思い出かゴミか モノへの執着はオトコたちの習性
2度とない成長の記録
自分はそう思うのだが、日々子どもと接している妻はドライだ。「大事なのはモノじゃない。眼前の課題の解決だ」とばかりに潔くゴミ箱に放り込む。理屈は後からついてくる。たとえば勉強しやすい環境のための整理整頓。ファストフードのおまけを捨てると宣告された息子の無言の抗議にもひるまない。おかげで我が家はいつもきれいだ。
思えば流行の「断捨離」に熱心なのも女性だ。毎日の着回しに欠かせないファッションや雑貨、靴はかさばっても取っておくけれど、実用的な価値がない「思い出系」は取り置く価値もないと考えているのかな。女の思い出はそれまでのデータを消去する「上書き保存」と言われるし。
モノに固執するのはオトコたちの習性かもしれない。それに捨てずにおいても将来、本当に見返すかと問われれば心もとない。でも、年齢を問わない男子の感傷をたまには認めてほしい。なるべくきちんと片付けておくから。
忘れてたでしょ
「え、これ捨てちゃうの?」。朝、ごみ袋をのぞきこんだ夫がこう言いながら袋の中のごみを拾い上げる。中身は息子が見向きもしなくなった2世代前の戦隊ヒーローのビニール人形やがらくたの数々。こっそり捨ててしまおうと、深夜に袋詰めしていた。
夫が「これも捨てようとしている。あ、これもだ」と派手に声を上げるから、息子も寄ってきて「ママひどいよ」と大騒ぎする。男どもの興奮は、夫と息子が手作りした節分の鬼のお面が出てきたときピークに達した。「オレたちの思い出の宝物を捨てるのは許さない」。夫は拾い上げたおもちゃを段ボール箱に移し、「パパが守るからね」と息子に宣言してみせた。
子ども部屋がない我が家。おもちゃは狭いリビングに置くしかない。スペースがないのだから不要なものは捨てないと。鬼のお面だって、すでにツノは取れ、くりぬいた目の部分は破れている。来年はまず使わないはずだ。
「思い出」という聞こえがよい言葉を言い訳にして、モノをため込む悪癖が男性にはあるようだ。でも、とっておきたいなら、収納スペースが存分にある広い家が必要だよね。え、とても買えないって? だったら仕方ない。やはり捨てさせてもらいます。
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