ペットも自撮り? 珠玉の表情、アプリで

長い棒の先にスマートフォン(スマホ)や小型カメラを取り付けたり、携帯端末の内蔵カメラを使ったりして自分自身を撮影する「自撮り」。世界中に広がった自撮りが猫や犬をも巻き込み始めている。ペット自身に携帯端末を操作させるなど自然な表情を撮影するための専用アプリも人気だ。動物界にまで広がった自撮りブームを追った。

ダウンロード数1万超す

画面上で動く的を追ってネコがタッチするとシャッターが切れる(東京都台東区の猫カフェ「ケイズ」)

福島市で5匹の猫と暮らす漫画家のひぐちにちほさんは猫たちが見せるかわいらしいしぐさを記録に残そうと試行錯誤を重ねていた。

自由気ままに動き回る猫たちは携帯端末やカメラを向けるとそっぽを向いてしまうことが多い。そこでタンスの下に携帯端末を置いたところ、上でくつろいでいた猫が端末をのぞき込み、「自撮り風」写真の撮影にたまたま成功。ブログに掲載したところ多くの反響が寄せられた。

コメントを通じて猫自身が端末を操作し撮影できるアプリの存在を知ったひぐちさんは「もっと自然な表情を写真に残したい」と「にゃんこ撮り」をダウンロードした。

にゃんこ撮りは2013年7月に公開され、ダウンロード数が1万を超える人気アプリだ。

起動すると黒い画面上をネズミが動き回る映像が流れ、猫がネズミを捕らえようと画面を触るとシャッターが自動的におりる仕組み。ペットに携帯端末を渡しておけば自動的に写真が保存される。遊び感覚で撮影できるため猫にかかる“負担”も少ない。

自撮りアプリを使ってネコと遊ぶ(東京都台東区の猫カフェ「ケイズ」)

「驚いた顔」「怒ったような顔」「気の抜けた顔」「ドアップ」――。「カメラを構えた撮影ではなかなか見せない猫のユニークな表情が撮影できる」とにゃんこ撮りを使ってフェイスブックやツイッターなど交流サイトに投稿する飼い主も多い。

自宅で猫を飼っていない人が猫カフェで遊びながら撮影するケースも。3月末に猫カフェ「ケイズ」(東京・台東)を訪れた東京・江東の会社経営者、近藤正人さん(59)は「反応する猫とそうでない猫がいる。タブレットに座り込む猫もいてそれぞれ個性を知ることができるのも魅力」と目を細める。猫たちの自撮り画像を載せた近藤さんの交流サイトには海外からのコメントも多いという。

キャンペーンに活用

「にゃんこ撮り」を使うと自然な表情が撮れる

自撮りをイベントやキャンペーンに活用する例も増えている。サンシャイン水族館(東京・豊島)は14年11月21日から12月25日にかけて魚と自撮りできる「フィッシュアイ セルフィー」コーナーを館内に設けた。

水槽を挟む形で魚眼レンズ付きカメラとタブレットを設置し、水槽の中にいる雰囲気で泳ぐ魚と撮影できるように。水族館での撮影は照明の関係もあり難しいが、魚と一緒に写真を撮りたいという声も多く寄せられており要望に応えた。担当者は「撮影できる魚の種類を変えるなどして再実施も検討したい」と話す。

スルガ銀行は金融新商品のキャンペーンの一貫で、自撮りできる犬小屋「スマートドッグハウス」を制作した。犬が小屋に入るとセンサーが反応し、自撮りができるという労作。応募者の中から抽選で1人を選び、このほどプレゼントしたという。

音を使ってカメラ目線

スルガ銀行の「スマートドッグハウス」

自撮りではないものの、愛犬家向け写真アプリも増えている。14年12月に公開された「ドッグミー カメラ」は犬に聞こえやすい周波数帯の音を出すことでカメラ目線になるように振り向かせる仕組み。撮影した写真をそのままアプリ利用者と共有できる交流サイト機能も持つ。

スムースチワワ2匹を飼う東京都足立区の主婦、高野可織さん(36)は「寝ているとき以外はうまく撮影できなかったけど音に反応して振り向いてくれるのでシャッターチャンスを逃しにくい」と手応えを感じた様子。「撮影した写真を見ず知らずの人からもたくさん褒めてもらえるのも魅力」と話す。

ペットがめったに見せない自然な表情を写真に残すことは難しい。アプリを利用しても同様で数百枚撮影しても表情がわかる写真はほんの数枚。「珠玉」の写真だからこそ希少性があり話題を集める。自分で撮影はしなくても、珠玉の1枚を探しだせば、笑ったり、癒やされたりすること請け合いだ。(鷹巣有希)

[日経MJ2015年4月8日掲載]

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