造形師は社員として雇い、才能を伸ばす

チョコエッグのヒットに見られるように、海洋堂の秘密は、造形師の才能を最大限に発揮させるマネジメント力にある。同社では現在、外部も含めて17人ほどの専任造形師を抱える。うち9人は社員として在籍。40代後半以上のベテランが多い。

フィギュアメーカーのうち、造形師らものづくりに携わるスタッフを自前で雇っているのは珍しいという。ガレージキット(手作業で限定数を生産する模型)をスタートさせた1981年から、同社はすべての製品に原型製作者の名前を入れてきた。「外部発注する企業が多い中、海洋堂では多様な才能を持つ造形師を抱えてきたことが大きな強みとなった」(宮脇専務)。

造形師を含め、社員と会社の関係もユニークだ。基本的には放任主義で、好きなものに対する熱量や探究心を大切にしている。書籍「造形集団 海洋堂の発想」(光文社新書)の中で、海洋堂の創業者である、宮脇修「海洋堂ホビーランド」館長はこう語っている。

「海洋堂の造形師たちは、ぼくらが教育したり、仕込んだりしたのではありません。勝手に自分たちで好きなことを好きなようにやって、自分たちで手のワザを発見したんです」。ロボットや動物、アニメなどのマニアを、適度な放任で受け入れる懐の深さが世界的な造形集団を育んだようだ。

こんな一文もある。「理屈ばかりで自分の好きなものばかりだらだら作る人間を社員にして給料を払うのは、ムダ以外の何ものでもない」(宮脇専務)

実は、動物フィギュアで高い評価を得ていた松村氏だが、入社して12年間は目立った実績がなかった。「会社にとっては一番お荷物だったスタッフ。チョコエッグのヒットでようやくお役に立ってくれた」と、宮脇専務は笑い飛ばす。

松村氏に続き、海洋堂のフィギュアの歴史を塗り替えたのが、「アクションフィギュアの革命児」と評される造形師の山口勝久氏だ。アクションフィギュアとは、関節ジョイントを組み込んだ可動式フィギュアのこと。固定したポーズが当たり前だったフィギュアの世界に「動く楽しさ」を持ち込み、独自に考案したアクションフィギュアで新境地を開いた。

アクションフィギュアで知られる造形作家・山口勝久氏の作品 (c)MARVEL

「山口君が考案したフィギュアの可動関節は山口式可動と呼ばれ、様々なポージングを可能にした。けれん味のあるアクションフィギュアでは世界一だと思う。その造形力と突破力で世界市場を狙える」と、宮脇専務は絶賛する。

アクションフィギュアに新たな造形メソッドを取り入れた「リボルテック」シリーズは06年に発売され、画期的なアイデアが業界を驚かせた。可動関節フィギュアの時代を呼び込んだとされるヒット作だ。

「リボルテック」シリーズを代表するのが、第2弾で発売したアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の劇中に登場するヒト型兵器の初号機と零号機だ。「エヴァンゲリオンは、オタクの世界にとっては福音のような存在。オタクが堂々と公言できるようになったのも、エヴァが社会現象になったおかげ」と宮脇専務。以来、エヴァンゲリオンは海洋堂のアクションフィギュアの看板商品となり、15年間も売れ続けるロングセラーとなった。

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