中学受験 合同説明会には小3前から参加も可能
一度にたくさんの学校に出会える合同説明会には、低学年から足を運んで
共働き中学受験に際し、学校選びの参考となる学校説明会は、いつの時点で行くべきものなのでしょうか?
「一般に中学受験は、小3の2月から始まると言われていますが、それは大手進学塾の中学受験のカリキュラムがスタートするのがその時期だからです。ですが、実は学校選びはそれ以前から始めておくべきものなのです」。そう話すのは、安田教育研究所の安田理さんです。中学受験をはじめ、様々な学校にも詳しい安田さんも、各学校の取り組みを知るための場として、毎年多くの学校の学校説明会に出席していると言います。
学校説明会は、大きく分けると2つあります。一つは複数の学校が一堂に集まって行われる合同説明会、もう一つは各学校で行う学校説明会です。
合同説明会は春から秋にかけて、様々な場所で開催されています。大規模なものでいえば、毎年5月中旬に開催される「東京私立中学合同相談会~Discover私立一貫教育~」、5月末に開催される「ベネッセ進学フェア」などがあります(どちらも会場は東京国際フォーラム)。「東京私立中学合同相談会」には都内の全私立中学校が、「ベネッセ進学フェア」には首都圏の私立中高一貫校が180校参加します。
その他に「キリスト教学校合同フェア」や「カトリック学校フェア」などのキリスト教の学校を集めたもの、「東京私立男子中学校フェスタ」「私立女子中学に触れる会 shisyokukai」などの別学を対象にしたもの、沿線の学校を集めたもの、大手学習塾が主催のものなど、様々な合同説明会があります。合同説明会の年間スケジュールは、各中学受験専門のサイトなどで紹介されているので、こまめにチェックしておくといいですね。
志望校が絞られている場合は、小規模な合同説明会がお薦め
合同説明会のメリットは、一度にたくさんの学校を知ることができる点です。そういう意味では、まだ志望校が絞られていないうちに参加するのが好ましいでしょう。一般的には、小学4~5年生のときに参加する家庭が多いようですが、「受験を考えているのなら、低学年のうちから積極的に足を運び、たくさんの学校を見ておくことをお勧めします」と安田さんは言います。
当日は参加人数がとても多く、回れるブース数は限られています。何か質問をしたい場合は、あらかじめ質問内容を用意しておくといいでしょう。各学校の特徴を知るには、同じ質問をしてみて、どんな答えが返ってくるか聞いてみるのも一つの手です。各学校の違いを一度に比べられるというのが良さでもあります。
と言っても、最初のうちはどんな質問をしたらいいか分からないものですよね。例えばこんな質問はいかがでしょうか?
「高校生と一緒にできる活動はありますか? 内容を含めて教えてください」(中高一貫校ならではの良さを知る)
「夏休みに補習講座はありますか?」(面倒見の良さをチェックする)
「高校に上がったあと、生徒達は予備校に通うようになりますか?」(面倒見の良さをチェックする)など
予約不要の場合がほとんどで、誰でも気軽に参加することができます。保護者の服装も比較的ラフです。けれども、当日は会場が大変混み合い、待ち時間もあるので、きょうだいなど小さい子どもを連れていくのはあまりお勧めしません。フェアによっては、あまりの混みようでパンフレットをもらうだけで終わってしまったなんてこともあります。ある程度、志望校が絞られているという場合は、小規模な合同説明会に参加したほうが収穫は大きいでしょう。
その学校の真の姿を見るための「学校説明会チェックポイント」
ある程度、志望校が絞られてきたら、今度はその学校が実施する学校説明会に参加してみましょう。学校説明会は春から秋にかけて、年間数回実施されます。12月以降は内容を入試に絞った入試説明会を開催する学校が増えています。
日程は、各学校のホームページにゴールデンウイーク前ごろからアップされます。学校によっては、毎回同じ内容であったり、各回テーマを設けて内容を変えていたりするので、内容もチェックしておきましょう。近年、申し込みはネットでできるケースが多くなっていますが、中には電話予約や往復ハガキでの申し込みが必要な学校もあります。そういう面からも各学校の特徴が見えてくるものです。
土日に開催されることが多く、近年はお父さんの参加率が急激に上がっています。また、共働きの家庭を対象に、仕事帰りに参加できるよう「ナイト説明会」(主に金曜の19時から開始)を実施する学校も増えています。こうした配慮は、共働き家族には大助かりですね。
校長先生の話から始まるところが多く、続いて学校の様子が分かるスライドの上映や、生徒やOB・OGなどの話があり、最後に入試担当の先生から入試についての説明があります。校長先生の話はその学校が目指しているもの、すなわち建学の精神について語る場であるので、とても大切です。そこで共感できるか、違和感を覚えるかで志望校は変わってくるでしょう。
校長先生の話も大切ですが、実際に他の先生が校長先生の思いに沿って行動できているかどうか厳しくチェックすることも大事です。例えば、校長先生が「あいさつや礼儀を重んじる学校」と言っているのに、ほかの先生ができていなかったら、それは単に理想を述べているにすぎません。また、その学校に通う生徒の姿も学校選びの重要なポイントとなります。
当日集まる親の姿を見て違和感があったら再検討を
さらに、安田さんはこんなアドバイスもしてくれました。
「学校説明会では、参加している保護者もチェックするといいでしょう。公立や国立の学校には、様々なタイプの親が参加していますが、私立の場合は、その学校が掲げる建学の精神に共感して受験をする家庭が多いので、ある程度、価値観の似ている親が集まります」
「そこで参考にしたいのが、親の姿です。例えば、学校説明会の場でどんな服装で来ているかも参考の一つになります。学校によって両親ともにスーツで参加するところもあれば、ジーンズにTシャツではないにしても、茶髪率の高いところもあり、親の価値観が見受けられます。携帯電話の使い方なども見ておくといいでしょう」
「そこで、自分とはちょっと違うなと違和感を感じたら、考え直してもいいかもしれません。親の価値観は少なからず子どもにも影響するからです」
こうしてみると、学校選びはかなり奥が深いことに気づかされます。
「こんなこと、仕事をしながらではできないわ」とひるんでしまう人もいるかもしれませんが、これもやらなきゃ、あれもやらなきゃと完璧を目指そうとせず、親子で楽しく取り組んでみてはいかがでしょう。
志望校の選び方には正解も不正解もありません。初めは「あの学校の制服がかわいいから着たいな」という理由でもいいのです。例えば、安田さんが編集で携わっている『有名私立女子校&共学校』(学研教育出版)という私立中学・高校受験ガイドには、制服写真大図鑑、学校別身だしなみ校則調査などが紹介されていて、母と娘で盛り上がること間違いナシです。
大事なのは偏差値の高さではなく、わが子が楽しく通えそうな学校であるかどうかを親が見極めることです。受験勉強を進めていく過程では、志望校が変わる場合もありますが、"わが子に合った学校"という大きな柱さえブレなければいいのではないでしょうか。
共働きでも参加しやすい「オンライン学校説明会」
また、近ごろは、合同説明会や学校説明会に足を運ばなくてもいい「オンライン学校説明会」の需要も高まっています。オンライン学校説明会は、もとは海外に暮らしていて、合同説明会や学校説明会に参加できない帰国子女を対象に発信されていましたが、近年は日本でも共働き家庭が増え、説明会に参加できない家庭を中心に徐々にニーズが増えています。また、まだきょうだいが小さく、説明会に連れていけないという家庭にも重宝しているようです。
オンライン学校説明会は、各学校で発信しているところもありますが、一度にたくさんの学校を視聴できる「プレジデント ファミリークラブのオンライン学校説明会」がお薦めです。
帰国子女を対象にした「帰国子女説明会スペシャル」をはじめ、「私学のグローバル教育への多彩な取り組み」「我が校のグローバル人材育成について」など、毎回ひとつのテーマを設けて、複数の学校がそれぞれの特徴を紹介しているので、比較することができ、学校選びには最適です。また、先生のお話を聞きながら、チャット機能を使ってリアルタイムで個別質問をすることもできます。
「私立中高一貫校の魅力」がわかる教育情報サイト
ネッティランド 合同説明会情報
http://www.netty.ne.jp/list/
「プレジデント ファミリークラブ」のオンライン学校説明会
http://presidentfamily.com/openseminar
(ライター 越南小町)
[日経DUAL2014年10月14日付けの掲載記事を基に再構成]
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