砂浜にペンギン…光を操り絵画のような情景を演出
世界一の動物写真
光の使い方にも、お国柄が表れます。南欧や米国南部、アフリカ南部出身の写真家は、まぶしくて強烈な光を当てて撮影することを好む一方、北欧出身の写真家たちは、四季の移ろいを感じさせる淡い光で撮影することが多いといいます。場に漂う雰囲気を決めるのは光の当て方です。光が風景全体をどう照らし出すか、逆光がどのような効果を生むか、光をどう当てれば細部をはっきり撮れるのか――。
この写真は、まさに光の使い方によって、強烈な印象を与えてくれます。まるで砂の舞う、温かい夏の夕方の浜辺のような光景を写した1枚ですが、この写真の舞台は南極大陸。ウェッデル海を覆う氷の上で、冬の終わりに撮影されたものです。氷上の過酷な暮らしを表現したこの写真は、新鮮でシュールな味わいをもたらしてくれます。
"野生"をシンボリックに表現
「はい、チーズ!」と言えば、カメラの方を向いて、ポーズを取ってくれますね。人間ならば。野生動物の場合、そんなことはあり得ません。動物のポートレート写真が難しい理由の一つは、そもそも遭遇するのが難しい上に、わずかなチャンスの間に身構えない自然なポーズを動物がなかなか取ってくれないことです。優れたポートレート写真を撮るには、写真家が動物をよく理解し、気持ちを通わせることが欠かせないといいます。
ジム・ブランデンバーグは、森の中に丸太小屋に暮らしながら、時には北極圏にまで滞在して、オオカミを追い続けている写真家です。ここに写るのは、米国ミネソタ州レイヴン・ウッドの森で知り合ったオオカミの一匹。用心深く、木の影に体を隠しながらもブランデンバーグをじっと見つめています。このポートレート写真は、オオカミの習性をよく表しています。この作品の発表以降、多くの写真家が物陰に隠れた動物を撮影し、動物の野生をシンボリックに表現するようになりました。
(日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック『世界一の動物写真』を基に再構成]
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