憧れの「ちょいワル」 でも現実は難しい……
チャンス到来のはず……
ちょいワルオヤジは男性ファッション誌が作ったブームらしい。高価な服、腕時計を身に着け、車やグルメを楽しむ。こちらはスーツも靴も安物。カネがなかった大学時代以来、ブランド品とは無縁の生活がしみついている。が、潮目は変わったのでは?
ある日、節電中のオフィスが寒いので、妻に誕生日にもらったカシミヤのマフラーを巻いてパソコンに向かっていると若い女性社員から声をかけられた。「ちょいワル風ですね」。こう聞いて気分を害する男はいないだろう。
さて、どう変身しようかな。湘南あたりで憧れのサーファーになるか。放浪の旅に出るか。物置には子どもが幼いころに活躍した大量のキャンプ道具も眠っている。
あれこれ思い描いていると「これからは老後に備えなくちゃね」と妻がひと言。毎週末、携帯電話でささやかな額の馬券を買うのが今の私にできるちょいワルなのか?
定年間際のあがき?
「ちょいワルオヤジ」は若い子にモテたいという点で「美魔女」に重なる部分もちょっとあるけれど、美魔女にかける女たちのエネルギーとお金に比べればかわいいものだ。だが、ちょいワルオヤジもそう簡単にはなれない。スーツが形崩れしようがネクタイがよれていようが、構っていられないと仕事一筋だったおじさんが、突然イタリア風ファッションに身を包んでも似合うわけがない。
遊びだってそうだ。若いうちから遊び慣れていないと板につかないし、本人も緊張して存分に遊べないだろう。それに若いときに中途半端に取った程度の「杵柄(きねづか)」だと結構さびついてしまうもの。「暇になったら、あれしたい、これしたい。でも今は仕事だ」と思ってまい進するうちに、いつの間にか遊び方を忘れていた――なんてことはよくある話だ。
では会社の枠にはまらないちょいワルなら目指せるかといえば、それも難しいでしょ。会社の枠にはまらない人は若いときからはまっていないし、「まじめオヤジ」で来た人はもう十分飼いならされている。男は定年間際にどうしてそんなことであがくのかと思うけど、これって、家庭の枠にはまりたくない中高年主婦も同じかな。
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