TOHO新宿にIMAX登場 シネコンの高機能化が加速
日経エンタテインメント!
2015年4月17日オープンのTOHOシネマズ新宿に、IMAXデジタルシアターが導入される。IMAXは全国に17サイトあるが、TOHOシネマズが運営するシネコンへの導入は初。東京・山手線内という都心部に所在するのも初めてだ。
IMAXシアターとは、カナダのIMAX社が開発した上映システム。床から天井、左の壁から右の壁まで大きく広がったスクリーン、2台のデジタルプロジェクターを使った明るくクリアなデジタル映像、全ての座席が最適な音響になるよう調整されたデジタルサウンドが特徴。入場料金はやや高めだが、観客には好評だという。
TOHOシネマズとIMAXが組むポイントは何か。TOHOシネマズ新宿は、東宝所有の新宿コマ劇場跡地にオープンするビルに入る肝いりのシネコンだ。新宿には既に新宿ピカデリー、新宿バルト9と2つのシネコンがあり、どちらも盛況。そこで、「差別化の武器のひとつとして最新のIMAXを導入した」(瀬田一彦社長)。
一方、IMAXの狙いは、中国に次いで世界第3位といわれる日本市場での拡大だ。「東日本大震災の影響で計画より進出が遅れているが、2020年までに50サイトを目指したい。日本最大の興行会社TOHOシネマズには数年前からアプローチしており、ようやく導入してもらえた。これを機会に今後につなげていきたい」(IMAXのドン・サヴァン・アジア太平洋地域マネージング・ディレクター)。
IMAX向けの作品はハリウッド製のアクション大作が中心だが、2013年に初の日本映画『ドラゴンボールZ 神と神』が上映された。日本映画の上映にも力を入れており、「TOHOシネマズとの提携で、(親会社の)東宝にアプローチするチャンスを広げていきたい」(サヴァン氏)とする。
大画面やシートで差別化
シネコンは、複数のスクリーンや見やすい座席配置など、既存の映画館にはない魅力で普及してきた。その過程で、様々な高機能化のサービスを生み出してきた。まずは「豪華な座席」。1999年、ヴァージンシネマズが1号店にあたるトリアス久山で、「プレミアスクリーン」と名付け、全席リクライニングシート&サイドテーブルを導入したのを皮切りに、カップル専用シートなど各社が高級なシートを開発した。
次に出てきたのが、「大型スクリーン」だ。前出のIMAXのほか、イオンシネマの独自規格「ULTIRA(ウルティラ)」やTOHOシネマズの独自規格「TCX」などが設置された。大画面化に合わせて、座席もさらに進歩。シーンに連動して前後上下左右に"動く座席"「D‐BOX」や、動きに加えて風や水、香りや煙が出る「4DX」などが誕生した。
こうした映画館の高機能化の背景には、国内の年間興行収入が2000億円前後を推移し続けるなど興収の伸び悩みや、シネコン間の競争の激化がある。
「近年は、アニメやライブビューイングを劇場で見るなど、新しい楽しみ方も増えてきている。映画に留まらず映画"館"産業を拡大していくため、今までよりさらに充実した設備やサービスを提供していきたい」(瀬田社長)
2015年、TOHOシネマズは、新宿のIMAX導入に加え、3月にリニューアルされる同六本木ヒルズにフットレストの付いた電動リクライニングシートや、ボックスで仕切られたプレミアボックスシートを導入。他社では、2017年にオープン予定のシネマサンシャイン池袋に、高さ18メートル、横幅26メートルの国内最大のスクリーンが設置される。今後も、シネコンの高機能化は続きそうだ。
(ライター 相良智弘)
[日経エンタテインメント! 2015年2月号の記事を基に再構成]
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