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あなたの残業代、正しく計算されている?

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日経ウーマンオンライン
職場で賢く生き抜くために知っておきたい「ワークルール」と「お金」をテーマに、社会保険労務士の佐佐木由美子氏がそれぞれの「対処法」をお伝えします。今回は「残業代」について。あなたの残業代が正確に支払われているか確認したことはあるでしょうか?

突然ですが、給与明細書をもらったときに、あなたは内容を確認していますか? 手取り額をちらりと見て、そのまま保管していませんか? 今回は、給与明細書の中でも残業代にスポットを当ててお伝えします。

給与明細書から垣間見える働き方

月給制で給与をもらっている場合、時間あたりの単価がどのくらいになるか、把握していない方は意外と多いのではないでしょうか?

きちんと情報が盛り込まれた給与明細書を見ると、今の働き方が垣間見えます。給与明細書は、労働時間など勤怠に関する項目のほか、支給と控除項目に大別されます。基本給などの固定給は基本的に毎月変わりませんが、支給額に変動のある時間外勤務手当や休日勤務手当、深夜勤務手当(ここでは総称して「残業手当」といいます)は、支給額が正しく計算されているかチェックしたいところです。そのもとになるのが、時間あたりの給与額です。

私は社会保険労務士という仕事柄、賃金台帳や給与明細書を見る機会が多いのですが、実際の残業時間に対して、支給されている残業手当が少ないのでは? と思うことが時々あります。よく中身を見ると、残業手当の計算方法が間違っている場合もあるので、注意が必要です。

たとえば、時間外労働が30時間ある月に対して、残業手当が2万円だとしたら、どう感じますか? そのようなものだと思うでしょうか?

そこで、あなた自身で内容をチェックするために、一般的な残業手当の計算方法について確認していきましょう。

割増賃金(残業手当)は、1時間あたりの給与額に、時間外労働・休日労働・深夜労働の時間数と割増賃金率を乗じて計算します。

月給制で支払われている場合は、【月の所定給与額】を【1カ月の平均所定労働時間】で割って1時間あたりの給与額を算出することができます。まずここで、あなたの時間単価を確認してくださいね。

所定給与額の中には、原則として、基本給以外の各種手当も含めて計算をします。しかし、「通勤手当」や「家族手当」、「別居手当」ように、労働と直接的な関係が薄く、個人的事情に基づいて支給されているものは、割増賃金の基礎となる給与から除きます[注]

[注](1)家族手当 (2)通勤手当 (3)別居手当 (4)子女教育手当 (5)住宅手当 (6)臨時に支払われた賃金 (7)1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金、については割増賃金の基礎単価から除外されるが、(1)~(5)は全員一律に定額支給される場合などは除外できない。

モデルケースで時間給を算出、本来の残業手当の額は…

それでは、東京都内の事務用品メーカーで正社員勤務の晶子さんのケースで考えてみましょう。

基本給20万円、職務手当3万円、調整手当2万円、通勤手当2万円の計27万円が総支給額です。7月に残業が30時間あり、この会社の月平均労働時間は161時間とします。1時間あたりの給与額を考えるとき、このケースでは通勤手当を除く額を161で割りますから、1時間あたり1553円となります。

これに、時間外労働時間数30と割増率(1.25)を乗じると、約5.8万円が残業手当の額になるわけです。

そう考えると、冒頭でご質問した30時間の時間外労働で、2万円の残業手当というのは「少ない」ことに気づいていただけるかと思います。

もちろん、会社によって給与も月平均労働時間も違いますが、法律では「最低賃金」が定められていますので、時間単価を不当に低くすることは認められていません。ちなみに、東京都の地域別最低賃金は888円(2014年11月現在)です。この額は、毎年見直されます。

間違いやすいケースとしては、本来は含めるべき諸手当を除いて、基本給だけで1時間あたりの給与額を計算しているような場合。諸手当が幾つもあるときは、時間あたりの単価が減ってしまうため、もらえる残業手当も低く計算されてしまいます。

また、割増率も間違えないように気をつけましょう。法定労働時間を超える時間外労働については25%以上、さらに1カ月60時間を超える時間外労働には50%以上(ただし、中小企業は当面猶予)になります。また、法定休日に労働したときは35%以上、午後10時から翌朝5時までの深夜時間に労働したときは25%以上の割増率が法律では義務付けられています。

残業手当の計算方法について、基本的な考え方についてご紹介しましたが、あなたの会社の就業規則にこうした残業手当の計算ルールが決められているはずですので、一度ご確認ください。

定額の残業手当が支払われているときは

注意したいケースとしては、あらかじめ給与の諸手当に残業代が定額で支給されているような場合です。たとえば、「1カ月に30時間分の残業代として、実際に残業してもしなくても一定額の○○手当を支払います」という労働契約であれば、すでに30時間分の残業については支給されているので、30時間を超える残業がない限りは、別途支給はありません。

これはもちろん、その手当の計算根拠に法的な不備がないことを前提としていますが、実際の時間外労働が一定の決められた時間・手当を超えた場合には、別途計算して支給されることになります。

なお、労働者であっても、いわゆる「管理監督者」に該当する一部の人は、深夜労働を除き、時間外労働や休日労働の支給対象とはなりません。

また、裁量労働制など会社ごとにみなし労働時間が定められている場合は、その内容を確認しておきましょう。

給与明細書をチェックすることは、自分の働き方を再点検するよい機会とも言えます。まずは、どのような労働契約で自分の給与が決められているか、把握しておくことが大切です。

佐佐木由美子(ささき・ゆみこ)
社会保険労務士。米国企業日本法人を退職後、社会保険労務士事務所等に勤務。平成17年3月、グレース・パートナーズ社労士事務所を開設し、現在に至る。女性の雇用問題に力を注ぎ、【働く女性のためのグレース・プロジェクト】でサロンを主宰。著書に「知らないともらえないお金の話」(実業之日本社)をはじめ、新聞・雑誌、ラジオ等多方面で活躍。

[nikkei WOMAN Online 2014年8月12日付記事を基に再構成]

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