個性派続々…家庭用ロボ、「AIBOの壁」超えるか
家庭用ロボット最前線(上)
ソフトバンクは2015年6月から「Pepper(ペッパー)」の一般販売を開始。同じ6月には、タカラトミーがNTTドコモと組んで、ユーザーとの会話に特化したロボット玩具「OHaNAS(オハナス)」を発表した。DMM.comもロボット販売サイト「DMM.make ROBOTS」を立ち上げ、富士ソフト製の「Palmi(パルミー)」や、デアゴスティーニ・ジャパン「ロビ」の組み立て済みバージョンなどの販売をスタート。6月にはテレビCMの放映も始めている。
すでにペッパーは、ネスレのコーヒーマシンの販売員として、家電量販店の売り場でも活躍中。家庭用ロボットは、選択肢が増え、販売チャネルも増え、そして利用シーンも広がるなど、今まさに本格的な普及の入り口に立とうとしているのだ。
かつてソニーの「AIBO(アイボ)」が越えられなかった壁を、これらのロボットは越えられるのか。我々の生活はロボットの普及でどう変わるのか…。
「家族の一員」として完成度が向上
完売、完売、また完売――。最初は開発者向けに、続いて一般向けの販売が始まったソフトバンクのペッパーは、在庫が"瞬間蒸発"する状態が続いている。生産能力が限られているため、ソフトバンクは毎月下旬に1000台をまとめて発売する態勢を取っているが、6月分はわずか1分で完売。しばらくは同様の状況が続くとみられる。
「いわゆるギーク(マニア)ではない、ごく一般的な消費者に幅広く買われている」(ソフトバンク ロボティクス事業推進本部長の吉田健一氏)というが、決して安くはないため、購入者の年齢層は一般的な家電製品に比べてやや高めのもよう。子供受けが良く、子供を意識したアプリも多いため、「40代以上、年収が高めの子持ち家庭」が典型的なユーザーの一つといえそうだ。
2014年の発表以降、ソフトバンクは「寄り添う相手として、大事にしたいと思えるような要素の作り込みに特に力を入れてきた」(吉田氏)。その一つが、ユーザーの感情を理解するだけでなく、ペッパー自らも疑似的な感情を持てる仕組みだ。
ペッパーは、ユーザーの表情や声から感情を大まかに認識可能。人間の顔を見分けられることから、話している相手が家族か、そうでないかも区別できる。加えて、頭と手のタッチセンサーを使って、なでられたり、手を握られたことを検知。こうした要素を総合的に判断し、今の"気分"を決める機能が、今回の一般販売モデルで初めて搭載されている。
支払総額は118万円超
内蔵アプリ「感情マップ」を起動してペッパーに近寄ると、「誰かがいる」「人が笑っている」「大人っぽく見える」といった文字列が次々と現れる。感情を示す円形のグラフもどんどん塗り替わっていくが、手をつないだり、頭をなでたりしても、「大好き」「超うれしい」といったゾーンにはなかなか入らない。日々の接触や会話を通じて、ペッパーを"手なずける"だけでも、しばらくは楽しめそうだ。
この他、天気予報からゲームまで多くのアプリを内蔵。オンラインストアからの追加も可能で、今のところ200種類近くのアプリが用意されている。
発表当初から見た目は変わっていないが、CPU(中央演算処理装置)の性能向上とアプリの増加、そして感情の部分の強化で、ずっと実用的になった。家族の一員として迎え入れるのに、違和感は少なくなってきた印象だ。
とはいえ、問題は価格だ。本体だけなら税別で20万円以下だが、クラウドの利用料などを含めた「基本プラン」と「保険パック」などを含めると、支払総額はなんと税込み118万円超。気軽に買える額では全くないのが残念だ。
(日経トレンディ 有我武紘)
[日経トレンディ2015年9月号の記事を再構成]
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