況はカタリストができた60年代の米国に似ている。大学を卒業してせっかく就職しても結婚・育児を理由に女性は仕事を辞めてしまう。働きたくても働けないのは女性にとっても不幸だし、優秀な人材を生かしきれていないのは日本経済にとっても損失。米国も変わったのだから日本も変われる」

――諸外国と比べて日本の固有の問題は何か。

「一番は長時間労働。長く働いてこそ評価される職場環境では、出産・子育てを担わざるを得ない女性に不利だ。夫が勤務先に長時間拘束されるために家庭責任の分担も期待できない。ワークライフバランス(仕事と生活の調和)が取れないので日本女性はリーダーに就こうとしないし就けない。長く働いても生産性が上がりはしない。少子高齢化を迎え、これから日本は男女にかかわらず介護や子育てなどを担う必要もある。長時間労働の是正は避けて通れない」

「転勤の多さもワークライフバランスの実現を阻み、女性が活躍しにくい状況をつくっている。他国でも多国籍企業などは同じ問題を抱えている。ただ日本と違うのは、転勤をしなくてもキャリア形成ができないかと企業が模索していることだ。転勤で身につくスキルは何なのかをよく考え、転勤の代わりに出張などで補うように工夫を始めている」

――米国で女性活躍が進んだ背景は何か。

「1つは産業構造の変化。製造業が活力を失う一方でサービス産業が隆盛した。その結果、女性が活躍できる職域が広がった。それに片働きよりも共働きの方が世帯収入が多い。生活の質を高めるためにも共働きが当たり前になった。企業側の意識も変わった。人口の半分は女性なのだから女性を生かさなくてはいけないと考えるようになった」

「ただ男女が均等に活躍できる環境は米国でもまだ実現していない。働く女性が増えたとはいえ、昇進・昇格につながるような大きなチャンスは今も男性に与えられがち。有力企業の女性CEOはごく僅か。もっと変わっていかなくてはいけない」

――日本も、米国をはじめとするほかの先進諸国のように女性の力を引き出せる社会に変われるのか。

「安倍晋三首相は女性活躍推進を経済成長戦略に据えた。これはほかの先進諸国にもないこと。日本政府の本気度は海外にいても感じる。日本の労働力人口はこのままだと今後50年で40%以上も減る。男性と比べて就業率が低く、力を存分に発揮できていない女性に頼らざるを得ない。その危機感を政府も社会も共有しているのだろう」

「カタリストは昨年日本に事務所を立ち上げた。過去50年の経験と蓄積を生かし、何か手伝いができると思ったからだ。この1年で会員企業は約40社に増えた。企業トップも女性活躍推進の重要性に目を向けている証しだと思う」

「8月下旬に女性活躍推進法が成立した。これも変化を後押しするだろう。最初は嫌々かもしれないが、実際に女性活躍に取り組んでみれば企業も女性の優秀さに気付くはず。そうなれば女性を登用しようという風潮は瞬く間に広がるだろう」

――日本女性にアドバイスはあるか?

「キャリアと家庭は二者択一ではなく、両方できるのだと意識してほしい。もちろん両立するには勤務先や夫のサポートも重要だ。ただ日本女性は何でも自分一人で完璧にやろうとしすぎていると思う。外部の家事援助サービスを使うなど任せられるところは誰かに任せて構わないと思う」

「自分の能力にももっと自信を持ってほしい。仕事のチャンスが巡ってきたとき、男性は黙っていても挑戦しようとするが、女性は『やってみないか?』と誘われてもためらう傾向がある。自分の力を過小評価しすぎだ。失敗を恐れずチャレンジすべきだ。特に今、日本は女性活躍推進に追い風が吹いている。この機を逃さず一歩前に出てチャンスをつかんでほしい」

 カタリスト 1962年米国で創立した非営利団体。その後活動を欧州やアジアにも広げる。女性活躍推進を進めるために調査研究活動や会員企業約800社への支援を行っている。

新着記事

Follow Us
日経転職版日経ビジネススクールOFFICE PASSexcedo日経TEST

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック