昼休み時間の電話番、やらなければダメなの?
職場でのお昼休みは、食事を取るだけでなく、ほっとひと息できたり、職場の仲間と会話を楽しむひとときなのではないでしょうか。しかし、「お昼休みの時間を自由に使えなくて困っている」と悩む方もいるようです。
昼の電話当番が暗黙のルール、従わないといけないのか?
「新しい店ができたから、お昼に行ってみない?」。その日の朝、舞さんは憧れの先輩から声をかけてもらいました。しかし、金曜日のお昼休みは、電話当番で外出ができません。
入社したときから、内心嫌だと思っていましたが、それがこの会社の暗黙のルールだと聞かされ、異を唱えることなどできませんでした。
舞さんの勤務する会社は女性社員が少ないにもかかわらず、「電話は女子社員が取るもの」という考えが強く残っています。
3コール以内で取らないと上司に怒られることから、常に電話の音には敏感に反応し、電話対応が忙しく、取りかかっている事務作業が遅れることもしばしばありました。
「お昼休みが自由に使えないだなんて、絶対におかしい」と、舞さんは強く思いました。電話当番のために、金曜日は必ずお弁当を作ってくるか、コンビニ弁当を買って出社しなければなりません。
「私だって、皆とランチに行きたいんです。別の日に行けば? と言われるかもしれませんが……。たとえ週1回の業務でも、電話が多くて昼食をゆっくり食べられないときもありますし……」。舞さんのストレスは、相当なものでした。このように、会社は昼休みを拘束する権利はあるのでしょうか?
「手待ち時間」は労働時間と判断されることも
法律では、使用者(会社)が労働者に対して、一定の休憩時間を労働時間の途中に与えることを義務付けています(労働基準法第34条1項)。
具体的には、労働時間が6時間を超え8時間以内の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩が必要とされます。
労働が長時間続くと、心身に疲労をもたらすうえ、能率が低下したり、災害が起きやすくなったりするおそれがあるため、休憩時間はいわば疲労回復のためと言えます。
ただし、どのように使うかは、本人の自由。「休憩時間」とは、労働者が権利として労働から離れることを保障された時間とされ、「休憩時間を自由に利用させなければならない」と法律でも明確に定めています(労働基準法第34条3項)。
もちろん自由とはいっても、アルコールを飲んだり、職場秩序を乱したり、休憩後の勤務に支障が生じるような一定の行為を禁止することは認められています。
そして、実際に作業はしていないものの、作業に取り掛かれるように待機している時間を「手待ち時間」と言います。
たとえば、客がいないことを見計らって適宜休憩をしているような場合は、労働時間としての手待ち時間とされる判例もあります(すし処「杉」事件・大阪地判S56.3.24)。
このように、「手待ち時間」は、労働時間であると判断されるケースが多く、その場合は給与の支払いが発生します。
舞さんのように、会社の指揮監督下で担当曜日まで決められ、電話当番をすることは、完全な休憩時間とはいえず、手待ち時間とみなされます。
解決に向けて舞さんができること
休憩時間は本来、事業場における全労働者に【一斉】に与えるのが原則です。例外として、運送業、商業、金融・保険業、接客娯楽業など一定の特定業種はこうした制限はありません。
しかし、一斉休憩を守るために、不当な電話番を強いられるとなると、本末転倒です。では、どうしたらよいのでしょうか?
特定業種以外でも、労働者の過半数代表者等との労使協定があれば、一斉休憩付与の義務が免除され、交替制休憩などを労使協定で自由に決めることができます。そのうえで、就業規則を見直し、正式に交替制の休憩が認められれば、バラバラに休憩時間を取れるので、誰かが犠牲になる……といった悪しき慣行からは解放されることでしょう。
ただ、こうした会社のルールを舞さんひとりの力で行うには限界があります。
そこで、まずは社内で電話番を強制されている女子社員たちに、こうした暗黙のしきたりは、法律上認められているものではないことを教えてあげましょう。
みなさんも好きで電話番をしているわけではありません。会社の人事部など労務管理を行っている部署に、電話番は「手待ち時間」にあたることを伝え、舞さんたちが自由に休憩時間を取れるように相談してみましょう。
社会保険労務士。米国企業日本法人を退職後、社会保険労務士事務所等に勤務。平成17年3月、グレース・パートナーズ社労士事務所を開設し、現在に至る。女性の雇用問題に力を注ぎ、【働く女性のためのグレース・プロジェクト】でサロンを主宰。著書に「知らないともらえないお金の話」(実業之日本社)をはじめ、新聞・雑誌、ラジオ等多方面で活躍。
[nikkei WOMAN Online 2014年7月8日付記事を基に再構成]
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