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3つ星スイーツ

3つ星で有終の美 5年以内開業店のショートケーキ

2015/3/26

2010年に始まった「今週の3つ星スイーツ」は、今回でいったん終了します。最終回のテーマは「イチゴのショートケーキ」。開始した10年、13年の4月に取り上げた人気の定番スイーツだ。その後も新しい店のオリジナリティーあふれるショートケーキが続々と登場している。そこで今回は過去5年以内にオープンした10店舗の商品を、専門家でつくる「日経スイーツ選定委員会」が食べ比べた。前回に続いて3つ星が出たほか、2つ星が2店、1つ星が1店とにぎやかにフィナーレを飾ることになった。

★★★(3つ星)=文句なしのおいしさ。スイーツファンならぜひ食べるべきだ
★★☆(2つ星)=抜きんでている。電車賃を使ってでも買いに行きたい
★☆☆(1つ星)=水準を大きく上回る。遠回りしてでも買いに行きたい

★★★ スイーツガーデンユウジアジキ「フレーズ」

3つ星を獲得したスイーツガーデンユウジアジキの「フレーズ」 

〈特徴〉オーナーパティシエの安食雄二氏が2010年5月に開店した大人気店の一品「フレーズ」が文句なしの3つ星に輝いた。スポンジ生地のきめが細かく、非常にやわらかく溶けるような食感が印象的だ。薄いカスタードクリームの層が風味の豊かさをぐっと高めている。「生クリームの泡立て方やスポンジ生地の焼き上げ方などを、季節に合わせて微妙にコントロールしている。良いものができるかはレシピ半分、技術半分」という安食さん。基本となるものをしっかり作っていくという姿勢が貫かれた逸品だ。

クリーム層に入っているイチゴはボリュームのある半割りサイズ。食べた時に果汁や香りを存分に楽しめる。上に乗っている半分に切ったイチゴはハート形に見えるように断面をカットしており、目にも楽しい。「イチゴは時期に合わせ、最良のものを信頼しているフルーツ店から取り寄せる。卵は若鶏が産む小粒で鮮度のいいものを毎朝、店に届けてもらう」と素材へのこだわりが強い。

〈感想〉「スポンジがふわふわで実にきめ細やか。シロップをしみこませなくてもしっとりと焼き上がる繊細な口どけに試行錯誤した跡が見られる逸品」(平岩理緒さん)、「一見気付かないが、薄く塗ったカスタードクリームが全体の味わいを豊かに広げている」(下園昌江さん)、「風味豊かなカスタードクリームとクリームシャンティーの絶妙なバランスがイチゴの香りを引き立てている」(下井美奈子さん)。

〈価格〉1個520円(税込み)

〈店舗〉横浜市都筑区北山田2-1-11ベニシア1階(電話045-592-9093)午前10時~午後7時。水曜定休

★★☆パティスリー・リョーコ「ジャポネ」

2つ星を獲得したパティスリー・リョーコの「ジャポネ」

〈特徴〉日本で生まれたことを表現するためにフランス語で「日本の」を意味する「ジャポネ」という名前がついたショートケーキ。しっとりして、しかも弾力のあるスポンジ生地は濃厚な卵黄によるもの。実際、卵黄を通常の1.5倍と多めに使っている。カスタードクリームのほか、フランボワーズジャムの酸味も楽しめて深みのある味わいがぜいたくな一品だ。

味だけでなく見た目も独自性にあふれる。形は一般的な三角ショートではなく直方体のような四角形。ボリュームもあってうれしい。パティシエールの竹内良子さんはフランスに渡って、南仏アルビにあるフランス菓子界最高峰ともいわれるパティスリー「ミッシェルブラン」や国家最優秀賞職人賞ショコラティエが経営するパリの「アルノ・ラエール」で1年間ずつ修業し、05年1月に独立した。12年2月に大阪府東大阪市から現在の港区の地下鉄高輪台駅近くに店を移した。住宅街にありながら行列の絶えない店として有名だ。

〈感想〉「個性的な大人っぽい味。いつもとは違うショートケーキを食べたい方にもおすすめ」(下園さん)、「フランスで修業した方らしい、フランス菓子を思わせるメリハリのあるつくりになっている。そこにミルキーな生クリームが合わさりバランスよく楽しめる」(平岩さん)、「軽さだけでなく濃厚な風味を持ち合わせたショートケーキ」(下井さん)。

〈価格〉1個480円(税込み)

〈店舗〉東京都港区高輪3―2―8(電話03―5422―6942)午前10時30分~午後7時、なくなり次第閉店。水、木曜定休

★★☆エクラデジュール「ショートケーキ」

2つ星を獲得したエクラデジュールの「ショートケーキ」

〈特徴〉しっとりふわふわのスポンジに口どけのよいミルキーな生クリーム、甘酸っぱいイチゴのバランスが絶妙。パティシエの中山洋平さんが最もこだわっている点だけに、バランスの良さを絶賛する選者が多かった。使っているイチゴは、表皮がやわらかく水分が多めで甘みもしっかりしている「とちおとめ」。「生クリームはコクとキレを出す乳脂肪分42%のものとミルキー感を出すための同40%の2種類をブレンドしている」(中山さん)

店は地下鉄・東陽町駅から徒歩数分の場所にある。14年9月に開店したばかりだが、すでに客足が途絶えない人気店となっている。一般的な三角ショートのほかに、グラスに入ったショートケーキ「ベリンヌ」も。

〈感想〉「シンプルながら、ひとつひとつが丁寧に作られているのが分かる逸品」(下井さん)、「素直においしいと感じる味。何度でも食べたくなるような飽きの来ないおいしさがある」(下園さん)、「星型口金で生クリームを絞った仕上げに懐かしさが漂う。一見素朴に見えながら、きちんと計算された洗練された味わい。価格帯も下町らしいお手ごろさがうれしい」(平岩さん)。

〈価格〉ショートケーキ421円、ショートケーキベリンヌ561円(いずれも税込み)

〈店舗〉江東区東陽4―8―21(電話03―6666―6151)午前10時~午後8時、水曜定休

★☆☆パティスリー・メゾンドゥース「苺(いちご)のグランショート」

1つ星を獲得したパティスリー・メゾンドゥースの「苺(いちご)のグランショート」

〈特徴〉軽いスポンジ生地と口溶けのよい生クリーム、イチゴの香りなどが三位一体となって口の中に広がる。ふんわりしていながらしっとりしたスポンジは絶品。オーナーシェフの伊藤文明さんは「一口食べておいしいと思ってもらえるように心がけている」と話す。デコレーションとして、銀色の小さな粒(アラザン)を3つちりばめている。楽しげで懐かしさを感じさせるこんな見た目もうれしい。

「以前は高速で卵を泡立てていたが、今は中高速で泡立て、ゆっくりと細かい泡を作っていくイメージの製法に切り替えた。そうすることでスポンジ生地が以前よりもふんわり軽く焼き上がるようになった」(伊藤さん)という。店は13年8月に京王相模原線南大沢駅から徒歩約15分の大通り沿いにオープンした。都心部からはやや遠いが、工夫を重ねながら地元密着型の愛される店として存在感を増している。

〈感想〉「卵の風味がよいスポンジ生地はどこか懐かしさを感じさせるおいしさ。薄くスライスしたイチゴは生クリームとほどよくなじみ、食べた時の一体感がある」(下園さん)、「スポンジがごく軽く、イチゴがかなり薄切りなので、生クリームでマリネされたように、まろやかな一体感が味わる。2層にサンドされていることで、イチゴらしい味わいも遜色なく感じられる」(平岩さん)。

〈価格〉1個475円(税込み)

〈店舗〉八王子市南大沢2―206―9(電話042―689―6221)、午前10時~午後7時、火曜定休

●ちなみに――定番でも時代に合わせて少しずつ変化

老若男女に愛され、懐かしさとともに不動の人気を誇るショートケーキ。定番中の定番だが、平岩理緒さんは「最近はショートケーキをモチーフとし、アレンジを加えたスイーツも増えている」という。例えば、今回2つ星に選ばれたエクラデジュールの「ショートケーキベリンヌ」。パティシエの中山洋平さんが作るガラス製のカップに入ったショートケーキは、スポンジや生クリームからなる側面が美しく、まるでパフェかキャンドルのよう。こうした変化球はアイスケーキなどにもみられる。

今回久しぶりにショートケーキを食べて驚いたのは、その控えめな甘さだ。子どものころの「甘い」記憶とは異なり、口当たりが軽くすっと胃に入る。健康志向や女性を中心にダイエット志向なども背景に、実際加える砂糖の量は、昔は生クリームの量に対して10%ほどだったが、今は7~8%が主流になってきたという。

日本人の嗜好や健康志向などに合わせて少しずつ変わってきたショートケーキ。シンボルのイチゴに、その大きさに思わず目を見はる新種の「スカイベリー」を使ったものも登場しているそうだ。今後も親しみやすさを残しながら、どんなショートケーキが登場してくるのか。春の楽しみがひとつ増えた。

5年間の連載で取り上げたスイーツは100ほどになった。その間にもスイーツの世界はどんどん多様になり、ますます洗練されている。ただ、いつの時代も人を笑顔にしてくれる点だけは変わらない。記者は行列に並ぶのは苦手だが、こんなに喜んでくれる人がいるのだと思うといつの間にか、並んだり予約したりすることが平気になっていた。

(高田哲生)

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●専門委員の横顔(五十音順)

下井美奈子さん

1973年生まれ。実家の母が菓子教室講師ということから、子どもの頃からスイーツの食べ歩きや菓子作りを行う。一般企業を退職した後、パリの料理学校「リッツ・エスコフィエ」で料理・製菓の資格取得。またパリの製菓料理学校「ル・コルドン・ブルー」「ルノートル」で学び、2年間のロサンゼルス在住中にも各国の製菓・料理を習得。情報サイト「オールアバウト」では立ち上げの2001年から、スイーツガイドを担当。多数のメディアで洋菓子情報を紹介するほか、商品開発、レシピ提供を行うスイーツコーディネーターも務める。共著に「TOKYO美食パラダイス」など。

下園昌江さん

1974年生まれ。大学卒業後、専門学校やパティスリーで製菓の技術や理論を学んでおり、製法にも詳しい。菓子の食べ歩き歴は15年。近年は特にフランス菓子に力を入れ、フランスを巡るツアーや焼き菓子を中心とした菓子教室も開催。監修本に「とびきりスイーツ見つけた!」。ウェブサイト「Sweet Cafe(スイートカフェ)」主宰。

平岩理緒さん

1975年生まれ。小学生のとき、訪れたデパートでスイーツの魅力に目覚める。大学卒業後、食品会社のマーケティングに携わる。2002年、テレビ東京の番組「TVチャンピオン」デパ地下選手権での優勝を機に、食の情報発信を本格化。退社後はフリーのフードコーディネーターとして活躍中。月に食べる菓子は100種類以上。和菓子店での勤務経験もあり、和、洋菓子全般に詳しい。著書に「アフター6のスイーツマニア」(マーブルトロン)。コミュニティーサイト「幸せのケーキ共和国」主宰。

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