火曜の番組が生むスーパーの「ビッグウェンズデー」
日経エンタテインメント!
「マツコ紹介のポテトチップスが大反響でメーカーのサーバーがダウン」「酷評して話題になったキャビア味のポテチが再販決定!」…そんなニュースが飛び交ったのは2015年3月。発端になったのは『マツコの知らない世界』(TBS系)だ。
「チーズ」「ドレッシング」といった食品から「天気図」まで、マツコ・デラックスが特定ジャンルのマニアや専門家からその神髄を教わる同トークバラエティーは2014年10月、火曜21時台に進出。深夜時代から、番組で紹介されたモノがスーパーやコンビニでよく売れると話題にはなっていたが、ゴールデン帯になってその頻度や規模が拡大している。
事実、スーパー店頭では付随した現象が起きている。『知らない世界』に、『林修の今でしょ!講座』『たけしの健康エンターテインメント! みんなの家庭の医学』(ともにテレ朝系)の影響が重なって、水曜日ににぎわいを見せるスーパーが増えているというのだ。『今でしょ!』『家庭の医学』はいずれも「体にいい食べ物」を取り上げることが多く、すべて火曜夜の放送。19時(『今でしょ!講座』)、20時(『家庭の医学』)、21時(『知らない世界』)と開始時間がリレーしているため、3番組を見て来店する客も多いのだろう。紹介アイテムが大半の客のカゴに入っている光景は、スーパーの「ビッグウェンズデー」だ。
売り上げが一番低い曜日のはずが
「ここ半年くらいどうして水曜の売り上げが落ちないのか不思議だった」と話すのは、首都圏を中心に店舗を展開するOlympicの中戸将満・高井戸店店長。
「水曜木曜は業界的に売り上げが週で一番落ち込む曜日。だから水曜にチラシを入れる店が多いのですが、周囲の競合店とぶつかるため、うちは曜日や時期をズラして入れています。ところが水・木がかなり厳しいはずなのに、むしろ他の曜日より売れていたりする。火曜のテレビ番組の影響だと思う」(中戸氏)
冒頭のケースのとき同店では、ポテトチップスが前週比130%の伸びを見せた。6Pチーズがやたら売れた日もあったと言う。「マツコさんの番組でおいしい食べ方があると紹介された翌日でしたね」(中戸氏)。番組で紹介されたメーカーの商品が置いてなくても、手ぶらで帰る客はほとんどいない。エゴマ油がないならアマニ油、それがないなら、体にいい別の油…と"代用品購入"も多く、店側にとっては願ってもない恩恵のようだ。
テレビで紹介されるモノは今や星の数ほどあるが、3番組の影響力が強いのは、「なぜそのアイテムがいいか」といううんちくや検証があるから。それをマツコやたけし、林先生といった"本音で話し、何でも知っていそうな人"が受け手の立場で紹介していることが、より説得力を高めている。中戸氏はさらに、「ネット時代になっても、実際に店頭でモノが動くときはテレビの影響力のほうが断然ある」とも。ネットを活用しているのは、実は一部の世代や環境の人であるとは、よく言われることだ。「テレビはやはり万人が見ているし、映像のほうがダイレクトに伝わりやすいのでは」(中戸氏)。
ちなみに最近反響の高いキーワードは「予防」と「改善」だとある制作マン。「ダイエットにいい食べ物」は今も鉄板だが、近年は認知症やうつ予防の食品に対する反響が特に大きいという。高齢化社会、"老い"に関連するニーズはこんなところにも表れているようだ。
(ライター 木村尚恵)
[日経エンタテインメント! 2015年6月号の記事を基に再構成]
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