人気俳優の堀北真希さんが「家族の幸せを守りたい」と、芸能界からの引退を表明しました。NIKKEI STYLEの前身、日経電子版ライフでは2014年10月に公開された映画『蜩の記(ひぐらしのき)』で主人公の武士の娘を演じた堀北さんにインタビューし、上下2回に分けて公開しました。堀北さんが語る職業観、家族観について改めてご一読ください。2017年3月1日更新。
――映画デビューから10年と少したった。仕事における自身の立ち位置に変化は。
「仕事を始めた当時は中学生でしたけど、プロ意識は最初から持っていました。現場には本当にたくさんの人がいて、作品の中で自分が一つの役割をもらっているんだな、ということを理解できたし、しかも『私がやるしかない』という状況の中で、自分はプロなんだという意識はありました。ただ以前は、いろいろなことに対してドキドキして、プレッシャーを感じたり、絶対にちゃんとやらなきゃいけない、成功させなきゃいけない、などと感じていました」
「昔からそんなに緊張してあたふたするようなことはなかったのですが、それでもやはり『失敗してはいけない』といった思いがあまり良い方向に作用しないということもありました。私は緊張しても周囲の人にはそう見えないタイプみたいです。緊張しているのを隠そうとしているわけではないのに、周囲にはあまり伝わらないですね。でも今は仕事を楽しめるようになりました。人によって変化のペースは違うと思うし、私は今年26歳になりますが、たぶん私は私のペースで変化していくので、そんなに無理に変えようとか、こうしようということは考えていません」
――高校生になるとき実家を出て事務所の寮に入った。女優になろうと決意したのはこのころからか。
「決めていたのではなく、そういう流れになっていたからです。私は学業もちゃんとやりたかったので、仕事とのバランスを一生懸命とろうとしていました。仕事のスケジュールを聞いて、どの隙間時間に勉強しようとか、どこで学校へ行って何をしようとか。自分で調整しなければならなかったので、そこでしっかり考える習慣がついたのかもしれないですね。一般の学生のような自由な生活を送ることはもう無理でしたけれど、とにかく高校は卒業するという決意のもとに入学したので、何とか卒業しようと必死でした」
「高校卒業後も20歳までは『女優として生きていく』のかどうかよく分かりませんでした。その2年間は、いままで学生だったのに学生じゃなくなったことに戸惑いもあったし、あまり『仕事』とは思っていなかったので。20歳をすぎて21歳とか22歳とかなると、周囲の友達も働き始め、それを見て私も自分がやっていることが『仕事なんだな』とやっと体感できたという感じです」
「プロとしての意識が高まったというより、それまではすごく悩んだり、できなかったり、落ち込んだりしていたのが、周りの友達が働きだしたときに、みんなも悩んだり落ち込んだりしているのを見て、『ああ、仕事ってそういうもんなんだな』って思えたんです。誰でも完璧にできて褒められてばかりという人はいなくて、『みんなそうやって仕事と向き合っているんだ』って思えてからは、ちょっと前向きに対処できるようになりました」
――プロの俳優として心がけていることは。
「次の日の現場できちんとできるように、準備はしていきます。セリフを覚えたりとか(笑)。でもセリフを一言一句間違えないように言うことが私の仕事ではありません。現場に行ったときに現場の要望に対応できるようにすることが大切で、監督の要望や、他の俳優さんと実際にお芝居をしてみて、みんなで気づくこともあります。そういうときに自分の意見を持っていないと対応できないので、自分の意見をしっかり持っておくことは大事だと思っています。結局演じるのは自分ですから、自分の意見がないとできない仕事です」