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「ホクト・インパクト」地銀が女性活用で最高益

日経BPヒット総研所長 麓幸子

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NIKKEI STYLE

 エンターテインメント、トレンド、健康・美容、消費、女性と働き方をテーマに、ヒット案内人が世相を切るコラム「ヒットのひみつ」。いまを象徴するキーワードから、話題の理由、面白いワケなど、「ひみつ」を明らかにします。今回のキーワードは【地方企業の女性活用】。2015年1月9日に内閣府「女性が輝く先進企業表彰」が行われた。内閣総理大臣賞を受賞したのは秋田の地銀。女性活用を原動力に最高益を出した地銀のインパクトに迫ります。

その日の秋田は1日中雪模様だった。最高気温でも3.2度と寒い1日だったが、県内を沸かせるようなホットなニュースが飛び込んできた。北都銀行(本店・秋田市)が、その日発表された「女性が輝く先進企業表彰」内閣総理大臣賞を受賞したのだ。この表彰は、女性が活躍できる職場環境の整備を推進するため、女性登用の方針、取り組み・実績並びにそれらの情報開示において顕著な功績があった企業を表彰するもので、今回が第1回である。

発表当日、筆者はたまたま大館市で開催された「ふるさとキャリア教育フォーラム」(市、市教育委員会主催)に登壇するため秋田県入りしていたので、そのニュースの地元でのインパクトがわかった。地元のテレビ局や新聞はこぞって大きく扱った。なぜなら、同じく総理大臣賞を受けたのは、この欄でも紹介したことがあるセブン&アイ・ホールディングス。同じく発表された内閣府特命担当大臣賞が、資生堂やカルビー、日産自動車、LIXILグループなどの大手企業だったからである。あのセブン&アイ・ホールディングスと同時に受賞、並み居る中央の大手企業を押しのけて、「あのホクトが、おらほ(地元)の銀行が……」というインパクトが県内にあった。「女性活躍」の実績で、その業界、その地域での企業価値が上がった。「ホクト・インパクト」とでも名付けたいような波及効果があった。

「そうそうたる企業ばかりですからね、地方でもやれるんだという喜びがありました。光栄です。地道にコツコツやってきたことが評価された。地方にも光を当ててくれたことに感謝します」(北都銀行・斉藤永吉頭取)

表彰理由は、「業界平均を大きく上回った女性管理職比率(26.7%)、女性従業員比率52.5%と地域の女性の雇用を創出した点と、地方銀行初となる女性行員を対象とした企業内大学『HOKUTO Women's College』の開設」(内閣府男女共同参画局)。

北都銀行はいかにして快挙をなし得たのだろうか。

ホクト・インパクトが起きた…

北都銀行は積極的なISB(インストアブランチ)戦略を取る。これは顧客に来店してもらうのではなく、ショッピングセンターなど顧客の集まる場所に銀行が出向くという発想に転換を図ったもの。同行のISBは基本的に365日無休で営業時間も夜7時までと長い。現在ISBは4店舗あるが、支店長は全員女性だ。

「元旦に店を回ったことがあるんですよ。『家庭もあるのに、大みそかも元旦も休みなくて難儀をかけて申し訳ないね』って言ったら、『頭取、私たちはうれしいんです』と言うんですよね。女性支店長さんたちが。年末年始はショッピングセンターにお客さんがいっぱいくる。ビジネスチャンスがいっぱい生まれる。だから私たちはうれしい、と。それ、聞いたときに女性の意欲と銀行を思う気持ちは男性以上だなと思いましたね」(斉藤頭取)

ISB1号店の御所野支店(秋田市)は、2010年6月に約14億円だった個人向け貸出残高は2014年6月には約47億円と3倍以上になった。

同行の女性活躍の特色は、女性従業員の自発性にある。2012年に、女性の活躍の拡大を目指した、女性による女性のための推進チーム「RiSE(ライズ)」が発足した。「平成30年3月31日までに女性管理職比率を30%までに引き上げる」とトップが表明した、同行の女性活躍推進の取り組み「Plan30」を受けて、自発的に始まった。女性支店長を含む8人で結成され、現在2期目のメンバーが活動中だ。「発足当初は女性の意識を高めることに注力しましたが、今は業務面の不安をバックアップし意欲向上につなげることを目的にしています」というのは創設メンバーの一人で現在女性活躍推進室長の佐藤千穂子氏。「自分たちが成長するためには何が必要かと議論した結果、融資能力が足りないということがわかった。であればそれを伸ばすためのセミナーを開催している。自ら考え自ら行動するという文化になっています」(斉藤頭取)

女性活躍が奏功か、2014年3月に最高益

女性活躍が叫ばれてはいるが、女性の意識や意欲に課題があると指摘する企業は多い。なぜ北都銀行は違うのだろうか。女性活躍を成功させるためには何が必要なのだろう。

斉藤頭取は、「女性活躍を経営戦略に置くこと」だという。

同行は、09年3月末にリーマン・ショックの影響により多額の有価証券の含み損を抱える事態となり、業績が低迷した経緯がある。

「経営危機を乗り越えるために経営改革、意識改革を実行し、ビジネスモデルを追求した。そこにはどうしても女性のパワーが必要だったんです」

同行は、2009年からISBとバンカシュアランス(銀行と保険の融合)を2本柱に、新しいビジネスモデル構築に着手した。その事業に女性の力が存分に発揮された。ISBはショッピングセンターのテナントの一部であるため、小売業の発想が求められる。しかも来客の多くは女性だ。相談から成約まで長い時間を要するバンカシュアランスはISBのような店舗に適しているという。

保障性保険手数料は13年度で3億円を超え、順調に伸びている。「ここでもかなり収益が上がってきていますね。バンカシュアランスはコンサルティングが重要です。セールスからコンサルティングだと。セールスはやってはダメ、そのために個人にノルマは設定せず、コンサルティング業務に徹してもらっています。そうすると女性たちはプレッシャーを感じずに一生懸命頑張れる。それが業績につながっています」

女性活躍推進を経営戦略のひとつとすること。女性を活躍させるために何かを考えたのではなく、競争力を高めるための経営戦略そのものにした。それが奏功したと斉藤頭取。同行の14年3月期の当期純利益は28億7600万円と前年同期比138.5%でこれまでの最高益となり、2015年3月期もさらに更新する見込みだ。

長時間の労働を前提としない7時退社運動を開始

女性活躍推進に力を入れる地銀は北都銀行だけではない。14年11月には全国の地銀64行でつくる「輝く女性の活躍を加速する地銀頭取の会」(会長・佐久間英利千葉銀行頭取)が発足した。「私たち地方銀行のリーダーは、様々な女性の意欲を高め、その持てる力を最大限発揮できるよう、取り組みを行うことをここに宣言します」と、女性リーダーの育成や地銀間のネットワーク構築を図るなど9つの取り組みについての行動宣言を発表した。子育て期の女性行員が配偶者の転勤先にある別の地銀で働けるような仕組みづくりで連携をするという取り組みは、日経朝刊の一面を飾るなど大きな話題を呼んだ。

幹事行のひとつである常陽銀行常務執行役員・人事部長の横地裕昭氏は、「企業が持続的な成長を実現していくには、本気で女性活躍に取り組まなければいけない」と語る。

「価値観の多様化が進む中、地方銀行がお客様のニーズに的確に対応していくためには、多様な価値観や考え方を持った人材が男女問わずに活躍できる組織にする必要があります」

しかし、結婚・出産や配偶者の転勤などで離職する女性は依然として多い。

「優秀な女性行員が結婚・出産または配偶者の転勤で退社することは銀行にとっては大きな損失です。行員がやめるとその補充のため新入行員を採用しますが、採用コストもかかり育成には時間がかかる。女性がやめない職場、長く働き続けられる職場づくりが急務です」

常陽銀行では、14年夏、パート社員を含めた全行員約5000人にアンケートを取り、その結果を分析して課題解決の施策を打ち始めた。その結果、女性が一番ストレスに感じていることは、「何時に帰れるか分からない」ということだった。

「長時間労働を前提にしない働き方が重要なんですね。今年の1月から当行では『7(セブン)アップ運動』を始めました。この趣旨は、"毎日7時までに帰りましょう"、そして"仕事と家庭の両方で充実した生活を過ごしましょう"というものです。こうした運動を推進するには、銀行業務の効率化も必要となりますが、14年4月に立ち上げた業務革新部を中心に、さまざまな銀行業務の見直しを実施し、銀行としても早く帰る体制をサポートしています。また、行員自身の意識改革も必要です。定められた時限までに帰るためにはどうすれば良いかといったことを個々人が考え、創意工夫してもらいたいと考えています。長時間労働を前提とせず成果で評価される仕組みもつくらなくてはいけないと思っています」

同行の数値目標は、17年までに女性管理職者数を14年度末比20%増加させることである。働き方の見直し、生産性向上とともに、入社3年目の一般職行員を対象にキャリア形成について考える研修や、特定総合職(女性中心)へのリーダーシップ研修などを実施する予定だ。

地方創生のポイントは若い女性にある

14年11月、まち・ひと・しごと創生法が成立、12月27日には国の長期ビジョンと総合戦略が閣議決定された。その基本的な考え方は、人口減少と地域経済縮小を克服し、「東京一極集中」の是正や、若い世代の就労・結婚・子育ての希望の実現、地域の特性に即した地域課題の解決の3つの基本的視点から取り組むことである。「しごと」が「ひと」を呼び、「ひと」が「しごと」を呼び込む好循環を確立し、その好循環を支える「まち」に活力を取り戻すというシナリオだ。地方創生のステージは地方に移り、すべての都道府県と市町村で人口の将来見通しに基づいた地方版総合戦略の策定が求められている。策定のための財政支援のひとつとして、「地方創生先行型の交付金」に対し1700億円が14年度補正予算に計上された。今、いろいろな地方自治体がどのような総合戦略を策定するか知恵を絞っているところだろう。

「地域の特徴あるものにする、KPI(重要業績評価指標)を設定して施策の効果を検証し、PDCAサイクルを回す、戦略策定・実施には、幅広い年齢層の住民はもとより、『産(産業界)官(行政)学(地方大学や高専など地域の高等教育機関)金(地域の金融機関)労(労働団体)言(地方紙などのメディア)』を巻き込む、などいくつかのポイントがありますが、総合戦略の策定に女性が参加し、女性の視点を盛り込むことも大切です」と語るのは、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局総括官補の佐村知子氏。前内閣府男女共同参画局長でもある。

「実は、住みやすい地域は、女性が活躍しやすい地域でもあるのです」

昨年大きな話題となった日本創成会議(座長・増田寛也東京大学大学院客員教授)の「消滅可能性都市」も、その都市が消滅するかどうかは20歳から39歳の女性たちがその都市から流出かとどまるかにかかっているとした。

「若い世代、特に女性たちがそこで働き、家族を持ち、住み続けたいと思うこと、住み続けられることが地方創生の鍵なんですね。実は、地方創生のポイントは女性です。女性が活躍できる地域は、誰もが働きやすく、暮らしやすいところなのです」

女性の力を生かして経営危機を乗り越え、最高益をたたき出した北都銀行や、女性の活躍のために全従業員の働き方改革、業務改革をすすめる常陽銀行など、女性の活躍を加速させる地銀の中にも、地方創生のひとつの解が見いだせるのではないだろうか。

麓幸子(ふもと・さちこ)
日経BPヒット総合研究所長・執行役員。日経BP生活情報グループ統括補佐。筑波大学卒業後、1984年日経BP社入社。1988年日経ウーマン創刊メンバーとなる。2006年日経ウーマン編集長、2012年同発行人。2014年より現職。同年、法政大学大学院経営学研究科修士課程修了。筑波大学非常勤講師(キャリアデザイン論・ジャーナリズム論)。内閣府調査研究企画委員。経団連21世紀政策研究所研究委員。経産省「ダイバーシティ経営企業100選」サポーター。所属学会:日本労務学会、日本キャリアデザイン学会他。2児の母。編著書に『なぜ、女性が活躍する組織は強いのか?』(日経BP社)、『企業力を高める~女性の活躍推進と働き方改革』(共著、経団連出版)、『就活生の親が今、知っておくべきこと』(日経新聞出版社)などがある。
[参考] 日経BPヒット総合研究所では、3月13日東京都内で北都銀行斉藤頭取などが登壇するダイバーシティマネジメントセミナーを開催する。http://www.nikkeibpm.co.jp/semi/0313woman/

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