英語初学者でも、交渉を有利に進めるコツ
同時通訳者の英会話レッスン
交渉はポイントを押さえて
私自身、これまで雇用主やクライアントとの交渉で年収や通訳料金の大幅アップを実現したときは交渉術を駆使してきました。エッセンスをぎゅっと詰め込んでお伝えします。
まず、交渉を有利に進めるための4つのステップを見ていきましょう。
1. Build up your factual position + know his or her expectations /2 = the fair middle ground.
(自説の根拠を積み上げる+相手の期待を知る÷2=公平な中間点)
2. Explain your situation.
(自分の事情を語る)
3. Emotionally appeal to him or her.
(相手の心理に訴える)
4. Identify the pros and cons to find a win-win solution.
(メリットとデメリットを確認し、Win winの解決策を見つける)
具体的に、それぞれのステップでどのようなフレーズが使えるかをご説明していきます。例えば、取引先に「納期を前倒しにしてほしい」と交渉する場面を想定してみましょう。
まずは、自説の根拠の積み上げです。納期を前倒しにすることで「どのようなメリットが得られるのか」を整理します。「とにかく急いでほしい」とだけ言うのではなく、売り上げの改善やコストの削減など納期前倒しによる効果を具体的な数値を挙げて説明できれば、相手が交渉に応じてくれる可能性は高まります。
解決策を考えやすい会話に持っていく
次に、相手の期待を理解するための問いかけです。一般的な状況であれば、下記のようなフレーズが使えます。
What do you really want out of this deal?
(この取引から本当に望んでいることはなんですか?)
What would be your ideal solution? Would you tell me why as well?
(あなたにとっての理想的な解決策はなんですか? 理由も教えてください)
納期の前倒しを交渉する例であれば、「なぜ前倒しできないか」を聞くよりも「前倒しできるようにする解決策」を考えやすいような会話に持っていくことが効果的でしょう。
What would make it possible to accelerate your delivery schedule?
(どうすれば納期を前倒しできますか?)
We are short on the optics. As long as we can source them, we may be able to shorten the delivery timeframe.
(オプティックスが足りないのです。それさえ調達できれば、納期短縮も可能かもしれません)
続いてステップの2です。自分の事情を相手に説明する際には、最初に整理した自説の根拠をもとに会話を進めましょう。数値を挙げるなどして、できるだけ具体的に話すと説得力が増します。
If you can accelerate your delivery schedule by 2 weeks, our launch should be able to enjoy an increase in demand due to the upcoming big sporting event, and this should increase our sales by 20%.
(もし2週間納期を早めてもらえれば、発売を近く開催される大きなスポーツイベントによる需要増に間に合わせられ、売り上げは20%増になるでしょう)
相手の心理に訴え、メリット・デメリットを整理する
ステップの3では、相手の心理に訴える会話に持っていきます。交渉をうまく進めるためには、相手が自分の立場に立って考えやすいようにするフレーズが効果的です。
If you were me, what would you do?
(もしあなたが私だったらどうしますか?)
Well, I would ask your global procurement division to provide those optics for us.
(私だったら、グロバール調達部に連絡してオプティックスを私たちのために提供してもらえないか聞くと思います)
I can do that.
(それならできますよ)
最後に、メリットとデメリットを整理して相手に伝えましょう。納期前倒しの交渉の例でいえば、自分のメリットは20%の売上増加です。相手にとってはどうでしょうか? 自分にとってのデメリットと相手のデメリットは?
例えば、「相手のメリット=再発注の可能性が大きくなること」「自分のデメリット=部品の追加発注が必要になりそうなこと」「相手のデメリット=社内の説得と特別措置の対応」とすると、次のように伝えればOKです。
If, hypothetically, I can arrange the optics, we should benefit from a 20% sales increase and you can enjoy another order placement, even though that may require our additional order of optics and your internal persuasion and special measures.
(仮にもしオプティックスを私が手配できれば、当社は20%の売り上げ増になり、御社にはまた発注があるでしょう。もちろん当社はオプティックスを追加発注しなければいけないかもしれませんし、御社も社内の説得と特別措置が必要かもしれませんが)
このような流れで相手との交渉を進めていき、建設的で双方にメリットがある中間地点を見つけることができれば、きっと交渉を成功させることができます。なお、交渉の場には相手もこちらも責任を負って臨むため、堅い雰囲気になってしまいがちです。最初はice breaker、つまり「打ち解ける会話」が大切であることも覚えておきましょう。
同時通訳者。71年生まれ。実践女子短期大学国文科卒業、2004年早稲田大学社会科学部副総代で卒業。短卒後のTOEIC は280点。独自の勉強法で、半年後に805点を取得して英会話学校講師に抜擢。後、TOEIC 950点、英検1級を取得し、短大卒業から3年半で通訳者に。通訳した現場は、5000件以上。
(構成 千葉はるか)
[nikkei WOMAN Online 2014年11月13日付記事を基に再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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